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ELS(仮)  作者: ハトムギ
第一章
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決戦前日

「少し長いけど、それでもいいかい?」


 俺は隣に腰掛ける人物へ投げかける。

 その人物は、絵画から抜け出したような均整のとれた顔立ちをしている。

 瞳は見るものを吸い寄せるような感覚を覚えるも、清冽さを感じさせる心地よさも与えてくれる。

 髪は肩と腰の中間くらいまで伸び、その一本一本が意志を持つかのようにまっすぐに流れ落ちる。

 肌は中天に輝く陽の光を浴びても尚、溶けずに光り輝く様を見せる初雪のように白く、きめ細かい。


 そんな彼女はくすぐったそうに苦笑してさもありなんと答える。


「私が望んでいる。聞かせてくれ、君のことを・・・」


 彼女の瞳を見るとしっかりと俺を見据えていた。今彼女の世界には俺しかいない。そう感じた時、自然と話し始めていた。


「俺は、この世界の人間じゃない」



              ◇

              ◇

              ◇


 毎年の夏休みといえば祖父の家へと遊びに行くのが恒例だった。

 祖父の家はインターネットが普及している現代においても未だにその設備が整っていない程の田舎にあり、それゆえ都会育ちであった自分にとっては冒険ともいえる体験が出来る場所であった。そんな冒険の折にいつも一緒にいたのが幼馴染の瀬野修治だ。


 二人でのちょっとした探検、虫取りや秘密基地作り、祖父を交えては川釣りやキャンプといったこともしていた。その中でも祖父が教えてくれる知識は自分達で出来ることが目に見えて増えていく為、毎日が楽しくて仕方がなく、慣れてきては自分達だけで何処までできるのかと好奇心とも取れる渇望が沸き起こり、修治と二人だけでのキャンプも祖父に頼み込んでは繰り返していた。


 そんな日々があったからこそ忘れることのない祖父のこと。今見ているこれでもかというほどの笑みを湛えたその顔は生前に何度も見て、そして何度もくしゃくしゃにもしてみせてくれた馴染みの顔。怒った時でもすぐに許してくれて、その後に見せてくれた顔。そんな感情豊かだった顔から感情が失われてしまっていることに今更ながらに気づいてしまい、目頭が熱くなり顔を逸らしてしまう。


「あのじぃさんが死んじまうなんてな、あと100年は生きそうだったけど」

「……修治」


 平日ではあったが恩ある相手であったことを学校側へ直訴し、祖父のお葬式へ出席することが許された幼馴染の修治が肩に手をおいてくる。


「界渡、おまえの今の辛さは俺にならわかる。でも今は胸を張ろう。あのじぃさんならそう望むはずだ」


 幼馴染から界渡と呼ばれた自分は、逸らしていた顔を正面に向け震えていた唇を止める為に表情を引き締める。


「ぁぁ、そうだな……俺の、俺達の、自慢のじぃちゃんだからな」


 祖父と疎遠になる前にかけてもらった言葉が脳裏に蘇る。


"界渡よ、自分を見失うこと無かれ"



(今までありがとうじぃちゃん。俺、頑張ってみるよ。)

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