教室から昇降口にて 〜ハウの後押し〜
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藍さんと久しぶりに会話をしてから数日が経ち、教室では月末に行われる体育祭についてのホームルームが開かれていた。
「うー億劫だ、体を動かすのって少し苦手なんだよな」
僕は誰に言うわけでもなく、小声でそう呟いた。
高校生活というか、学校生活をした事がある人なら、まぁ日本人ならほぼ当たり前の事なのだが、経験があるだろう。
何かと行事がある度に目立とうとする者、傍観を決め込む者。僕はどちらかというと勿論後者だ。意見を言う事もなければ、決まった事にも口を出さない。正直な話、いてもいなくてもたいして変わらないのが現状だ。
僕の他にも同じような人が何人かいるので、僕だけが目立っている事もなさそうだった。僕はそんな事を考えながら、話を右から左に流しているとようやく、出場する種目の割り振りやその他の係等が決まった。
僕の出場する種目は『騎馬戦』のようだった。実質ほぼほぼ全員参加の競技のようなものなので、昨年となんら変わりが無い。
係になった者やその他特殊な競技、例えばリレー何かは別に打ち合わせがあるらしく、まだ時間が掛かるようだったが僕には関係なかったので早々に教室から出て行った。
教室から昇降口へ目指し足を進めていると、後ろから走ってくる音が聞こえてきた。おそらくハウだろう。僕は何故かそんな確信があったので、近づいて来る直前に振り返り、鳩尾目掛けてパンチを繰り出した。
「ぐふっ」
僕の繰り出したパンチはものの見事に鳩尾に命中したようで、ハウは物凄い苦しそうな表情をしながらその場に崩れ落ちた。
「あははっ、やっぱりハウだー」
僕は無邪気な子供のような表情をしながら、足元にいるハウに向かってそう言った。
「はぁ、はぁ……創。マジで痛い。それと俺じゃなかったらどうするつもりだったんだよ……」
ハウは息絶え絶えにそう言ってきた。
「んーまぁその時はその時かな? でも、僕が間違える訳無いじゃん」
僕はあっけらかんとした表情でそう言った。
「はぁ、何か。夏休み中とはまるで別人みたいだな、創。橘先生と上手くいっているようだな……」
ハウは一つ溜息を吐いた後、少し嬉しそうな表情をしてそう言ってきた。
「あっ、やっぱり分かるー? 何かねー凄い幸せって感じ? こんなの初めてだから少しワクワクしてるんだ」
僕は幸せな表情を隠し切れず、ニヤニヤとしながらそう言った。
「なら、さっさと告白してしまえよ、創。何事も早い方が良いと思うからさ……」
そう言ってきたハウの表情には少し陰が刺していた。
「うーん。それも良いかもだけど……でもこの関係を崩したく無いっていうのもある。振られたら立ち直れないだろうし……莱霧って人の事も気になるし」
ハウの表情に少し陰が刺していたのは気付いてはいたが、自分の考えをまとめるので精一杯だったこともあり、気にしている余裕は無かった。
「なーに。心配すんなって……そん時はまたカラオケでも行って、パーっとしようぜ。勿論、俺の奢りでな」
ハウがそう言ってきた頃には、普段の表情に戻っていた。
「まぁ、明日逢う予定あるし、色々と話してみることにするよ」
僕はハウの表情の変化を少しだけ気に掛けながらそう答えた。




