橘先生の家にて 〜これぞ家庭の味〜
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「何が食べたいですか? 橘先生。一応食材さえあれば何でも作れますけど?」
結局、何を作るか決められず橘先生に丸投げした。
「本当に何でも良いのか?」
橘先生はまだ僕の料理の腕を疑っているのか訝しげな表情をしている。
「ええ、作れない物は特に無いですし……あっでもゲテモノ料理とかは無理ですよ? そもそも食材無いし。ってかまだ僕の料理の腕を疑っているんですか?」
橘先生に訝しげな表情をしていた事が僕は気に入らなかった。
「いや、そんなつもりは無いのだが……そうだなぁ、久しぶりに和食が食べたいな」
僕の表情が変わった事に気が付いたのか、少し申し訳無さそうな表情をしていた。
「和食かー流石にご飯はあるんですよね?」
反省をしているようだったので僕は満足して、逆に橘先生をおちょくり始めた。
「ご飯は流石にあるぞ。馬鹿にしてるのか?」
今度は橘先生の方が怒ったのか眉間に皺を寄せていた。
「それなら大丈夫です。少し時間は掛かると思いますが、任せて下さい」
今日の晩御飯は肉じゃが、味噌汁、ご飯にしようと決め調理に取り掛かった。
「何か手伝う事はあるか?」
橘先生は手持ち無沙汰だったのか、台所まで入って来て僕にそう訊いてきた。
「いや、大丈夫です。橘先生は昨日と同じくゆっくりしていて下さい」
久しぶりに和食を作る事を決めたので、今回は一人でやった方が良いと思ったので橘先生にそう言った。
「久しぶりだなあー肉じゃがとか作るの面倒だったし、一人分とかわざわざ作らないしーいやー楽しみ、楽しみー」
橘先生が僕の言葉に頷いてリビングに戻るのを確認してから、少しはしゃぎながらそう言った。
「おっ、そーだ。せっかくだし、あれ使おうかな」
僕はキャリーケースの中をガサガサと漁り、ジュラルミンケースを取り出した。
「毎日研ぐのは欠かさなかったけど、使うのは本当に久しぶりだなー」
そう言いながら僕はケースから包丁を取り出した。
「いやー良かった、良かった。左手でも包丁使う練習してて。まぁ流石にクオリティは下がるけど……」
左手で包丁を動かしながら僕は唸っていた。
「ところで、小鳥遊君って左利きだったのか?」
いつの間にか戻って来ていた橘先生に声を掛けられた。
「いやー根っからの右利きですよ? ただ左手も使えるだけですよ」
急に声を掛けられた事に多少は驚いたが、特に気にする事なく僕はそう答えた。
「器用な奴だな……何でもそつなくこなせるなんて、そうはいないぞ」
橘先生は呆れているのか溜息を吐きながらそう言った。
「そうですか? 物心ついた頃から、一人でいる事が多かっただけです。それに出来ないと面倒でしたからね」
僕にとっては当たり前の事だったのだが、言われてみるとそうかも知れなかった。
「それとこれとは別の話な気がするが……まさかマイ包を持っているとは思わなかったけどな……」
橘先生は感慨深そうな表情をして顎に手を当てていた。
「料理は僕にとっては趣味みたいなものですからね。物にこだわりたくなるじゃないですか? 他にお金を使う事なんて無かったですし」
そう言っている内に料理はほぼ完成していた。
「学生らしくないな……決して悪い意味では無いがな。将来良いお嫁さんになれるぞ?」
橘先生はニヤニヤしながらそう言って来た。
「それは無いと思いますよ? だって僕、今まで人を好きになった事なんて無いですし……それに、人と関わる事自体避けているんですから……」
橘先生は僕をおちょくっていたのかも知れなかったが、僕は特に気にする事なく真面目に返した。
「冗談だよ……それは既に理解しているよ。私も小鳥遊君と同じなのだからな……」
真面目に返した事に気が付いたのか、橘先生も真面目に返してくれた。
「よしっ。後は暫く煮込むだけなので暇です。せっかくなので食後のデザートも作ります」
僕は一声発して、気分を入れ替えてデザートを作る事を決めた。
「デザートまで作るのか……呆れるくらい料理出来るんだな」
完全に橘先生は呆れているようで、手をあげて降参といった表情をしている。
「いやー簡単ですよ? 最近は自作の料理とか作るのが日課ですし」
僕はさも当たり前のようにそう言った。
「そっそうか? 私には無理だがそんなものなのか?」
橘先生は僕の勢いに威圧されたのか、少したじろぎながらそう言った。
「さて、もう良いかな? 後は盛り付けるだけなので、戻って座って待ってて下さい」
僕はそう言って盛り付けを始めた。盛り付け終わった後リビングのテーブルに料理を並べ始めた。
「こうして見るとやはり料理が得意なのが分かるな。見た目からして美味しそうだ」
橘先生は僕の料理を見ながら、今にもがっつきそうな勢いで料理に顔を近づけていた。
「そんなにがっつこうとしなくても料理は逃げないですって。それに僕が作ったんですから、美味しいに決まっているじゃ無いですか! って昨日もそんな事を言った気がしますね」
僕は少し呆れながらも、僕は笑っている事に気が付いた。
「では、頂くとしよう」
橘先生は律儀に手を合わせて食べ始めた。それを見て意外としっかりしているなぁと思った。
「うーん。やっぱりクオリティが低い。味はいつも通りでも美しくない。こんなものだと思われたくないので、この手が治ったら僕の本気の料理をご馳走しますね」
僕は気が付いたら無意識にそんな事を言っていた。
「あぁ、楽しみにしているよ。小鳥遊君」
橘先生は僕の言葉に対して満更でもないような様子だった。お互い言ってから気付き気まずそうな空気が流れた。
「ま、まぁそんな事より食べ終わっならデザートを持ってきます。プリンですよプリン!」
僕は『プリン』という言葉を強調をして僕は空気を変える為そう言った。
「プリンに何か思い入れがあるのか? 小鳥遊君は」
急に僕が『プリン』を強調して言ったのが不思議だったのか、橘先生は首を傾げている。
「プリンって美味しいじゃないですか? だってプリンですよ? プリン」
僕はまるで子供のようなにはしゃぎながらそう言った。
「そっそうかプリンが大好きなのだな……」
橘先生はたじろぎながらそう言って来た。
「勿論です。毎日食べます。っと、忘れるところだった。食べながらメールの仕方を教えないといけないですね」
プリンで大はしゃぎながら思い出した。危うくまたメールの使い方を教える事を忘れるところだった。
「ちっ、思い出したか……忘れているかと思っていたのに」
僕がメールの話をすると急に眉間に皺を寄せて怪訝そうな表情をした。
「いや、実際忘れてましたよ……危うく無限ループになる所でした」
僕はそう言って台所にプリンを取りに台所に向かった。




