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第13話 女子のかわいいは本心です

 指の包帯も外れて、しばらく経ったある日の休み時間。

 俺は担任教師から頼まれていたプリントを教室まで運んでいた。


「あ、お使い? うわぁ重そうだね~。がんばって!」


「ど、どうも」


 廊下を歩いていると、すれ違う女子生徒に手を振られる。これで三人目。先ほどは女装疑惑の子にも応援された。メガネがなければ美少女にしか見えないなぁ。


 この頃――俺の周囲を取り巻く環境が変わってきている気がする。


 それは気のせいとか、背筋が伸びて視野が広がっただけでなく。明確に。


「おっと、遠坂くん。それが先生に頼まれてたプリント? 手伝おうか?」


「ありがとう……んと……ごめん」


 また女子の方から声を掛けられた。

 顔は知っているけど名前がすぐに出てこない。


「まーさーかー名前が出てこない感じ? もう三ヶ月近く同じクラスなのにひどいなー。優騎だよ。(こと)(ぶき)(ゆう)()、君の左隣のもう一回左隣の左斜め前のそのまた前の前の前の席!」


「遠い親戚みたいな距離感だった」


「しかもクラス委員長ですがっ!」


「ごめん。ずっと委員長呼びされていたから……出てこなかった」


「あっそっか。目立つ肩書があるとそういうこともあるね。納得しましたので、今回の非礼は広い心で許すことにします。この機会に覚えてね。優騎だよ」


「うん、琴吹さんだね」


「ははは、お堅いなー」


 俺の持っていたプリントの一部を奪い取って、琴吹さんが横並びに歩き出す。

 

「指の包帯。外れたばかりなのに、いの一番に雑用に立候補していて関心したんだ。遠坂くんって大人しそうにみえて結構男気あるんだってね」


「たまたまそういう気分だっただけだよ」


「またまた謙遜しちゃって。素直に受け取りなよ」


 特に深い理由もなく。筋トレ禁止期間の遅れを取り戻そうと思っただけで。

 ハイテンションで名乗りを上げてしまい、あとで冷静になって恥ずかしかった。


 二人でしばらく歩いていると、廊下で談笑する女子グループを見つける。

 その中で一番目立つ金髪の先輩が、俺の名前を呼び掛けて手を振ってくれた。今回は面識がある人なので俺も会釈を返す。たくさんの視線を浴びながら通り過ぎる。


「あの人と知り合い? かなり派手な感じだけど。三年生だよね」


「うん。ちょっとね。怪我が治るまでの間、諸先輩方とお話する機会がありまして。みんな優しい人たちだよ」


 こちらから声を掛けて、お節介をしてしまった。

 考えすぎかもしれないけど。あとで後悔はしたくないから。 

 

「うーん? 遠坂くん部活とかしてないよね。もしや……彼女さん?」


「いやいや、そういうのじゃないよ。あの人最近まで彼氏いたし」


「最近までかぁ。って、まさかの略奪――」


 このままでは琴吹さんに変な疑いの目で見られてしまう。話を変えないと。


「というか、琴吹さんはどうして手伝ってくれるの?」


「あれ、声掛けちゃイケナイ感じ? 君って実は一匹狼系?」


「そういうわけでは。これまで琴吹さんと接点がなかったから、驚いただけで」


 琴吹さんは、以前メガネで視たときの好感度は0だったはず。他に声を掛けてくれた子もそう。どういう心境の変化なのか、純粋に気になった。


「うちのお姫様がさ――あ、姫華のことだけど。最近君のことよーく話してくれるもんだから気になっちゃって。うち、こう見えてヒメと同じ学校出身で血の繋がりもあるんだ。ヒメのお金持ちのお爺さんの弟の孫――つまり”はとこ”だね。まっうちはそれほど裕福でもないし。かなり無理して通わされていたから。お嬢様としての要素は全部あの子にかっさらわれちゃってて。出涸らしみたいなものですが!」


「琴吹さんもお嬢様なんだ。雰囲気あると思うよ。歩き方とか姿勢も綺麗だし」


「っぽくないってよく言われるけどね。お世辞でもありあと」


 女子というのは会話の中で、人の名前を頻繁に出すそうで。

 湊さんはこの頃、親しい人に俺のことを話すようになったらしい。

 

 あの先輩の一件で、俺は自爆とはいえ負傷して病院に運ばれたのだ。

 騒ぎを目撃した生徒もいて。俺たちの関係性を周囲に説明する必要が生じた。


 湊さんの事情は口外するものでもないし。第二第三の先輩が現れる可能性もある。

 俺と湊さんはお互い編み物が趣味で、元手芸部の部室で教え合う仲という設定で通した。元手芸部の顧問である担任も協力してくれて。いっそ二学期から手芸部を復活させようという話も出ている。その場合改めて部員を集める必要があるけど。

 

 こうして雑用に名乗り出たのは、庇ってくれた担任へのお礼を兼ねていたりする。


 これまで湊さんは、特別親しい異性はいないものとされていた。 

 俺という人物が突然浮上したもので。現在、巷を騒がせてしまっている。

 

 名も知らぬ男子から睨まれることも増えたというか。

 女子は好意的に捉えてくれる子が多いので助かっている。


「個人的にさ、君に親近感をもっていて。ヒメの傍にいると色々大変じゃない? あの子大人しそうな雰囲気で結構頑固なとこあるし。意志を貫き通す強さがあるというか、見た目か弱いお姫様なのにお父さん譲りの武闘派だし」

   

「……確かにとんでもなく強かった。元自衛官のお父様に幼少の頃から護身術を叩きこまれたんだってね」


 一回り大きい先輩を瞬殺したのには度肝を抜かれた。 

 現場を見ていない人に説明しても、信じてもらえないだろう。


 俺は喧嘩慣れしている勉を見てきたから、耐性があるけど。

 慣れてない人からすれば、同じ女子の視点では怖いのかもしれない。


「正直、男慣れするまでに数人の死傷者が出るかも、とか思ってました。無事に男友達ができてホっとしたというか。うちからも、ありがとうと言わせて! そしてこれからもヒメの手綱をしっかり握っておいて! よろしくっ! 学内の平穏は君の手腕に掛かってるぞ!」


「……あはは。俺がなにかするまでもなく、湊さんは間違いなく成長しているよ」


 湊さんの前の学校での評判が気になるところ。


「ただひとつ心配事があって……俺がセットで注目されるようになってしまって。変にライバル視されることも増えて。これって湊さんの評価まで下がらないかな?」


「気にし過ぎじゃない? 学生なんて、一部例外を除けばみーんな同じ流行を追っかけて、似たり寄ったりで。親の庇護下で、身の回りの世話をして貰ってたりするわけじゃない? 君を勝手にライバル視するイケメンだって、家ではお母さんにご飯作ってもらったり。大人っぽく見えてもまだまだ子供で。社会に出ればきっと大したことないんだよ。上には上がいるってさ」 


「とても実感が伴った言葉だ」


「うちの人生の大半は、ヒメと共にあったから。内でも外でもよく比較されたし。脇役として、身の程を弁える術を覚えたんだよ」


 話を聞いていて、俺も琴吹さんに親近感が湧いてきた。ただ、俺の考え方も昔とは変わってきている。


「琴吹さんだって俺から見れば特別に思えるよ。それにさ、脇役だって主役を超える瞬間があるんだ。人気が出てスピンオフで主役になったりして。そういう展開みんな好きじゃないかな? ちなみに俺は大好き」


「……あはっ、ありあと。君、褒めるの中々に上手いね? てか大好きって。年頃の女子に向かって勘違いさせる気かぁ~? 悪い狼さんだ」


「あっ、決してそういう意味では……!」


 琴吹さんが照れ臭そうにして、冗談だよと軽く肩をぶつけてくる。ほのかに制汗剤の匂い。彼女は身長もあり、しかも金に近い茶髪でショートカット。あ、ヤバい。俺の好きな女性像に近いからか、今さら緊張してきたんだけど。


「うん。なんかさ、遠坂くんかわいい。ヒメが一緒にいるのもわかる気がする」


「それ、よくわからないんだけど。どういった部分でかわいい判定されるの?」


「ん? たとえばー女子との接し方とか? 不慣れな感じがありつつ、不器用ながら相手に合わせようと一生懸命なところ。母性というのかな、いじらしいなぁって……くすぐられちゃう。そういうの刺さる子結構いるからね。特にヒメとか、年の離れた弟くん大好きだし。ほら、女子の前でかっこつけたがる男子は多いけど。女慣れしてる男が、イケメンが怖いって思う子も一定数いて――これもヒメだな」


 湊さんは明確な理由があるにしろ、イケメン嫌いの女子って存在するんだ。

 まぁ世の男たちの中で処女厨という言葉が蔓延しているんだ、逆もあって然りか。


「お似合いだと思う。遠坂くんならヒメを安心して任せられる。全力で応援してるから!」


「俺たちそういう関係じゃないし……お友達としてならともかく。恋人として釣り合うとは思ってないよ。美女と野獣……というと、野獣にも失礼か」


「おやおや卑屈だなぁ。みんな得意分野の中で勝負するわけじゃん。誰しも失敗するのが怖いし。二人がしていた特訓のことはヒメから聞いてるよ。君は――苦手なことも、逃げずに向き合ってきたんだよね? その理由が誰かのためって、ドラマじゃん。今どきSNSでも一般人なのに芸能人並みの人気や華のある子が多いんだから。ただ顔が良いだけじゃ埋もれていく一方だし。大事なのは内面だったり、ストーリー性だったり、物理的な距離だったり。つまりは付加価値だよ」


「大事なのは……付加価値」


 なんとなく理解できる気がする。道を歩けば素人目でもかっこいい、かわいいに溢れているのに。その場ではいいなと思っていても、大体次の日には埋もれてしまい、刹那的な感情で終わる。


 ずっと心に残り続ける相手というのは+αの要因、魅力があって。付随する物語があった。


「君はもっと自信を持った方がいいよ。あの異性が苦手だったヒメが、毎日浮かれ――楽しそうにしている。君は、君が恐れる他の男子を出し抜いたんだよ」


「褒めてもらえるのは嬉しい。けど……前提がその、かわいいというのが。どうにかならないかな。琴吹さんだって、かっこいい男子の方がいいと思わない?」


「んー素でかっこいい男性には憧れるけど。かっこつけは別かな。同年代の男子なんて大抵後者なわけで。素の状態と差があり過ぎるとガッカリというか。やっぱり限度があるよ。ほら男子だって、彼女のすっぴんがほぼ別人なのは嫌じゃない?」


「あー少し納得できるかも」


 他人から良く見られようとする。かっこつけるって、化粧をしているのと同じなんだ。やりすぎれば不快に思われ、剥がれたときにギャップが出るし。自分に合った化粧品を見つけ出さないといけなくて。単純に誰かの真似をすればいいってものでもない。


 ふと、陽和に嫌味を言われて、泣きそうになっていた先輩を思い出した。

 確かにあの落差は俺が女子なら冷めてるかも。陽和もちょっと引いてたし。


「その点、男子へのかわいいは素の状態を差すから。そこに男らしさのエッセンスを足せれば、ギャップ萌えも狙える。最強じゃん!」


「んん……」


「男子が言われて抵抗ある言葉なのは知ってる。だからこそ、本心だってことも伝わって欲しいかな」


 俺も以前、湊さんにかっこいいと伝えていた。 

 女子に対する褒め言葉としては、あまり適切ではなかった。


 それでも自然と零れ出た嘘偽りのない本心。そういうことなんだろう。


「男としてかっこつけたい気持ちも尊重するよ。ただ最後までやり切る覚悟は持つべきかな。男子ってさ、付き合う付き合わないで思考が止まってる子が多い印象だから。その先のこともしっかり考えておかないと。恋人ができてからが本番なんだからねー」


「……そうかもしれない。湊さんと付き合うとか、そういう仲じゃないけど。ありがとう。参考になったよ」


「ちなみにうちは、付き合うなら揶揄い甲斐のある、かわいい系の男子かなー。ずっと女子校にいたから。ヒメと同じでまだフリーだよ?」


 琴吹さんがにんまりと俺を見つめていた。

 思わず視線を逸らすと、下から覗き込んでくる。


「あれーちょっと意識しちゃった? 耳まっか。やっぱかわいいの、えぃえぃ」


「……のーこめんとで」


 あくまで湊さんと仲良くしている、という前提があっての高評価だったけど。

 ネット配信者の登録者数が万を超えた辺りで、異性に困らなくなると聞いたことがある。名声というのはそれだけ魅力があり、それ一つで無名のイケメンに勝るのだと身を以て知った。

 

 決して、俺自身の実力ではないので、そこは勘違いしないよう。……自惚れるなよ俺。

 

 それにしても琴吹さんは明るくて話しやすいし。モテそうなものだけど。

 類は友を呼ぶというか。脇役だと卑下していたけど十分過ぎるほど美形だし。


「そうだ、遠坂くんのID教えてよ。ここまで打てば響く、真面目に付き合ってくれる子も中々いないからさ。この機会にもっと仲良しになろうよ!」


「うぇっ……いいの? 本当に?」


「なにそのちょっと萌える初心な反応。もしかして、女子とは初めてな感じ?」


「う、うん。全然ない。初めてです」


 人生で初めて、女子に連絡先を聞かれた。ヤバい嬉しい。

 

「……んん? あれっ、ヒメとは連絡取り合ってないの?」


「それはその……ほぼ毎日、顔を合わせていますので」


 基本学校での集まりだし。休日も事前に約束して会っていたので。

 これまで特に必要性を感じなかった。というか今さら聞き辛いのもある。


「ええっ、逆にすごくない!? あの子もお手紙が好きだったり、古風なとこあるから。自分からだと、はしたないとか思ってるのかな」


「と、とにかく。コード出すね」


 プリントを落とさないよう支えながら、俺はスマホを急いで取り出す。

 ついに家族以外の異性の連絡先が加わるのか、心なしかスマホも歓喜に震えているような――緊張しているだけだった。


「待ってて…………あ゛あ゛っ゛――――ごめん、やっぱ今の話なかったことで!」

 

「ちょっ、琴吹さん!? ちょっと……えぇ……?」


 琴吹さんがプリントを俺に返して、一目散に去っていく。

 そんな……期待させられて落とされた。揶揄われたのかな。


 まぁ……その……嫌な気分ではなかった。

 むしろ創作だと、割と好きなシチュエーションである。

 もっと振り回されてみたい、なんて。


「?」

 

 背中に視線を感じ、振り返ると――湊さんが廊下の奥で立っていた。

 いつも笑顔を絶やさない彼女が、琴吹さんが去っていった方向を、真顔で見つめている。


 反対側、逃げた琴吹さんはというと。急ブレーキ。

 こちらに手を合わせ。その後、意味深に笑みを浮かべた。

 

 対する湊さんはじとーっと。どこか不機嫌そうな顔に。

 それでもやっぱり愛嬌があるのズルいと思う。あと挟まれた俺はどういう顔をするのが正解なんだ。


「ゆーきちゃんと、楽しそうでしたね」


「あ、うん。とても愉快な人だったよ。湊さんの幼馴染ではとこさんなんだよね」


 湊さんがゆっくりと近付いてくる。


「私とお話しているときより……和樹くん笑顔が多かったです」


 近い近い近い! プリントが間にあるとはいえほぼ密着状態だよ。


「湊さんの場合、一緒に居て気持ちが落ち着くというか。ほら、人って緊張すると笑顔が出るっていうし!」


「緊張したのですか……?」


「だって琴吹さんは俺の好きなタイプに近いから。長身だし髪も染めてるし!」


「そうですね。私に足りない要素のすべてを……ゆーきちゃんは持っていますから」


 湊さんがしょぼんと落ち込んでしまった。俺は、どうすればよかったんだ。


「……和樹くん。ゆーきちゃんはプリントを何枚持っていました?」


「え? 多分、四分の一くらい」


「半分貰いますね。んしょ」


 問答無用で半分取られる。結構重量があるというのに。

 湊さんは小柄なので、力はあっても少し歩き辛そうにしていた。


 自分で雑用に名乗り出た手前、半分を押し付けるのもどうなんだろう。


「よし……それじゃあ、お礼に俺も半分貰うよ」


「あっ、和樹くん!? それでは意味が――」


「ではお先に!」


 俺はそのまま湊さんを置いて駆け足。階段はゆっくりと。

 一足先に教室に飛び込み、プリントを教壇に乗せる。任務完了。


 あとから追いかけてきた湊さんが、几帳面にプリントを揃え。

 そして身体にぶつかる勢いで俺の腕を捕まえてきた。


「もぅ、和樹くんいじわるです。指も治ったばかりだというのに無理をして、どうして最初から頼ってくれなかったのですか。またもしものことがあれば、陽和ちゃんに怒られてしまいますよ?」


「あはは、ごめん。次は頼るから陽和に報告するのは勘弁して。あと、手伝ってくれてありがとう」


「お礼を言われるほど私、お手伝いできていませんっ!」


 一呼吸おいて、


「ぷっ」

「ふふ」


 おかしくなって二人で吹き出して笑う。


「「「「「…………………………」」」」」


 ふと、周囲を見渡すとクラスメイトたちが呆然としていた。ヤバい。部室の空気感を教室に持ち込んでしまった。湊さんは顔を真っ赤にして、俺の背中にくっついて小さく縮こまり。俺の視界の隅、廊下の窓から琴吹さんが爽やかなサムズアップをしていた。


 ――――――

 ――――

 ――

 

 そして放課後。


「和樹くん。受け取ってください」


 誰もいない教室で渡されたのは、連絡先が並んだ手書きのメモだった。

 彼女のライン、インスタ、実家の電話番号まで。みっしり詰まっている。

 隅っこに謎の動物イラスト。ゆるキャラなのにムキムキ。もしかして俺かな。 


「…………」


 目的を果たした? のに、無言で見上げてくる湊さん。

 かかとを上下させてなにかを懸命に訴えている。かわいい。


「――あ、そっか。俺の連絡先?」


 こくこくと、物凄い勢いで頷く湊さん。ぱっと笑顔の華が咲く。正解だった。

 その場で交換した。俺の連絡帳に妹以外の異性の名前が初めて加わったのだった。


「私、家族以外で初めてです。異性の方と交換したのは」


「俺も……実は琴吹さんにも聞かれていたんだけど、逃げられちゃって」


「どうしてですかね?」


 どうしてだろうね? 


「和樹くんは十月生まれなのですね。それもハロウィンです」


「覚えやすいと家族から評判。湊さんは八月なんだ」


「はい。私が先に……和樹くんよりお姉さんになれます」


 どこかホッとした様子で、湊さんがカボチャのケーキでお祝いしますと約束してくれた。


「湊さんがお姉さんなら、俺も弟くんになるのかな?」


「ふふ、私が愛する弟は星斗だけですよ」


「それはそう」


「和樹くんだって、一人だけですからね」


「? そうだね」


 よくわかんないけど上機嫌だ。

 俺も今から誕生日プレゼントを考えておかねば。


「それでは、あまり引き留めていると陽和ちゃんに怒られてしまいますので。明日もお昼休みに。道中お気をつけて」


「うん、また明日。湊さんも気を付けてね」


「はい、安全運転をお願いしていますので」


 結局学校で毎日顔を合わせるのに、交換する意味あったのかな。 

 疑問に思っていると。校舎を出たところで、スマホが震える。

 これからもよろしくねと、かわいらしい猫のスタンプ。


 返事すると、また違う動物スタンプが。今度はこちらからスタンプを探して、送る。お、おお……なるほど。これ、謎の駆け引きが発生して楽しい。みんながはまるのも納得。


 家に帰ったあとも、しばらくラリーは続いたのだった。

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