進路相談室にて ~決意表明~
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「それで、どっちに決めたんだ? 進学か? それとも就職か?」
芦田先生は進路相談室へ着いて、椅子に座ると余程待ち望んでいたのか、僕が一息吐く前にそう訊いてきた。
相当焦りがあったようで、捲し立てるようにそう言った後、しまったといった表情をしながら僕の機嫌を伺っている様子だった。
「随分と単刀直入に訊いてくるんですね……まぁ、こんな時期まで待たせてしまった僕も悪いので、とやかくは言いませんけど……」
顔色一つ変えること無くそう言った僕に芦田先生はかなり驚いている様子だった。
確かに以前の僕なら、少なくとも機嫌を悪くして睨み付ける事ぐらいはしたかも知れなかったので、僕は納得した。
「あははは……すまん。それよりも大丈夫か? 最近良く笑っている姿を見掛けるが……」
芦田先生はついつい言葉にしてしまったのだろう。再び、バツの悪そうな表情をしていた。
学校の先生でしかも自分の受け持っている生徒がただ笑っているだけで、そんな事を聞いてくるなんて失礼極まりない。
僕自身、最近は特に変わったと自覚があったので、昔を知っている芦田先生が驚くのも無理は無い事は分かっていたので特に気にする事は無かった。
「まぁ、別に良いんですけど。そろそろ本題に戻しませんか?」
僕は特に気にしてはいなかったが、のんびりとお話をしていられる程時間に余裕が無いのは、良く分かっていたのでそう言って話を戻した。
芦田先生は三度申し訳無さそうな表情をしていたが、僕は気にせず話を続けた。
「……看護師になろうかと……それの手続きとかお願いしたいと思いまして」
僕は恐る恐るといった感じで芦田先生にそう言った。
「……」
芦田先生は予想していた進路とはかなりかけ離れていたようで、何も言えない様子だった。
「……何か言って貰わないと、僕も流石に困ります」
結構長い時間、無言の状態が続いたので僕は少し呆れたようにそう言った。
「……あ、あぁすまない……全く予想していなかった進路だったんでな。理由は聞かないが、俺も先生の端くれだ、その目を見れば本気な事は充分伝わった……たが、いくら小鳥遊でも相当厳しい事は始めに伝えておく。今の時期から目指すのであれば最低でも一浪は覚悟しておいた方が良いかも知れないぞ?」
ようやく言葉を口にした芦田先生は僕の事を応援をしてくれたが、今から目指すのがどれだけ大変なのかもちゃんと教えてくれた。
「はい。分かっているつもりです。こんなにやる気があるのは初めて何です。だから、いい意味で芦田先生の期待を裏切って見せます。それでは失礼します」
僕はまるで決意表明でもするように、立ち上がって芦田先生にそう言うと、軽く頭を下げそのまま進路相談室を後にした。




