異形と友情と愛情?
書きたかった場面です
第二形態と叫ぶと同時に、黄色い煙が吾郎を包み込む。
その煙が晴れると同時に絶叫が響き渡った。声の主は牢屋に閉じ込められていた女性達。
顔は青ざめ、目には涙が浮かんでいた。
そこにいたのは異形の生物。怪異といっても差し支えない姿。
頭には巨大な鶏冠があり、口には鋭いくちばし。体には黄色い羽毛が生えており、背中には大きな翼がある。
腹は蛇の腹で、手と足には鋭い爪が生えていた。
特に異質なのは尻尾である。蛇が鎌首をもたげて周囲を威嚇しているのだ。
「おい、猫。さっさと変身しろ。今のお前だと瞬殺でつまらねえ」
吾郎がハーレムライオンを睨みながら詰め寄る。恫喝に近い乱暴な口調である。
「猫……俺は獅子だぞ。まあ、いい。変身すれば条件はおな……じ」
余裕の笑みを浮かべていたハーレムライオンであったが、変身と同時にその笑みが消えた。
「ライオンも猫科だろうが。元の姿に戻って実力の差が分かったんだろ?かかって来いよ」
嘲笑ともいえる口調である。しかし、その迫力に気圧されて、ハーレムライオンはじりじりと後退していく。
吾郎の態度はあくまで演技。翼や月山達を戦いに巻き込まない為の演技である。
(確実に怖がられているな……転校確定か)
背中を向けているので、皆の顔は見えないが吾郎には確信があった。
今の姿を見て怯えなかったのは上級ヒーローだけである。理由は単純で、戦闘力に大きな差がないからだ。
しかし月山達は違う。月山と健也は一般人。翼達は丙級。秋月小夜に至っては、非力なアイドルだ。吾郎との力の差は歴然である。
「変身しても体格は変わってないだろうが」
強気な態度を崩さないハーレムライオンであったが、その額には冷や汗が浮かんでいた。
弱気を隠す為に再び殴りかかるハーレムライオンであったが、その拳は虚しく空を切った。
「悪いな。第二形態は飛べるんだよ……いくぞ」
翼をはためかせ、吾郎が飛ぶ。
次の瞬間。黄色い弾丸へと変わり、ハーレムライオンの周囲を飛び回る。
吾郎が飛び交う度に、ハーレムライオンのライオンの金色のたてがみが切断される。切断されたたてがみは、光を浴びながらキラキラと反射し床に積もっていく。
「雌ライオンになったな……バーディーアン、そのたてがみが女性を虜にしている力の源です。たてがみごと女の人達を浄化して下さい」
たてがみを切り落とされたハーレムライオンは茫然自失になっていた。その気になれば、コカトイエローは自分の首を容易く切り裂く事が出来た。
それをしなかったのは、虜にされた女性達を救う為。
「わ、分かった。二人とも行くよ…………愛と戦いの力を鷹に変えて」
翼が吾郎の要望に応える。魔法で吾郎達に、その表情は見えない。
(恐る恐る従っているんだろうな……休み明けから、どんな顔して会おう)
さっきまでの強気とは、真逆にネガティブモードになる吾郎
「智と癒しの力を梟に変えて……清浄と魔の力を白鳥に変えて」
智美と麗美も翼に続く。正確には続けざる得なかったのだ。
何しろ今の翼は満面の笑みなのである。そして智美達にしか聞こえない声でこう言ったのだ。僕達……ううん、僕と吾郎について来てと。
「「「バーディアンピュリィケーション」」」」
いつもより鷹成分多めで飛んでいくバーディーアンの浄化技。ハーレムから解放された女性陣は、なぜか胸焼け気味になっていたという。
「檻を壊す前に動きを止めておかないとな……」
そういうと吾郎は地面すれすれを飛んだ。直後に倒れこむハーレムライオン。
そんなハーレムライオンに無表情で近づく吾郎。
「あ、足が動かねえ……足の腱を切られた?マ、マッドフォックス、回復薬を持って来い」
ハーレムライオンが悲痛な叫び声をあげるもマッドフォックスは動けずにいた。
どこに移動しても吾郎の尻尾が、ロックオンしてくるのだ。
そして、これが戦隊から単独ヒーローとなった吾郎が生き残ってこれた大きな理由でもある。
蛇のピット器官を利用する事で、死角をなくしたのだ。
「さてと、時間は早い方がイベントにも支障が起きないな」
吾郎はハーレムライオンに近づくと、そのまま首を切り落とす。ごとりと大きな音を立てて転げる落ちるハーレムライオンの首。同時に部屋中に血生臭い匂いが広まる。
再度女性陣の悲鳴が部屋に響く。
(転校確定だな)
吾郎がチラ見すると月山達が震えているのが見えた。吾郎の中に言いようのない寂しさが募る。鷹空翼は叶う見込みのない片思いしている女の子。しかし、月山と健也は紛う事なき親友であった。それを失った悲しみは大きかったのだ。
「もう少しで、救助が来るので安心して下さい」
感情を押し殺して、ビジネスモードで話し掛ける吾郎。
次の瞬間、部屋に爆笑が鳴り響いた。
「おま、なんだよ。その恰好?二本足で歩く黄色い鶏って面白過ぎるだろ」
健也が吾郎の肩を叩きながら爆笑する。その目には涙が光っていた……笑い涙が。
「腹押したら、ガーって鳴くんじゃないか?黄色い鶏のおもちゃみたいに」
月山が吾郎の腹を押しながら笑う。その笑顔は優しいものであった。
「鶏じゃねえ。コカトリスだ」
吾郎が必死に訂正する。連動して尻尾の蛇も月山達を睨みつける。
「や、やべー。尻尾が連動していやがる。どんな仕組みだよ」
月山が蛇を指さして笑う。
「第三形態はシンプルな形になるのか?ツルツルの黄色いてるてる坊主みたく……ちきん君ラーメンのCM出れるぞ。ひよこのまま鶏になりましたって」
指をさして笑う健也。それはいつも教室でに見かける平和な光景。
「第三形態は、コカトリスそのものになるんだよ。救助に大活躍なんだぞ」
別名空飛ぶ黄色いレスキュー車。海難事故や山での遭難の時に大活躍している。
黄色いコカトリスを想像して再び爆笑する二人。
さっきまでの凄惨光景を忘れさせる平和な光景であった。
しかし、その平和な光景を許さない者がいた。
翼である。
貴方達話が長過ぎと言わんばかりに月山達を押しのける翼。そう、もう我慢の限界なのであった。
途中までは見守る女でいた翼であったが、とうとうしびれを切らしたのだ。
変身を解き、吾郎の前を陣取る翼。
「吾郎がコカトイエローだったんだ。今までたくさん助けてもらってていたんだね。ありがとう」
そう言って吾郎の手を握る翼なら上目遣いをする翼。そのあざとさに吾郎はノックアウト寸前であった。
『小夜、吾郎の尻尾見てみろ』
翼に押しのけられた月山であったが、怒ってはいなかった。むしろ面白い物を見つけて喜んでいるのだ。
『蛇がデレデレになってくねくね動いてる?あれは分かりやすいね』
さっきまで怯えていた小夜も、吾郎のデレ具合に苦笑いを浮かべていた。
小夜の言う通り、吾郎の尻尾は喜びを隠しきれず、くねくねと動ているのだ。
『目は口程に物を言うじゃなく、尻尾は口以上に物を言うか……大丈夫か、ヒーロー……うん?』
月山が何かに気付く。それは出口に向かうマッドフォックス。
「ここは亜空間から出られる唯一のドア。ここの鍵穴を壊せば、お前らも終わりだ」
にやりと笑うマッドフォックス。仲間の仇を討てたと確信しての笑みであった。
「そこ危ないぞ。上級ヒーローがハザーズのアジトに入ったら、他の上級ヒーローに連絡が届くんだよ……来るぞ」
ドアが開く同時に上級ヒーローが雪崩込む。踏み潰されるマッドフォックス。
「コカトイエロ―、無事?……おやー、ブルーパラディン写メ撮って」
吾郎と手をつないでいる翼を見つけた雪香は、新しい弄りネタを見つけてほくそ笑んでいた。
感雄、評価お待ちしています。




