エピローグ
ラモンテ領は春の訪れを迎え、広大な庭園には色とりどりの花々が咲き誇っていた。アデルはベランダからその景色を眺めながら、穏やかな風を感じていた。
「お嬢様、お茶の準備が整いましたよ。」
侍女が微笑みながら声をかける。アデルはゆっくりと振り返り、テラスに向かった。そこには祖父母とルカが待っていた。
「春の風が心地よいわね。」
祖母が優しく微笑みながら紅茶を注ぐ。祖父もゆったりとした口調で言った。
「この季節は、まさに新たな始まりにふさわしいな。」
アデルは静かに頷いた。彼女の人生は辛い過去を乗り越え、新しい家族とともに歩む未来へと向かっていた。
その時、ルカが穏やかに口を開いた。
「アデル様、これからのご予定はお決まりですか?」
「そうね……。これからは、ラモンテ家の一員として、領地の仕事を学びながら、少しずつ自分の役割を果たしていきたいと思っています。」
彼女の言葉に、祖父母は満足げに微笑んだ。
「それは素晴らしいことだ。アデル、お前ならきっと立派に務めを果たせるだろう。」
「ありがとう、お祖父様。」
ルカも柔らかな表情で頷く。
「それなら、私も全力でお手伝いします。」
アデルはルカの言葉に自然と微笑んだ。
「ありがとう、ルカ様。あなたがいてくれると、とても心強いわ。」
二人は穏やかな空気の中で視線を交わし、静かに微笑んだ。ラモンテ家での新たな人生が、彼女にとって確かな幸せへとつながることを感じていた。
かつてのモンテヴィダ侯爵家の影はもうない。アデルは過去に囚われることなく、温かな家族とともに、未来へと歩みを進める。
春の陽光が降り注ぐ庭園の中で、彼女の新しい物語が始まろうとしていた。




