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スノードロップ  作者: 白城縁
高校三年生 秋
30/372

屋上にて 〜名前で呼ぶ大切さ〜

//////////


「やっぱり早く着いてしまったか」

 腕時計を見るとやはりと言うべきか、まだ七時にすらなっていなかった。

「でも……うん? 入れそうだな。入ってみようか……」

 入り口はこの時間でも開いていたので、僕は気にせず昇降口へ向かい靴を履き替えて屋上へ向かい足を進めた。

「でも流石にこんな時間には来てないよな、橘先生……」

 そう言いながら歩いていると、屋上へと続く扉の前に辿り着いた。

「よいっしょっと、やっぱりこの扉重すぎて嫌だな……」

 ギィーっと鈍い音を立てながら、ゆっくりと扉が開いた。

 扉を開けると直ぐに、懐かしい白衣姿が目に入った。

「橘先生……」

 僕は流石にこんな時間に来ているとは思っていなかったので普通に驚いた。

「……小鳥遊君か。随分と早い到着だな」

 橘先生も少し驚いたような表情をしている。

「橘先生こそ随分とお早い到着ですね」

 僕も橘先生と同じような言葉をそっくりそのまま返した。

「……まぁ、メールに時間の指定を入れるのを忘れてしまっていたしな。それの為に再度送るのも何か気まずいと思ってな」

 橘先生は少し照れ臭そうにそう言ってきた。

「あははっ、やっぱり橘先生は可愛い人ですね。今の表情、凄く良いです」

 僕はまるで子供のような無邪気な笑顔を浮かべてそう言った。

「ふっ、創君も同じような表情をしているじゃないか。中々魅力的だぞ?」

 橘先生がこんな事を言ってくるのは初めて聞いたかも知れない。

「それは嬉しいですね。それよりも今、僕の事『創君』って呼びましたよね?」

 僕は少し口元を緩めながらそう訊いた。

「あぁ、気に障ったかい? それなら、そう呼ばないようにするが?」

 橘先生は少し気まずそうで、それでいて少し悲しそうな表情をしている。

「いいえ。そんな事はありませんよ? かわりと言っては何ですが『藍さん』って呼んでも良いですか?」

 僕は名前で呼んでもらった事が嬉しくて、表情と想いを隠し切れずそう訊いていた。

「……分かった。良いだろう」

 藍さんは少し悩んだ後、そう言ってきた。

「ただ、くれぐれも学校の中では『橘先生』と呼んでくれ。また、面倒事に巻き込まれては創君に悪いからな……」

 僕がニヤニヤした表情を隠し切れずいると藍さんは間髪入れずにそう言ってきた。

「はーい。分かってますよー藍さん」

 僕はニコニコしながら藍さんにそう言った。

「はぁー分かって無いじゃないか、創君……」

 そう言った藍さんの口元も少し緩んでいるのを僕は見逃さなかった。

 久しぶり過ぎたせいでギクシャクしてしまうんじゃないかと、心配していたがそんな事は無かった。僕たちは逢わなかった一か月の空白を埋めるかのように、始業ギリギリまで屋上で話し続けた。

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