夢物語
界渡は自分の力が何なのか発現当初はまったくわからなかった。
修治は火というわかりやすい形で具現化しているのに対しぱっと見ではよくわからない力だったからだ。身体を取り囲むように発現させることができることまではわかったのだがそれからどうしたらいいのかがわからない。
身体を囲めるのだから防御する力なのかと思い修治に火を投げてもらったら危うく火傷しそうになったし殴ってもらったらめちゃくちゃ痛かった。痛すぎて殴り返したのはご愛嬌。
そんな風に進展もなくふてくされて寝転がっていたところに、これ見よがしに力を見せ付けてきた存在が目に入ってきたので石を投げつけてやる。
ムキになったその存在に石を投げ返されたのだが、寝転がっていた状態では即座に回避することが出来ずに片手で受け止めようとしたところでそれは起こった。石の投げられた軌道予測に手をかざしたはずだが衝撃がいつまでたってもやってこなかったのだ。
掌を返してみてみればそこには投げられた石が身体に触れることなく存在し、少しして地面に落ちる。これが自分の力の使い方をはじめて知った出来事。それ以降、二人だけの秘密の時間がより濃く流れていった。
そんなことをしている内にある感情が芽生えた。他の人には無い特別な力、選ばれた存在。そして自分が悪者を退治して回る夢物語。裏庭でしか使えない力であることも忘れ、自分が活躍する姿を想像して過ごす。
今にして思えばそういう想いが外に漏れてしまっていたのだと思う。簡単な話だ、当時の自分は腹芸が出来るような大人ではなく年端もいかない少年だったのだから。
結果どうなったかというと、その漏れていた想いにいち早く気付ける人物――祖父となるのだが――の態度が変わった。態度……というより対応といったほうが正しいか。
それまではただただ優しかった祖父。そしていつの間にかに優しさの中に諭す言葉が含まれるようになった祖父。
「界渡よ、いじめられてる子をみたらどうする」
「助ける!」
夢物語を突き進む少年にとっては当たり前の言葉
「どう助けるのかな」
「いじめっこをぶっとばしてやる!」
暴力の意味も知らず、傷つけることが傷つくことも知らない、知りえない、存在しない物語。
「それが正しいことだと本当に思うのかい」
「正しい……うーん、正しいかって言われてもわからないけど、助けたい!」
「助けたい、その想いは尊く、忘れてはいかん」
こういう話をしているときの祖父はいつも空を見上げていた。
「じゃがな、いじめっこを退治したら助けたことになるのかな、いじめられた子は界渡に感謝するのかな、そう……思うのかい?。力の使い方を誤っちゃいかん、力だけに頼っちゃいかん、力を成長させるのなら心も一緒に成長せねばいかん、忘れるんじゃないぞ界渡」
そしてこれでこの話は終わりだと言わんばかりに正面から見つめてくる、伝えたいことがしっかりと伝わっているのかを確認するように。
「うん、わかったよじぃちゃん」
優しく頭をなでながら伝えてくれた言葉。そんな言葉だからこそ幼いながらにわかろうとしていたと思う。でも、わかってる"つもり"でしかなかったんだと思い知った。
あの出来事で……。




