カラオケボックスにて ~十年前の曲~
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「~~~♪ ~~~♪」
僕は藍さんに無理やり曲を入れて貰いマイクを預けた後、藍さんが歌い始めた途端驚きを隠せなかった。
「~~~♪ ~~~♪」
予想以上に上手い藍さんの歌に僕は聞き惚れていた。
藍さんは曲が終わると少し恥ずかしそうに目を伏せて、そのまま椅子に座ってしまった。
「……滅茶苦茶歌上手いじゃないですか……あんなに嫌がっていたから物凄く下手なのかと思っていました……」
マイクを持った途端、人が変わったかのように歌っていた藍さんを見て、開いた口が塞がらなかった。正直な話僕より上手いんじゃないかって思ったので、僕は少し機嫌を損ねていた。
「……柄にもなく真面目に歌ってしまって、物凄く恥ずかしいんだが……」
藍さんは僕の方も見ずにそう言ってきたので、僕が機嫌を損ねているのに気が付いていない様子だった。
「むーどうして僕の周りにはこんなに歌が上手い人ばかりなのかな……どんどん自信無くなりそうだよ……」
僕は頬を膨らませながら、がっくしとうなだれた。
「ん? 何だ創君。もしかして機嫌を悪くしているのか?」
僕が『むー』何て言ったからか、ようやくそのタイミングで僕が機嫌を損ねている事に気付いたようで、僕の顔を覗き込みながらそう言ってきた。
「だってーだってー」
僕は藍さんから逃れるように覗き込んでいる藍さんから視線を逸らした。
「全く……どうして響華や莱霧と同じ反応をするんだ? だから歌いたくなかったんだ……そんなに私の歌上手いか?」
過去にも同じ事があったんだろう、藍さんは悲しそうに僕にそう言ってきた。
「……はぁ、確かにこんな風に言われたら不知火先生や莱霧さんも僕と同じ反応すると思いますよ……でも、おかげで藍さんが歌が上手いのが分かったので今度からはカラオケデートっていう選択肢が出来ましたね」
僕は藍さんの言葉に呆れたようにそう言った後、にっこりと笑い掛けた。
「……? よく分からんが機嫌を直してくれたならそれで私は構わないが……」
藍さんは一瞬不思議そうな表情を僕に向けた後、同じように僕に笑い掛けた。
「よーし、じゃあこの曲でデュエット何てどうですか?」
僕は端末を手に持って指を差しながら藍さんにそう尋ねた。
「……何で創君がこんな昔の曲を知っているんだ? 私が高校の頃に流行った曲だろう?」
僕が指差した曲は約十年前に流行った曲で、僕がまだ小学生くらいの頃の曲だったので藍さんは驚いている様子だった。
「まぁまぁ、そんな事は気にしないで歌いましょう!」
僕は藍さんが知っている曲だという事が確認出来たのでそのまま予約をして、藍さんにマイクを渡した。




