回想 試験会場にて 〜ハウとの出逢い〜
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僕が両親と離れて暮らすようになったのには理由がある。先程の会話から想像がつくように、僕の両親は重度の親バカというよりは重度の過保護だった。
高校に入学する前までの僕は、両親が過保護過ぎた為、ほとんど自分で何かを決めるということは無かった。
何かあれば両親に訊かなければ、という風に洗脳されたかの様に僕は繰り返し口にしていた。そんな事しか言わない僕に『自我』なんてものは存在しなかった。その為か、いつの間にか僕の周りには誰もいなくなっていた。
そんな時だった。ハウに出逢ったのは……
「受験番号の貼ってある席について時間まで待機しているように……」
受験の担当の先生にそう言われて、軽く頭を下げてから僕は席に向かった。
その日は朝霞高校の受験日だった。ここでも両親の過保護が発動したせいで、受験開始の一時間以上も前に教室へと入っていた。
この高校をすべり止めとして受けるように決めたのは、言うまでもない。僕の両親だった。正直な話、他のランクが上の高校に進学するように言われていたし、先生達からは全く心配がされていなかった事もあり、あまりやる気も無かった。
「いっちばーん……あれっ何でもう人いるの?」
二十分は経っただろうか? 僕が一人席に着き外の景色を眺めていると、教室の入り口からそんな声が聞こえてきた。
「まぁ、いーや。俺は月見里倣。よろしく。キミは?」
さして気にした様子はなく、僕の席に近づきながらハウと名乗った少年は声を掛けてきた。
「……」
僕はどうしたら良いか分からず、無言を貫くことにした。
「ん? ご機嫌斜め? 受験前だからってそんなピリピリしてどーすんだよ」
ハウと名乗った少年は少し困ったような表情をしている。
「小鳥遊創」
名前さえ名乗ってしまえば満足して帰ってもらえると考え、僕は一言。名前だけを口にしてまた、外の景色を眺め始めた。
ハウと名乗った少年は僕が名前を答えたのが嬉しかったのか、ニコニコとした表情で自分の席に戻っていった。
それで終わるかと思って安心していた僕に、一教科終わる度にハウは声を掛けてきた。そんな事を繰り返している内にいつの間にか僕も割と普通に会話出来るようになっていた。
「今日一日話してみて思ったけど、面白い奴だな創は。この学校に進学したらよろしくな」
最後の教科が終わり帰りの支度をしていると、ハウはそう声を掛けて来た。
「分かったよ、その時はよろしく」
僕は間違い無く、この学校に進学する事は無いと分かっていたけど、そんな風に返していた。この時には既にもしかしたら朝霞高校に進学しようと。両親に初めて反抗しようと考えていたのかも知れない。
これは後で聞いた話なのだが、ハウはこの時点で朝霞高校に進学をしようと決めていたらしい。あんな感じでも実は僕と同じくらい頭が良くもっとうえのランクの高校も余裕だったらしい。決めた理由が僕と同じ学校に通えれば面白くなりそうという理由だったのにはかなり驚いた。
僕が朝霞高校に進学しなかったら一体どうするつもりだったのだろう? 全く無茶苦茶な奴だと今になってもそう思う。
そんな彼だからこそ僕も変わる事が出来たのかも知れない。恥ずかしいので面と向かって口にはした事は無いが、本当に感謝している。これが僕の『親友』ハウとの初めての出逢いだった。




