バーディーアンはどうなる?
上級の姿を見て、思わず安堵の溜息を漏らす。
(守さんも来てくれたんだ。これでなんとかなる)
何しろ、この後俺の一番苦手な仕事が残っている。でも、守さんがいてくれたら百人力だ。
やって来たのはサンサンクの三人、パワーナックルさんとピースガーディアンさんの五人。俺からしたら顔馴染の五人なんだけど、周りは違うらしい。
さっきまでとは空気が一変し、アジトがざわめき始めた。
「ご、吾郎。凄い。本物のサンサンクだよ。しかも三人揃っている。挨拶した方が良いのかな?でも、丙級の僕の事なんか知らないだろうし、非常時に挨拶するのは失礼だよね」
鷹空さんがサンサンクを見て目を潤ませている。同じウィッチ系ヒーローだから、尊敬しているんだと思う。
それと鷹空さん、三人とも君の事を良く知っています。俺が尋問されて喋ったからなんだけどね。
(鷹空さんと手を繋いだままだ。絶対にやばい)
この状況をサンサンクの三人が見逃す訳がなく……。
「貴方達がバーディーアンね。ご苦労様……特に鷹空翼さん、コカトイエローがお世話になっているみたいね」
俺と鷹空さんの手を見てニヤニヤしている雪香さん。
「コカトイエローの第二形態、久し振りに見るわ。翼ちゃんが怯えないで良かったね、ゴロちゃん」
美影さんがクスクス笑っている。絶対に弄る気満々だ。
「鶏君、バイタルに乱れがあるぞ。特に脈拍が高くなっている。なんでだろうね。ホワイトは分かる?」
獺川さんがすっとぼけた感じで、雪香さんに尋ねる。サンサンクの鳥かごパスだ。俺を囲んで弄り倒すつもりだ。
「コカトイエローも、もう高校生よ。女の子と手を繋いだくらいで、ドキドキすると思う?」
ニヤニヤしながら、俺を見る雪香さん。正直に言おう。ハーレムライオンと戦った時とは比べ物にならない位ドキドキしています。
「ゴロちゃん、蛇君が真っ赤だぞー。ホークソルジャーちゃん、コカトイエローをよろしくね」
美影さんが鷹空さんに微笑みかける。
(気まずくなる質問は止めて。手を離されてそんなんじゃないですとか言われたら泣くぞ)
なぜか鷹空さんは握っている手に力をこめた。
「はい、僕に任せて下さい」
今のはヒーローコカトイエローを任せてって意味だろうか?それとも……。
「バーディーアンの三人は体調をチェックします。今後の事もありますので、こっちに来て下さい」
獺川さんがバーディーアンの三人に話し掛ける。さっきまでとは違い威厳のある声だ。
……ポーチャーは壊滅したので、バーディーアンはヒーローを辞めても良い。その辺の話もあるんだと思う。
「皆さんは私達が保護します」
爽やかに伝えるピースガーディアンさん。同時に牢屋から黄色い歓声が沸き上がる。
流石はピースガーディアンさん、とても俺と同じ上級ヒーローとは思えない。
「流石はピースガーディアンさんだ。さっきまでポーチャーに怯えていた女の人達を一瞬で安心させた」
俺とは実力や見た目が段違い。なにより、カリスマ性の違いだと思う。
「いや、あの人達が怯えていたのは、お前にだぞ」
月山が速攻で訂正してきた。悔しいけど、反論出来ない。
「しかし、本当にお前も上級ヒーローなんだな。サンサンクの三人と普通に話していたし……吾郎、パワーナックルの兄貴と握手したいんだけど、頼んでもらえるか?俺、ガキの頃からの憧れなんだよ」
健也がキラキラした目でお願いしてきた……全員月一で会っているし、何なら俺はサンサンクの玩具だ。
……それと健也君、俺も上級ヒーローなんだぞ。扱い違い過ぎない?
「君が健也君か。コカトイエローから話は聞いているよ。君達にお陰でコカトイエローに笑顔が増えたんだ。ありがとう」
そう言って健也と握手をする大山さん。そして健也は憧れのスポーツ選手に会えた少年の様に目を潤ませていた。
「吾郎、もしかしてエスパレオンさんとも知り合いなのか?サインとか貰えない?」
今度は健也が少年状態に……今日君達を助けたヒーローは誰だか分かっているのかな?
「エスパレオンは、ここの亜空間が消滅しない様に結界を貼っている。亜空間を出たらサインを頼んだらいいよ……コカトイエロー、エスパレオンから伝言だ。『亜空間の出口が観察されている可能性があるから変身を解いておけ』だとさ」
川本さんが、ここの亜空間を調べた所、外部から観察出来ない様になっていたらしい。
そして俺は大酉吾郎として、ポーチャーのアジトに連れて来られた。それなのに、俺が消えてコカトイエローがいたら怪しまれる。
「今回は俺は被害者扱いって事になるんですね」
ポーチャーを倒したのはバーディーアン、もしくは救助に来た上級ヒーロー。
「被害者?……アジトを壊滅させた張本人が。ポーチャー全員、オーバーキルしてたろ」
月山君、そこは大活躍したヒーローって言って欲しいな。格下でも、確実にとどめを刺す。それが俺の戦い方だ。
「……吾郎、智美はどうなるんだ?もし、ヒーローを続けるとしたら、俺はどうしたら良い?ヒーローになって、あいつの手助け出来る方法とかないのか?」
健也が真剣な目で聞いてきた。大切な幼馴染みが、命懸けで戦っていた。心配するなって方が無理だろう。
「やめておけ。ヒーローはなりたくてなれるもんじゃない。ある日突然、ヒーローになってしまうんだ。自分の意思とは関係なくな……ヒーローなんてある意味呪いだぞ」
ヒーローに憧れる人は少なくない。でも、ヒーローになれる方法は分かっていない。
熱血漢で優しい、ヒーローにうってつけの人だからと言ってヒーローになれる訳じゃない。
逆に俺みたいな臆病な卑怯者がヒーローに選ばれる事だってある。
現役ヒーローとは思えない発言に、しんと静まり返る。
「私、少し分かるかも……アイドルはファンの理想を演じなきゃいけない。恋愛はバレたらお終いだし、悪口は厳禁。ファンの理想を演じ続けなきゃいけないから」
秋待さんがしんみりとした口調で話す……突っ込ませてもらえれば恋愛禁止じゃなくて、バレたらなのね。
「ヒーローは戦いから逃げちゃいけない。皆を守って命掛けで戦う。後戻りできない坂道を必死に登っている気分になるんだ。何があっても前に進まなきゃいけない。痛くても、疲れていても前に進むしかないんだ……でも、帰る場所があるから頑張れる。俺より月山に聞け。こいつは似た存在のアイドルの帰る場所らしいぜ」
ある意味俺以上にバレたらやばい立場なんだよな。
「あいつが帰ってこれる場所か……まずは気持ちを伝える事からかな」
確実に成功するよね。俺の周囲リア充多すぎないか?俺月山と健也の惚気を聞かなきゃいけないの?ヒーローなのに、不遇過ぎないか?
「吾郎、ピースガーディアンが囚われていた女性を亜空間外に連れて行った。変身を解け」
大山さんに言われた通り、変身を解除する……ハーレムライオンに殴られた所が地味に痛む。
「翼ちゃん、負傷者に付き添ってあげてね。吾郎、バーディーアンには、貴方のサポートをしてもらう事になったから。連絡役は翼ちゃんね」
雪香さんの話によるとバーディーアンは俺のサポートをしながら、ヒーローのランクを上げていくそうだ。
「吾郎、これからは公私ともによろしくね。それと何かあった時の為に、合鍵が必要だと思うの。僕が代表して預かっておくから」
そう言って満面の笑みを浮かべる鷹空さん。公私ともに……合鍵……脳の処理がおいつきません。
(勘違いしちゃ駄目だ。鷹空さんは、あくまでコカトイエローのサポート役なんだぞ)
でも、一緒にいれる時間は確実に増える訳で……夢見ても罰当たらないよね?




