番外編⑤アデルの幸せ
アデルはラモンテ公爵家の正式な養女となり、ルカと結婚した後も穏やかな日々を過ごしていた。
公爵夫妻は孫のアデルを慈しみ、彼女の幸せを何よりも願っていた。
時が流れ、アデルはルカとの間に二人の子どもを授かった。長男の名は「セドリック」。聡明でしっかり者の彼は、祖父であるラモンテ公爵によく似た面立ちをしていた。そして長女の「エレノア」は、母アデルによく似た愛らしい少女で、家族の誰からも愛されていた。
「アデル、セドリックとエレノアがやっと寝ましたよ。」
ルカが優しく声をかける。アデルは並んで寝ている二人の子どもを見つめながら、そっと微笑んだ。
「ありがとう、ルカ。今日も元気いっぱいでしたわね。」
「セドリックはあなたの幼い頃そっくりだと、公爵様が言っていましたよ。それにエレノアは、あなたの母上によく似ているそうです。」
アデルはくすりと笑った。母の面影を娘に見つけるのは嬉しくもあり、少し切なくもあった。しかし今は、愛する家族に囲まれて幸せな時間を過ごしている。
ある日、ラモンテ公爵夫妻が孫たちを抱きながら、しみじみと語った。
「お前がこうして幸せになってくれて、本当に嬉しいよ。」
「アデルが笑っている姿を見ると、亡き娘もきっと安心しているでしょう。」
アデルは涙ぐみながら、祖父母の手を握りしめた。
「おじい様、おばあ様……。私、本当に幸せです。」
その言葉に、ルカも微笑みながら頷いた。
「これからも、ずっとあなたと子どもたちを支えていきます。」
すると、エレノアが小さな手を伸ばしてアデルの頬を撫で、無邪気に微笑んだ。
「ママ、ないちゃだめー!」
アデルはその愛らしい仕草に思わず笑い、エレノアを優しく抱きしめた。
「ええ、泣かないわ。だって、私は今とても幸せなんですもの。」
過去の苦しみは完全に消えることはない。それでも、今は愛する夫と子どもたち、そして家族がいる。アデルはこの幸せを守りながら、穏やかで温かな日々を大切に生きていこうと誓った。
そして、新しい命と共に、彼女の未来はこれからも輝き続けるのだった。




