教室から保健室にて ~退屈な日々に舞い降りたカモ~
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「ぐえー疲れた……」
もう二月の序盤ということもあり、受験や就職が決まったクラスメイトにとって、これほど良いカモはいなかったのだろう。
芦田先生の粋な計らいのせいで自習になった僕のクラスは丸っと一時間、僕に質問の雨を降らせていた。
こんな大人数に声を掛けられる何て事は今まで経験した事が無かった僕は授業の終わりを告げるチャイムと共に机にぐったりと突っ伏した。
「流石に堪ったもんじゃないね……最終的には芦田先生まで話に入って来てたし、大丈夫かこの学校……」
生徒と先生の恋愛の話だというのにも関わらず話に入ってきた上、一番乗り気だった芦田先生の姿を思い出し、僕は頭を抱えていた。
もう既に三十歳を越えた芦田先生にとっては、それほどまで結婚という単語に敏感になっているのかも知れない。
それでも学生である僕の話を聞いてメモを取ったりするのはどうかとは思うが……
「……保健室行こ」
僕は疲れきった身体を何とか起こして、誰に言う訳でも無くそう呟くと、次の授業をサボる事に決めた。
―――――――
教室から何とか保健室の前に辿り着いた僕は、普段なら静まり返っている保健室から話し声が聞こえる事に驚いていた。
少し後ろめたい気持ちはあったが、どうしても気になってしまった僕は、そっと壁に耳を澄ませて会話を聞いてみると……
「橘せんせ、三年の小鳥遊先輩からプロポーズされたって聞きましたよー羨ましいなー私もプロポーズされたーい」
「こら、駄目でしょ? 橘先生が困ってるじゃない……で、何て言われてプロポーズされたんですか?」
「あっ、ずるい。先生だって気になってるんじゃないですかー」
そんな会話が聞こえてきた。何処から情報が漏れたのだろか……何故か後輩である生徒や先生にまで僕がプロポーズした事が伝わっていた。
「……何か凄く嫌な予感がする……これ多分ハウのせいだよね……この調子だと学校中に伝わっているじゃないかな? はぁ……」
ハウの人徳故か今日の朝の出来事だったプロポーズが僕の知らない内に学校中に伝わっていて、しかも誰も否定的な言葉を言っていない事に驚きを感じてはいたが、ただただ溜め息を吐くしかなかった。
「本当に大丈夫なのか? この学校……普通は生徒と先生の恋愛何てご法度なのに……まぁ、生徒は別としても一部の先生からは何か言われるのを覚悟しておいた方が良さそうだな。特に教頭とか教頭とか……」
僕はそう呟くと、恐らく僕と同じように藍さんも朝から沢山の生徒や先生から質問攻めを受けていた事は容易に想像出来たので、助ける為にも扉をわざと思いっきり開いて保健室へと入っていった。




