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スロースターター

作者: 楽部

 老人は朝が早いだなんて、誰の思い込みかというものだ。それは何より、体に悪かろう。同年代には倒れる奴もいる。三文くらいで割に合うとは思えない。


 私は早くない。今日も緩やかな目覚めで、3分でクッキングのやや前辺りの時刻。毎日おおよそ、そのくらいだ。ソロソロと起きる。急いては脈が速くなる。その後はモゾモゾと動き出し、食事の支度を始める。もちろん、3分では終わらない。老人はのろいからだ。だが、時間をゆったりと費やした分、美味いものをこしらえる。そこは周到にして、永年の叡智を蓄え、こだわりを備えているからというもの。自賛である。


 上出来に、味わいながら、咀嚼と嚥下を繰り返す。テレビでは部屋の人の話が終わりとなっていた。楽しい時間程、短く感じる、と言われている。述べさせても貰う。老人は気が短くも、長くもなるから厄介だ。


 片付け後のお茶の時間は、穏やかな午後にして、ずるずると飲み終わるまで続く。ぼうっとしながらの、思索に浸るひととき。覚えているのは過去のこと。思い出は苦い。でも、新しいものは苦手。老人は苦み走っているのだ。そう、濃くて深いこのお茶も、と口にやって、残りが濁りだけとなったのに気付く。




 さて、




 暫く眺めて、私はようよう腰を上げた。衣裳を整える。杖は忘れない。足元に気を配りつつ、外へ踏み出した。




 世界征服でも始めるとしよう。




 老人の寿命は長くなった。夜は早いが十分、すぐである。


 トイレの近さに出鼻を挫かれながらも、日が傾いた頃、それは始まった。

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