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 舞踏会当日、ラモンテ公爵邸では華やかな準備が整っていた。アデルは静かに深呼吸をしながら、祖母が用意してくれたロイヤルブルーのドレスを身に纏う。

「まあ、なんて美しいの!」

 鏡越しに祖母マルグリット公爵夫人が目を細めて嬉しそうに微笑む。

「ありがとうございます、お祖母様……。」

 アデルは少し緊張していた。久しぶりの社交界。しかも、王宮の舞踏会という場である。誰かに顔を見られても大丈夫だろうか。過去の記憶が頭をよぎる。

「大丈夫よ。あなたは堂々と振る舞えばいいの。」

 マルグリットは優しく微笑み、アデルの手を取った。その手の温もりに少しだけ緊張がほぐれる。

「そろそろ出発の時間です。」

 ルカが静かに告げると、微笑みながら手を差し出した。

「ええ……ルカ様、今日は本当にありがとうございます。」

「光栄です。」

 ルカは深く一礼し、アデルを優雅にエスコートしながら馬車へと向かった。

 アデルは深呼吸し、馬車へと乗り込んだ。

 

 一方、王宮の舞踏会場ではすでに多くの貴族が集まり、華やかな雰囲気に包まれていた。

「ようこそ、モンテヴィダ侯爵令嬢。」

 アリシアは最高級のドレスに身を包み、得意げな笑みを浮かべながら会場へと足を踏み入れた。彼女の隣には、少し険しい表情のルシウスがいた。

「ルシウス、ちゃんと私を見てる?」

 アリシアはルシウスの腕を取り、くるりと回ってみせる。彼女のドレスは確かに豪奢な金糸の刺繍が施されたもので、華やかではあったが、どこかけばけばしさもあった。

「……よく似合っている。」

 ルシウスの返事はどこか上の空だった。最近、彼の中に芽生えた違和感は拭えないままだった。

「ねえ、ルシウス? どうして最近そんなに考え込んでいるの?」

「別に……。」

 曖昧な返答をする彼に、アリシアは不満げな視線を向けたが、すぐに他の貴族たちの注目を浴びることに夢中になった。

「当然よ! ルシウスの婚約者なのだから、完璧でなければならないもの。」

 アリシアは誇らしげに胸を張る。


 その頃、ラモンテ公爵家の馬車が王宮へと到着した。

「さあ、行きましょう。」

 ルカがアデルへ手を差し出す。彼女は微笑みながらその手を取り、静かに馬車を降りた。

 会場へ足を踏み入れた瞬間、その場の空気が一瞬変わった。誰もが見慣れぬ美しい令嬢の登場に目を奪われた。

「……あれは?」

「どこのご令嬢かしら?」

 ロイヤルブルーのドレスを身に纏った女性。その優雅な姿と気品に満ちた佇まいは、誰の目にも焼きつくほど美しかった。その女性の傍らには、一人の男性が控えている。

 ひそひそと囁く声が広がる中、アデルは堂々とした足取りで会場へと進んでいった。

「……アデル?」

 遠くから彼女の姿を見つめていたルシウスの瞳が大きく揺らいだ。

 周囲の貴族たちが次々とアデルに視線を向け、彼女の名を尋ねる声が飛び交う。

「まさか、あれがラモンテ公爵家のご令嬢……?」

「確か、以前までモンテヴィダ家にいたと噂されていたわね。」

「ずいぶん雰囲気が違う……あんなに美しかったかしら?」

 噂話が広がる中、アリシアもまたその視線の先にアデルを見つけ、目を見開いた。

「……嘘でしょう? どうしてお義姉様がここにいるの?」

 彼女はぎりっと歯を食いしばったが、その隣でルシウスが驚いたまま立ち尽くしていることに気づくと、不安が胸をよぎった。

「ルシウス?」

 アリシアが声をかけても、彼は応えなかった。彼の目はただ、アデルの姿を追い続けていた。

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