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番外編④レティシア視点

 私はレティシア・モンテヴィダ。かつてはアルマス男爵家の三女に過ぎなかったが、運命は私を侯爵夫人の座へと導いた。

 侯爵との再婚が決まった時、私は歓喜した。これで何不自由ない貴族としての生活を手に入れられる。だが、目の前には忌々しい存在があった。前妻の娘、アデル。

 初めて彼女と対面した時、その気品と美しさに苛立ちを覚えた。まるで亡き母親の生き写しのようで、侯爵は彼女に目を細めていた。私とアリシアがどれほど取り繕おうと、彼はアデルを大切にしていたのだ。

 私は徐々に策を巡らせた。最初は些細なことからだった。些細な嫌がらせや、使用人たちへの命令。徐々に彼女の立場を狭め、彼女を追い詰めていった。侯爵は私の言葉を信じ、アデルへの態度を冷たくしていった。時間をかけて、彼の心からアデルの存在を薄れさせるように仕向けたのだ。

 やがて、アデルに対する悪い噂を広めることにした。彼女が傲慢で、わがままで、使用人に乱暴を働いているという話を、貴族社会に少しずつ浸透させた。そうすれば、アデルがいなくなった時、誰も不審に思わない。私の思惑通り、次第にアデルを遠ざける声が高まっていった。

 そしてついに、婚約破棄の話が持ち上がった。ルシウスがアデルよりアリシアを選んだのだ。アデルがこの家から去った時、私は心の底から勝利を確信した。もう彼女はいない。私は侯爵夫人としての地位を確立し、アリシアを理想の相手へと嫁がせる最高の計画を進めた。

 しかし、全ては思い通りにはいかなかった。


 アデルが去ってしばらくすると、妙な噂が流れ始めた。私がアデルを虐げていた、アリシアがアデルの婚約者を奪った、侯爵家の実態は酷いものだったと。それまで私に媚びていた貴族夫人たちが、徐々に距離を取り始めた。侯爵も領地経営に苦しみ始め、支援を求める声にも誰も応じなくなった。

 そして、王家のパーティ。これは私たちにとって、失いかけた名誉を取り戻す絶好の機会だった。ここで華やかに振る舞い、かつての栄華を取り戻すつもりだった。

 しかし、そこに現れたのは、かつて私が追い出したはずのアデルだった。

 彼女はラモンテ公爵夫妻と共にいた。その姿は侯爵令嬢としての気品と風格に満ち、周囲の貴族たちの羨望の的となっていた。そして、その目には、私に向けるべき恐れも、憎しみもなかった。私という存在など、彼女にとってもはや取るに足らないものなのだと突きつけられたようだった。

 その日を境に、モンテヴィダ侯爵家の没落は決定的なものとなった。援助を申し出る者はおらず、信用は地に落ちた。侯爵は領地を守るために財産を手放し、ついには借金に追われるようになった。私が望んだ豪華な暮らしはもはや叶わない。

 私はこの結末を予想していただろうか?

 そんなはずはない。私は勝者になるはずだった。

 しかし、今、目の前に広がるのは、全てを失った現実。侯爵夫人の称号も、華やかな社交の場も、何もかもが過去のものとなってしまった。

 アデルの姿が脳裏に蘇る。

 ——どうして、あの時あの娘を排除しようとしたのか。

 そんな後悔の念を抱いても、もう遅い。

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