保健室にて 〜予想外のアクシデント〜
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「うわぁぁーー」
僕は意識を取り戻して直ぐに叫んだ。叫んだおかげもあってか周りを見渡す余裕が出来た。
「っ痛」
まずは自分の身体を確認した。右手は包帯でぐるぐる巻きで固定もされている。左手は動く両足も問題なさそうだった。階段から転がり落ちて右手一本で済んだのは幸運だったと思う。
「満身創痍の所悪いんだが、早く帰る準備をしてもらいたいのだが。私も忙しいのでな」
そんな事を考えていると直ぐ近くから声が聞こえた。
「あー保健室だったんですねここ。健診以外で入った事なかったので気付きませんでした。貴方は確か、橘藍先生でしたっけ?」
ようやく頭が回ってきたようで、ボンヤリとしていた視界もはっきりとしてきた。この人を馬鹿にしたようた口調とトレードマークでもある白衣が目に付いた。
「ほぉー私の事を知っているのか、珍しい。あまり生徒と関わらないようにしているはずなのだが……」
本当に驚いているようで少しだけ目を大きく開けていた。
「いやいや、この学校にいて橘先生を知らない人の方が少ないと思いますよ。保健医なのに保健医っぽくないって。現に保健室で煙草吸ってるじゃないですか。確か校内って禁煙ではなかったですか?」
僕は半ば呆れながらそう言っていた。
「私だから良いんだよ。私だからな。さて、準備は出来たようだね。仕方無いから家まで送ってやろう。小鳥遊創君。あぁ、言い忘れていたが明日病院で診察は受けた方が良いぞ。一応、応急処置はしたが骨折しているからな」
橘先生はその後、一言も話す事なく僕を家まで送り届けてくれた。自分の部屋まで行ってからようやく重要な事に気がついた。
「あれっ僕名前名乗ったっけ? うーん噂通り訳分からない人だったな。自分勝手だし。僕には真似できないや……まぁ、あんまり関わる事は無いだろうからどーでも良いや。明日は病院か。病院も嫌いだけど仕方無いか。はぁー」
僕は溜息を吐いた後、ゆっくりと目を閉じた。