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スノードロップ  作者: 白城縁
高校三年生 春
3/372

病院にて 〜雰囲気が似た女性医師〜

//////////


「小鳥遊さーん。小鳥遊創さーん」

 本を片手に待合室で順番を待っていると、ファイルを持った看護師の女性が僕の名前を呼ぶのが聞こえた。

 僕は本を閉じ、肩に掛けていたショルダーバッグに本をしまい、ゆっくりと立ち上がった。

「小鳥遊創さんですね? 第一診察室へどうぞ」

 僕が立ち上がって看護師の女性に近付くとそう声を掛けてきた。

「わかりました……」

 僕はそう言いながら一礼して第一診察室へと入った。

「キミは……いえ失礼しました。こちらへお掛け下さい」

 何故か僕を見た瞬間、驚いた表情をしていたが直ぐに真顔に戻った。少し気になったが僕も僕でこの女性の雰囲気が橘先生に似ている事に少し驚いていた。

「はい、よろしくお願いします」

 僕は一礼した後椅子に腰をかけた。

「えっと小鳥遊創さんですね。担当させて頂く不知火響華(しらぬいきょうか)です。今回はどうされました? と言っても右手ですよね?」

 僕の顔と資料を交互に見ながらそう言ってきた。

「はい。実は昨日学校の階段から転がり落ちてしまって、右手を骨折してしまいました」

 僕は昨日起こった事をそのまま先生に話した。

「なるほど。にしてはしっかりと処置がしていますが、医師に既に診てもらったんですか?」

 僕の話を聞き終えると、右手を見ながらそう言った。

「いえ、僕の学校の保険医に診てもらっただけですけど?」

 自分自身言ってから気付いた。応急処置といえ、骨折した状態の生徒をただの保険医が対処出来るのだろうか?

「もしかして……」

 先生は資料をもう一度見直しながらそう呟いた。

「やはりか、朝霞高校の保険医といえば橘藍先生だったね。納得したよ、そうか彼女の所の」

 不知火先生は納得したようで少し笑っている。僕がポカンとした顔をしていると

「あーすまないね。あの人橘先生とは古い仲でね。なるほどあの面倒臭がりやの彼女がここまでするとは少し驚いたよ。でも何となく分かる気がする。キミを助けたくなった彼女の気持ちも……」

 不知火先生は少し感慨にふけっているようだった。

「ところで急に口調がフランクになりましが……」

 僕は急に先生の口調が変わった事に驚いたのでそう訊いていた。

「馴れ馴れしくされるのは嫌いかい? 彼女の知り合いなら他人行儀に接するのも悪いと思ってね。あの人が他人に自ら関わろうなんて、私が知る限りあの事があってから一度も無かったはずだったからね」

 話をしながら一瞬だけ、不知火先生が悲しそうな眼をした事を僕は見逃さなかった。

「まぁ、別に構いませんが……僕も堅苦しいのは苦手なので。でも僕の顔を見て、悲しそうな眼をするのは良い気持ちではないですけど……」

 僕自身最近他人との会話が少なくなった代わりに、学校では人を観察している事が多くなっていた。良くも悪くも当たり障りの無い関係を築く事が上手くなっていた。

「驚いたな、その年でそこまで人を見る眼を持っているとは失礼。いずれ関わっていけば知る事になる………かも知れない。あの時から変わってしまった彼女を元に戻す事が出来るかも知れない。あの人の親友として私はキミに期待しているよ……」

 その話をした後は元の口調に戻り淡々と治療をしてくれた。ただ最後だけフランクな口調に戻り、微笑み混じりでこう言ってきた。

「あー言い忘れていた。出来れば包帯は毎日変えた方が良い。学校の日は彼女に変えてもらった方が間違いないだろう。そーだ面白い事を考えたぞ、休みの日も彼女にやってもらうと良い。幸いキミの家は彼女の家の近くにあるようだし、わざわざここに一時間かけてくるのは面倒だろう。彼女には私の方から言っておくよ」

 僕は帰宅途中のバスで頭を抱えていた。

「確かに一人でやるのは難しいけど。わざわざ橘先生に毎日お願いするのも悪いし、正直あの先生に何度も会うのは疲れそうだし、かと言って両親も毎日は帰ってこないし。どーしようかなぁ」

 バスから降りた後も僕はぶつぶつ言いながら帰路に着いた。


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