リビングにて 〜久しぶりの一家団欒〜
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「初めて両親に反抗してまで朝霞高校に入学して、本当に良かったと思うよ」
僕は自分で作った料理を食べながら、改めてそんな事を口にしていた。
「何だよ、急に……」
ハウは少し驚いた表情をしてそう言ってきた。
「いや、本当。ハウにあの時出逢わなければ、おそらく僕は今もあの時のままだっただろうって思ってさ」
少し気恥ずかしかったが、僕はそんな事を口にした。
「本当、あの時は驚いたわ。初めて私たちに反抗したんだもの……でも、そうね月見里君には本当に感謝しているわ」
母さんはそう言いながら、ハウに頭を下げた。
「月見里君のおかげで私たちが間違っている事に気が付けた。創がもし月見里君に出逢う事がなければ創は私たちの人形になっていたかも知れない。本当にありがとう」
父さんも母さんに続いてハウに向かって頭を下げた。
「いえいえ、創君のお父さん、お母さん。私はたまたま偶然、創君に話し掛けただけなので改めてそんな事を言われると流石に気が引けます」
ハウは少し緊張しているのか、それとも年上の人と話をしているからか普段よりも落ち着いた口調で話をしていた。さりげなく一人称も『私』になっていた。
「ははっ、何その言葉遣い。凄くハウっぽくないんだけど。そんな堅っ苦しくしなくても大丈夫だよ」
僕はハウの口調の不自然さがあまりにも面白かったので、笑いながらそう言った。
「何かどうしても年上の人と話すと緊張のせいか知らないけど、言葉遣いが畏まっちゃうんだよ……」
頭を少しかきながらそう言ってきた。
「まぁ……それは悪いことじゃないから、別に良いんじゃない? でも、僕達には気兼ねなく話して欲しいな。普段のように」
僕は普段よりも少しだけ真面目なトーンでそう言った。
「意識して何とか頑張ってはみるが、期待はしないでくれ」
苦笑いしながらハウはそう言ってきた。
「それにしても創ちゃん。とーってもお料理上手になったわねー母さんもう敵わないわ」
ちゃっかり僕が作った料理を満足そうに食べながら、母さんはそう言ってきた。
「今のところ趣味はこのくらいしかないからね」
そんな風に素っ気なく答えたが、僕は少し嬉しくて口元を緩めていた。
「しかも、こんなオシャレな料理を……もしかしてもう恋人でも出来て振舞っているんじゃないか?」
父さんもちゃっかりと料理を食べながら、半ば冗談を言うようにそう言ってきた。その瞬間、僕は思い切り咳き込んだ。
「ごほっごほっ、そっそんな事は無いよ?」
僕は慌てて答えたせいで何故か疑問文で返してしまった。
「えー母さん聞いてないわよー? どこのどなたなの? 創ちゃんに相応しいか見極めなければいけないわ!!」
「柚さん。私たちは見守る事に決めたじゃないか。それに創が好きになったんだ、とても素敵な人に決まっている。私たちの自慢の息子なんだからね」
僕の方に迫って来た母さんをなだめながら父さんはそう言ってきた。二人は目の端に薄っすら涙を浮かべ、しきりに頷いている。
「……まぁ、もしその時が来たら必ず紹介するよ」
僕は曖昧な返事をする事しか今は出来なかった。
「楽しみだわ」
「楽しみだな」
両親のとても幸せそうな表情を見て、僕はそっと視線を外すしかなかった。それとずっと隣にいたハウが、何も言わずにいてくれた事がとてもありがたかった。
それからしばらく会話を続け一時間弱が経った頃、両親はバタバタとし始めた。あまり時間が無かったのにも関わらず時間ギリギリまで僕と一緒にいて話をしていたらしく、食事が終わり後片付けの終わる頃にはもう既に支度を済ませて、僕とハウに一言声を掛けて駆け足で玄関から出ていってしまった。
「ははっ相変わらずだな。あの人たちは……嵐のようなとはよく言ったものだね」
僕はハウと目を合わせながら、苦笑いをするしかなかった。




