教室から屋上にて 〜僕に隠し事は出来ない〜
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「よぉー創。聞いたぞ、最近橘先生と仲良さそうに歩いているのを見たって……」
翌朝、早めに登校して優雅に音楽を聴きながら本を読んでいると、後ろから叩かれた。
「何か用? ハウ、半分くらい聞こえなかったけど……」
実際は全て聞こえていたけど、僕はあえて聞き返した。
「だーからー最近、橘先生と仲よさそうに歩いているのを見た奴がいるって話」
ハウは本当に聞こえてなかったと思ったのか、律儀にもう一度同じ事を言ってきた。
「それが、どうかしたの?」
ハウが何故そんなに楽しそうに言っているのか、僕にはよく分からなかった。
「いや……それがどうしたって、何でそんなに冷静なんだよ……」
ハウは少し呆れているようで、軽い溜息を吐きながらそう言った。
「だって、最近は帰り送ってもらってるし、夕飯一緒に食べてるよ?」
僕はさも当たり前の様にハウにそう言い返した。
「えっ……まさかそこまで進んでいたとは……」
ハウだけでなく周りのクラスメイトも驚いているようで、教室内が少しざわついた。
「うーん? 何か僕、可笑しな事言ったかな?」
僕は訳が分からなく首を傾げていた。
「ちっ、これ以上騒がしくなるの面倒だな……創、ちょっとこっちに来い」
ハウは周りの様子を気にしてか、急に僕の事を引っ張ってそう言ってきた。
「ちょっ、もうどうしたって言うのさーハウー」
僕はハウの力に抗うことが出来ず、為すがまま引っ張られた。
「屋上に行く」
ハウはただ一言それだけ言って更に引っ張って来た。
「はぁ……よく分からないけど、引っ張んなくてもついて行くよ」
僕は仕方が無いのでついて行く事にした。
「相変わらず天然だよな、創は……」
屋上に向かう道中ハウは呆れながらそう言って来た。
「僕が? そんな事無いと思うけど……」
僕は全くそんな風に思っていなかったので、首を傾げながらそう言った。
「いやっ、間違い無く『ド』が付く程の天然だよ……」
ハウは呆れながらもはっきりとした口調でそう言ってきた。
「うーん? あっでも確かに橘先生も同じ事言ってたかも……」
ハウに言われて橘先生にも同じような事を言われたのを思い出した。
「そう、それ橘先生。噂だけ聞いていると生徒とそんなに仲良くしている所を今まで見た事が無いって。新聞部の連中が言っていたんだが……」
ハウは思い出したかのように元の話題に戻して来た。
「うーん。そうかなぁ、確かに橘先生は愛想の良い方じゃないけど結構可愛い所もあるんだよ?」
僕は少しニコニコして楽しそうにそう言った。
「……もしかして創。橘先生に惚れたか?」
ハウは屋上の扉の前に立ち、少し間を開けて少し遠慮気味にそう言って来た。
「うーん。よく分からない。でも、この手が治るまでの関係だから多分そんな事無いと思うよ? それより早く扉開けてよ。片手じゃちょっと大変」
この屋上の扉は結構重くて、女子生徒とかは全力で押さないと開かない事で有名だ。
「あ、あぁ……すまん。今開けるよ」
ハウは少しどもりながらそう言った後、ゆっくりと扉を開けた。
「ふぅーやっぱ屋上は良いなー。風が気持ち良い。最近は雨続きだったし、この手の事もあって来てなかったから余計に気持ち良いや」
屋上に入って背伸びをしながら僕はそう言った。
「創。話を戻すようで悪いが、本当に惚れて無いって言い切れるのか?」
急に真剣な表情をしてハウはそう言って来た。こんな表情のハウは初めて見た。
「さっきも言ったでしょ? この手が治ればそれでお終い。それで良いんだよ……」
あくまでいつも通り、でもほんの少しだけ真剣な表情で僕はそう答えた。
「……分かった。もう何も言わない。ただ俺はお前の親友だ。何かあったらすぐ相談しろ、必ず助けてやる」
少しも照れる事なく、真剣な表情でハウはそう言って来た。
「ふぅ……そう言うかっこいいセリフは彼女に言ってあげなよ。藤林さん喜ぶよきっと」
言葉を飲み込んでくれた事。必ず助けると言ってくれた事。とても感謝はしているが言葉にはあえて出さなかった。それを隠す為にあえてニヤニヤとした表情でそう言った。
「なっ、お前なんで希姫と付き合っているって知ってるんだよ……まだ誰にも言ってないんだけど……」
ハウはかなり驚いているようで慌てながらそう言って来た。
「僕に隠し事は絶対出来ないよ?」
僕は微笑みながらそう言って、屋上のフェンス付近まで足を運んだ。
「はぁ……やっぱお前には敵わないわ。創……」
気持ちのいい風に乗ってハウのそんな言葉が聞こえた。




