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スノードロップ  作者: 白城縁
高校三年生 春
11/372

橘先生の家にて 〜見えない壁〜

//////////


 リビングに入ってまず目に入って来たのは、カップ麺やコンビニ弁当の空の山だった。

「ちょっと、これ何ですか……ゴミだらけじゃないですか?」

 僕はリビングを見渡し驚きながらそう言った。

「あーこれか? 片付けするのが面倒でな……流石にそろそろ片付けをしようと思っていた所だ」

 橘先生は特に気にしている様子も無く、さも当たり前のようにそう言ってきた。

「ダメです。これはダメです。直ぐに片付けます。早く掃除道具を持って来て下さい!」

 特に綺麗好きと言う訳では無いのだが、流石に余りにも酷い有様だったので僕は耐えられなかった。

「おっおう……分かった直ぐに用意しよう」

 僕の剣幕に圧倒されたのか、橘先生は少し戸惑いながらも奥の部屋から掃除道具を持って来た。

「これは掃除のしがいがあるぞーよしっ早速ゴミとそうじゃない物の分別から始めないと、さぁ橘先生も手伝って下さい!」

 僕はゴミの山を見ながらそう言うと、橘先生を促し掃除に取り掛かった。

「ところで小鳥遊君……キミは私の夫か何かのつもりか?」

 黙々と作業を続けていると橘先生は僕にそう言って来た。

「いや、全くそんなつもりは無いですけど、流石に耐えきれなくて……」

 僕はいつの間にか掃除に没頭していた事に気が付きそう言った。

「小鳥遊君。キミは何をする為に、ここに来たんだ?」

 先程まで僕に圧倒されて言う通りにしていた橘先生であったが、流石に素に戻ったのか少し怒り気味にそう言って来た。

「すっすみません……つい、そんなつもりは無かったんですけど。何かいつもの癖で」

 よくよく考えてみると、橘先生に失礼な事をしたかも知れない事に気が付いた。

「まぁ良い、乗りかかった船だ。ある程度は片付けを続けよう。ここに来た本来の目的を忘れないぐらいには……」

 橘先生は溜息を吐きながらも掃除を続ける事を許可してくれた。

「にしても、いくら何でも散らかし過ぎです。それにインスタント食品ばかり食べていては身体に悪いです。やっぱ僕がご飯を作ってあげなければいつか病気になってしまうかも知れません……尚の事気合いを入れて作らなければ」

 僕は冗談半分でそう言ったつもりだったのだが、橘先生の表情はいつにも増して暗かった。

「キミに心配される必要はない。今までもこの生活を続けて来たんだ、今更変えるつもりは無い。自分の身体の事は自分が一番知っている。これでも私は医者・・なのだからな……」

 橘先生は余計な事を言ってしまった事に気が付いたようで苦虫を噛み潰したような表情をしていた。

「それもそうですね。他人の人生をどうこう言う筋合いは誰にも無いですからね。失礼しました、失言でした」

 僕はそう言いながらもただ一つ疑問に思ったのが、私は『医者』だと言った事。保健医と医者は異なるものだと思っていたのだが……その時は橘先生に圧倒され深く考える事が出来なかった。

「ふぅ……たまにキミは雰囲気が変わる事があるよな? 私は特に構わないのだが……本当のキミはどっちなんだい?」

 橘先生は一度深く呼吸をしてから普段はしないような真剣な目をしてそう言って来た。

「さぁ、どうなんでしょうね? 僕にも分からないですよ、そんな事。まぁ僕が僕である事に変わりは無いですから。それに貴方だって僕とそんなに変わらないでしょう?」

 僕は珍しく真剣な目をしていた橘先生に対して、あくまで挑発的にそう言い返し、更に言葉を続けた。

「それに……ダメですよ? 藍先生・・・。僕には小鳥遊創っていう名前がちゃんとあるんですからそう呼んで下さい」

 そう言った頃にはいつもの僕……と言うのも可笑しいのだが、普段通りの口調と表情に戻ってそう言った。

「勘弁してくれ、小鳥遊君。下の名前で呼ばないでくれ」

 そう言った橘先生も普段通りのやる気の無さそうな表情に戻っていた。

「これこそwin-winな感じですね。どうせこの手が治るまでの関係何ですから、お互い深入りしない方が良いですよ。絶対に……」

 少しだけ橘先生と関わっている事を楽しんでいる事に気が付き、これ以上深く関わらないようにしようと思った。

「それは私も賛成だ。人と関わるのは出来るだけ避けたいのは私も同じだからな……さぁ話が過ぎたようだ。軽く後片づけをして包帯を替えてしまおう。早くしないと食事を取る時間が無くなってしまう」

 橘先生は軽く口元を緩めながらそう言うと、ゴミ袋を縛り部屋の隅に寄せ始めた。


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