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ELS(仮)  作者: ハトムギ
第一章
7/10

枯れない桜

 祖父の家で疲れ果て、流れ落ちる雫が枯れてからもしばらくは動けなかった。無二の友と祖父を一度に失ったことで、心と体が別人のモノであるかのようにいうことを聞いてくれない。目だけは焦点も合わずに天井を見上げている。


 意味も無くただ見つめることにも疲れて暗闇に逃げようと目を閉じる。しかし、閉じた先にあったのは暗闇ではなく二人の顔だった。優しさの中に潜む厳格さを感じさせ、人として尊敬できると感じさせてくれた祖父。何伝えるでもなく気付けば隣をいつも歩いてくれている友。過去の一つ一つの場面が現われては消える。


 枯れたはずの雫が再度流れてしまう幻覚に陥ってしまい、その状況から逃げる為に今度は目を開ける。結局は何も変えることが出来なかった、逃げることが出来なかった。もう自分がいったいどんな感情をしているのかがわからないほどに色々な想いがあふれてしまい耐え切れずに大声で奇声を発した。


 ようやく焦点があうほどには落ち着きを取り戻し、何見るでもなく仰向けで静止する。天井の模様が見えるほどには暗闇にも慣れてきた時、ふと目に止まる模様を見つけた。


「あの模様……似てる、あの時見つけた石に刻まれていた模様に」


 あれはなんだという思いが他の感情を一時的に麻痺させ、動かなかった体を動かす。模様の目の前まできてそっと指で触れてみると、じわりと光り出し模様そのものが浮かび上がる。


 浮かび上がった模様はくるくると回りだし、映写機のように文字を空中に浮かび上がらせる。不可思議すぎる現象に頭がフリーズしてしまったがそれがかえって冷静さを取り戻すきっかけとなった。



【これが見れるということはその身に刻印(ルーン)を宿してしまったのだろう。伝えたいことはたくさんあるが、もし……見知らぬ世界へと行く必要があるのならば、石を手に入れた場所へ行き、石があった場所とは逆側の道を進みなさい。そしてその世界へ行けたならば"枯れない桜"を探し、現われた者へこう告げるのです。「ラム ウィ ダオラ "サムス"」と。きっと力を貸してくれるはずです。願わくばこの内容が必要ないことを切に祈る。  倉橋 信三】



「じぃちゃんからの手紙だ。刻印(ルーン)……多分、あれのことだよね。じぃちゃん知ってたのか。疑問は色々あるけれど、ごめん、どうやら必要になりそうだよ」


 一頻り放心状態となった後、今後の行動を決意し動き出す。


「修治を連れ帰る」


 ただそれだけの為に突き進むと決め、石があった洞穴へと向かった。



              ◇

              ◇

              ◇


 ルーン石を手に入れた後は消えてしまっていた洞穴が今はぽっかりと開いている。洞穴からはもう光が漏れていない。覗き込むと嘗ての光はなく闇しか無い。そんな中でも突き進もうと入り口を潜ると周囲の壁がほんわりと光を放ちだした。


 正直光があろうがなかろうが関係ないと思っていたがあるに越したことは無かったのでちょっとだけ安心した。そのまま道なりに進んで開けた空間にたどり着く。そこから伸びる二本の道。


 今では二本ともに暗い道となってしまっていたが迷わず右の道へと進む。道自体距離はなかったようで二、三分もしたら行き止まりとなっていたが、どうすればいいのだろうと突き当たりの壁に触れると視界が一気に開ける。


 目の前には木々が生い茂った森の中のような場所があり、天空からさんさんと降り注ぐ木漏れ日が眼に刺激を与えてくる。


 自然と足も動き前へと歩き出す。目の前に見えていた木に軽く触れてみて、幻覚ではないことを実感してから後ろを振り向くと、そこにはすでに洞穴は存在していなかった。


 慌てて洞穴と森の境目であっただろう場所で行ったり来たりを繰り返すも変化が見られない。もしかして一方通行なのだろうかと焦りはしたものの、やるべきことを思い出して冷静になる。


 ここが修治がいる世界かもしれないのなら、見つける!


 その為にまずは"枯れない桜"を探す為に辺りを見回すと少し遠めにだが桃色のような花びらをつけている木を見つけた。緑の木が生い茂る中に一本だけ生えているその木は眼をひきつけるには十分だ。


 桜の木と思われる木の根元まで来てみたが正直これが枯れない桜なのか正直わからない。回りを見ても人の気配すらない。


 じぃちゃん……どうすればいいのよ。


 ここまで順調?に来ただけに逆に八方塞な状況になってしまう。む~んと頭を抱えてどうしようかと考えていたところに誰かに見られているような気がして振り返る。誰も居ない。気のせいかなと思ったが見られてい感覚がさらに強まった。誰かが居る。


 力が問題なく使えることを確認し身構える。


 数瞬だろうか、木々のざわめきが無くなり、辺りから雑音が全て消えてしまったと感じた直後、突風とも云える強烈な風が巻き起こり、目の前の桜がすべて散ったのではないかと思えるほどの花吹雪が舞った。


 そして気付く、桜の木の上に人が、女の子がそこに居た。


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