禍の奔流
――世界は、分離した。
五年前、平穏に過ごしていた人類は未曾有の危機に襲われた。
大陸と大陸の間に亀裂が走り、大きな地震を伴わせながら割れていく。勿論その周辺に居た人々は割れ目の中に落ちていった。
ある者はその混乱の中裂け目を覗いたという。
顔に触れるのは小さな光。裂け目からは、滝のように眩い光が奔流となって流れていた。
黄金色に揺蕩う奈落――
あたたかささえ感じそうなそれは紛れもなく、人々の絶望を招く災禍であった。
※
「――なぁ~んで、種明かししちゃったのぉ?」
つまんないじゃなーい、と行儀悪く卓上に組んだ両脚を載せる女が呟く。
真っ白な円卓には数人分の椅子が用意されており、現在その場に居るのは三人。そのうち二人は着席しているが、もう一人の男はふらふらと虚空を見つめて佇んでいた。
そして少女の声に反応して、その男は柔和な笑みを湛えながら振り返る。
「じゃないと、まずいだろう?」
「チィッ――そのまま終われば良かったのにぃ! ……そろそろ介入したいわ」
「おい……はぁ、まあ俺に決定権はないから止められないが」
柔らかい雰囲気を纏う男と、それに歯向かう派手な様相の女と、フードを目深に被った男。ちぐはぐだが、この三人はいくらか〝他の同類〟より繋がりがある方だった。傍から見れば学生が三人談笑しているように見える。
そんな中、佇んでいた男が再び虚空を見つめた。まるで其処に〝何かが〟あるように――大きく、宙に手を振り払ったのだ。
その瞬間、ピシリと空間に切れ目が入る。そのまま手を翳せば、ガラスが割れた音と共に真っ白い空間が一部現れた。そして男は人一人分その〝空間のガラス〟を拓いていくと、切れ目に足をかけて後ろを振り返った。
その表情は相変わらず、微笑みしか映していない。
「それじゃあ、行ってくるよ」
「~っ……アンタがちんたらしてたら、アタシが奪いに行くから! 覚悟してなさいよ!」
「全く……早く行け。俺はお前の味方だからな」
「あはは、有難う。二人の餞別の言葉、嬉しいよ」
飽くまでもほわほわと笑顔を浮かべる男に、キィと反応する女と静かに頷く男。何時もと変わらない光景に、男は安堵した。
——そして、
行ってきますと零して、男は真白に包まれていった。




