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俺、ヒーローなんだけど   作者: くま太郎


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チキンヒーロー

 鷹空さんからもらった箱を見て疑問に思う。これ、クリスマスプレゼントで良いんだよね?

 嬉しいけど、意図が読めない。きちんと栄養を摂れって事は分かる。何より、全部合わせると結構な値段になる筈。

 でも……内容を見ると完全に義理な訳で。勘違いするのはアウトなのは確かだ。

 ……これにブランド物の手袋って、重すぎないか?後日、返却されてもおかしくない。

料理本の名前は今日から始める家庭料理、体に優しいレシピ、お野菜大好き、レッツ!パパクッキングの四冊。少し読んでみたけど、ヘルシーな料理が中心だった。

(誰かに料理を教えてもらう。お兄ちゃん……駄目だ。絶対に怒られる)

 中学生の時、お兄ちゃんに好きな子がいると言ったら『男の勘違いは恥。特にお前はヒーローなんだから、相手の女の子は嫌でもうんと言う可能性がある。だから、相手の気持ちは慎重に見極めろ』そう教えられた。

 そんな事言われたら話し掛ける勇気もなくなり、相手に彼氏が出来たんだよな。

 当時はピンとこなかったけど、今なら分かる。

 俺達ヒーローは頼られる存在なのと同時に、恐怖の対象でもある。

 正体がばれていないとはいえ、第三者目線を持たないと駄目だ。

(料理教室に通うか……その前にヒーローサイトをチェックしないと)

 ……まずいな。サイトを見たら、不自然な程に事件が起きていなかった。


 本部に着くと、疲れ切ったヒーローがいた。いわゆる待機疲れってやつだ。援護も疲れるけど、ただ待っているのはきつい。何しろ常時臨戦態勢なので、神経が参ってしまう。


「昨日は外れ援護の連発だったらしい」

 疲れ果てた同僚を同情の目で見ていると、大山パワーナックルさんが声をかけてきた。

 なんでも現場に着くと既にハザーズは逃げた後ってパターンが多かったそうだ。


「どこからか指示が出ている感じですね、それに、こっちを疲弊させようとしていませんか?」

指示はあくまで予測だ。でも、実際こっちは疲弊していまっている訳で。


「そこは調査待ちだ。お前らは帰って休め」

 大山さんの指示で、夜勤のヒーローが帰路に着く。今日はクリスマスだけど、爆睡して終わると思う。


「昨日のデータを見たんですけど、逃げるのが物理的に不可能なケースがあります。人目がある中、ハザーズが姿を消しているのもありました」

 転移をするか、透明にならなきゃ無理だ……もしくは。


「木を隠すなら森の中……人化が広まっている危険性があるな」

 疑いで一般人を攻撃する事は不可能だ。もし違っていたら殺人になるんだし。


「その場にいる全員を拘束……何回も繰り返していたら、不満が募りますね」

 ハザーズの動きが明らかに今までと変わってきている。


「人化したらハザーズでもスマホを持てる。つまり、ハザーズもヒーローサイトを見れるんだ。こっちの動きを推測されている可能性がある」

 上級ヒーローのローテーションを把握されたら、かなりまずい。ヒーローにも相性があるし、消耗戦を仕掛けられた自滅しかねない。


「乙下級、丙級のパワーアップが必要ですね……話は変わるんですけど、大山さん料理されるんですよね?」

 奥さんがインスタに『今日のパパ兼ダーリン料理も美味しそう』とあげて惚気まくっている。ファンからも“美味しそう。何年経っても、ラブラブなんですね”と好評らしい。


「うちのは撮影に入ると、拘束時間が長いからな。結婚前から料理はしていたし」

 大山さんの奥さんは人気俳優だ。ドラマにも多数出演している。それを陰で支えているのが大山さんなのだ。

 なにより凄いと思ったのは、将来を見越して料理を覚えたって事。夫婦仲が良いのも納得出来る。


「俺、料理を覚えたいんですけど、何から始めれば良いですか?」

 大山さんには前にも相談していたから、きちんと説明した。義理に手袋は重すぎないか心配って事も含めて。

いじられるかと思ったら、大山さんは真剣な顔で聞いてくれていた。


「プレゼントの写メとかあるか?……これ、悠に見せても大丈夫か?俺より女の意見の方が納得できるだろ」

 大山さんの奥さんは美人人気俳優の春木悠。モブ高校生おれの恋愛相談に関わる時間なんてないと思う。


「そんな悪いですよ。奥様お忙しいでしょうし」

 大山さんは自分の奥さんだから気軽に話し掛けられるけど、俺からしたら芸能人な訳で……テレビの中の人なのだ。


「大丈夫だよ。前に相談された時もあいつに話したら“あの吾郎君が恋?初々しくて癒される。力、続報よろしく”って喜んでいたぞ……俺だ。少し良いか?うちの鶏君が悩んでいてさ……写メ送るからアドバイスもらえるか……ありがとう。料理作って待っているぞ。うん、俺も愛している。仕事頑張れよ」

 デレデレだ。あの厳ついパワーナックルがでれまくっている。

 ……大山さんは、奥さんに引け目や負い目を感じないんだろうか?


「やっぱり重いんですか?」

 正直怖くてラインを見れていない。ごめんの三文字があったら、絶対に泣く。


「そこは大丈夫だ。悠も太鼓判を押していた……それより料理を頑張ってみろ。動画サイトを見てゆっくりやれば大丈夫だ。メインは総菜でもいい。付け合わせや副菜、汁物を作ってみろ。パパご飯には常備菜も載っているぞ」

 確かに副菜や汁物なら作れるかもしれない……待てよ。


「大山さんもパパご飯持っているんですか?」

 そうでなきゃ内容知っている訳がない。あの本って、そんなに売れているんだ。


「あれ俺が書いたんだよ。悠のマネージャーに頼まれてな。覆面料理研究家拳パパ名義だ」

 最初は春木悠の旦那ってのが宣伝だったけど、売れ行きが良くて拳パパ名義で出したそうだ。

 世間って狭い。

それから待機する事、一時間。援護要請が入った。


「都内にハザーズが出ました。コカトイエローさん、お願いします。相手はポーチャーです」

 バーディーアンも向かってるが、複数いるらしく援護が入ったのだ。


 同刻、喫茶止まり木。


「翼、手袋つけて。あれをつけて変身したら、物凄いパワーアップしてたよね」

 智美が翼に手袋をつける様に促す。しかし、当の翼は手袋を大事に鞄にしまった。


「絶対に嫌。手袋が汚れるもん。これは吾郎からの大事なクリスマスプレゼントなんだから……真理さん、これ、絶対に本命ですよね」

 惚気ながら断固拒否する翼。違う意味ですれ違う二人の恋だった。


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― 新着の感想 ―
ヒロインの方がちょっとPONだな今回は…ちゃんと伝われば軽い恋ではなく深い愛だと分かるんだろうけど。
そろそろこの二人のすれ違いに決着つけてもよいのでは?と思わなくもないですよね。 それはそうと、翼達は学校側でヒーローやってるの認知されてるのか、それとも知らされてないのか、設定を知りたいです。
レッツ!パパクッキング笑笑
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