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ELS(仮)  作者: ハトムギ
第一章
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始まりの冒険

序盤は暗めの話が多くなります。

 修治と界渡の二人は、葬儀が終わった後によく冒険をした場所に向かっていた。


「懐かしいなここは。中学になってから疎遠になってしまったから4年ぶりくらいか」

「4年か……もっと時間が経っているように感じるね」


 祖父の家の裏庭、裏庭といっても山が丸々一つ分の敷地。そこが嘗て二人の冒険の舞台だった場所。そこで二人は祖父との思い出と共に二人だけの思い出とも向き合う。


「あったあった、ここだ」

「ここはほんと何も変わらないな」

「そりゃそうだ、じぃさんの私有地なんだし」


 二人だけのキャンプの際幾度となく利用した川縁、そこから1kmも進まない場所、今はもう無くなってしまったが洞穴があった場所。


「あの不思議な体験はここで起き、そして俺達はそれに夢中になった」

「うん……石、模様の浮かんだ石を見つけ、俺と修治それぞれに吸い込まれていって、そこから冒険ごっこが冒険になっていった気がする」



              ◇

              ◇

              ◇


 小学1年生になった夏休み、祖父の家にいつものように二人で遊びに来ていたころのことだ。


「修ちゃーんまってよー」

「遅いよ界ちゃんここだよー」


 先に走っていった修治に追いついて誘われた先を見ると、子供ならなんなく入れる程の大きさの洞穴があり中から淡い光が漏れ出ているのがわかる。洞穴の奥を覗き込むと漏れていた光は奥に行くほど強くなっており、入り口側の光を押しつぶさんばかりに輝いていた。


「界ちゃんに見せたかった綺麗で凄いところ!」

「ほんとに綺麗!」

「それでね、中に入るともっと綺麗なんだよ、行こう!」

「うん!」


 中に入り少し進むと大人でも立って歩けるほどの部屋があり、そこから二手に伸びる道が続いている。


「ここを見つけたときね、この部屋まできてすごいっておもって、界ちゃんを呼んで一緒に探検しようって思ったの!」

「すごい、すごいよ修ちゃん!」

「だから、今日は二人で探検!」

「探検、探検♪」


 光が漏れているとはいえ何があるかわからない洞穴をただ進むことは普段であれば戸惑いが先行したかもしれない、祖父に報告してから行動したかもしれない。しかし今日は二人でのキャンプが許された初めての日。そんな心が躍っていた日だからこそ、好奇心というブレーキのない乗り物に身を任せた。


 二手に伸びる道の右手は暗かった為に左手の道へ進む。十分程進んだろうか、奥が今まで以上に輝いていた。


「界ちゃんあそこ光が強いよ、行ってみよう」

「待ってよ、待ってったら修ちゃん」


 奥の輝きを認識し走り出した修治に置いていかれまいと必死に追いすがる界渡。先ほどまでは奥が光ってるなぁというくらいだった認識が飲み込まれそうなほどの輝きに変わり、修治が何処まで走っていったのかすらわからなくなっていた。それでも足は止まることなく駆け出し界渡も光の中へと吸い込まれていく。


「わぷっ、修ちゃん?いきなり止まるなんて危ないじゃない」


 光の渦へ飲み込まれた先で立ち止まっていた修治に思いきりぶつかってしまい、鼻頭を押さえながら立ち上がる。


「界ちゃんあれ、あれが光の正体だよ」


 促された先を見ると自ら光を放つ石があった。一つは赤く、燃え盛る炎よりも紅く光る石。一つは白く、全ての暗闇を無きものにしようと爛々と光る石。隣同士であるにも関わらず、赤い光は白い光に飲み込まれず、白い光も赤い光には飲み込まれず、それぞれが自己主張をして台座の上に鎮座している。


「これが光の正体……」


 修治が一歩また一歩と台座に近づくにつれ、踊っていた心に恐怖が芽生え不安が言葉となって現われる。


「修ちゃん、大丈夫?危なくない?いったんもどったほうがいいんじゃ……」

「大丈夫だよ、だってあんなに綺麗なんだよ」


 修治は取り付かれたように光の元へと進みその手に石を掴む。


「ほらね、全然大丈夫、界ちゃんも見てみなよ」


 赤く光る石を頭上に掲げて自慢げに見せられた為か、芽生えた感情を押し殺してもう一つの白く光る石を界渡が掴む。


「本当に綺麗……」


 同じように掲げて二つの光に目を奪われていると、二つの石が二人の手から離れ空中を彷徨いだした。突然のことに二人共に動きが止まり目だけが石を追い続ける。石はしばらく二人の周りをくるくると周っていたが二人の胸元の前で止まり、そのままそれぞれの胸へと吸い込まれていった。


 あまりに突然のことで言葉を発することも出来ずに互いに見詰め合い、しばらく呆然とし気付いた。お互いの胸の当たりが光っていることに。


「修ちゃん、胸……」

「界ちゃん、胸が光って……」


 はっとなりお互いに胸をみて気づく、光っているのは一人ではなかったと。そして突然の衝撃。胸の奥底から湧き上がる身体が焼き尽くされるようなかき乱されるような衝撃。とても子供の身体で耐えられるものではなくそこで意識が途絶えた。


 意識が戻った時、目の前にじぃちゃんの顔があってくしゃくしゃの顔で抱きしめてくれた。約束の時間になっても戻らなかった二人を心配した祖父が探しにきて、いつもの川縁で二人仲良く二の字で倒れていたらしい。


 この出来事の次の日、修治と色々話しているうちに自分達の異常に気付いた。修治は手から火が出せて、界渡は……なんというか、何かの力を身体から出せている感覚を感じた。もうそこからは夢中になってその力を使うための解明という名の特訓に取り付かれたのは仕方無いことだと思う。


ただ、普通の人としては異常であることは子供ながらにも認識していた為、懐いていた祖父にさえそのことを伝えずに二人だけの秘密としていた。


 その年の夏はまだ力をコントロールできているとはいえない内に終わりを迎え、両親の元への帰ることとなった。一応住んでいる場所は住宅街の一角であった為に特訓はどこでしようかと二人で話しあっていたがその問題は図らずも解決となった。力が使えなかったのである。


 使えないとわかっても諦めきれずに悶えたが一向に進展もなくあれは夢だったのかと二人して落ち込んだものだ。そして次の年の夏休み、また祖父の家へと遊びに行ったときに状況が好転する。力が再度使えるようになったのだ。


 祖父の家から車で一時間程かかるスーパーで使えなかったことも踏まえ、導き出した結論が裏庭付近では使えるがそれ以外の場所へ行くと使えなくなるということ。実際裏庭以外で使えたことがない為にこの推測は当たっていたのだろう。


 なぜ使えるのか、なぜ使えないのか、科学者や探求者であればそこが重要だったかもしれない。しかし当時の二人にとっては「そうなんだ」の一言で片付けていた。祖父の家にいけば力が使えて遊べる。その事実だけで十分だったからだ。


 それがわかってからは毎年の夏休みが今まで以上に楽しみで仕方なく、今まで以上に祖父から知識を吸収した。再度二人だけでキャンプに行けるという太鼓判をもらうために、より奥地へ行けるようになるために。そうして精進した結果、小学4年生くらいになるとある程度力を操ることも出来るようになっていた。


 そんないつ終わるともしれなかった秘密の特訓はある出来事で終わりを向かえ、中学にあがるころにはお互いに力のことを話題に出すことも無くなっていた、敢えて避けていたのだと思う。それが祖父の家との疎遠に繋がり、いつまでも熱をもつはずだった思い出に冷却を促した。


 結局、次に裏庭に戻ってきたタイミングは葬儀のタイミングとなり今に至ってしまうのだが、生前の祖父へもう一度会いにきたかったと今更ながらに思っても時既に遅し。


 人生の選択肢を間違えたかもしれないと悔やむしかないのだ。例え疎遠になる前に人生を巻き戻せたとしてもおそらく結果は変わらないだろう。それが運命だなんて諦めているわけではない。ただ、当時の自分達は周りを見れるような余裕がなかったのだから。

わかりにくい部分や表現などありましたらご指摘等お待ちしております。

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