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俺、ヒーローなんだけど   作者: くま太郎


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ポンズ・ターキー出動

 クリスマス、ここ数年……正確にはヒーローになってから縁が無くなった。

 だから同い年の女の子にクリスマスプレゼントを贈った事なんてない訳で。

(性別関係なく喜ばれる物……商品券は流石にアウトか)

 無難にクッキー……いや、出張のお土産じゃないんだから。

 花束……置いておく所がない。何より絶対に美影さんに見つかったらサンサンクネットワークの格好の餌食になってしまう。何より持って帰るのは大変だと思う。

 相談できる相手……サンサンクの三人が一番頼りになる。からかわれるだろうけど、親身になってアドバイスをしてくれる筈。

 でも、俺の勘違い……ただのお友達プレゼントだった場合はいたたまれない空気になる訳で。


「月山、頼みがある。本気で助けて」

 月山には仲の良い女の子がいる。それに俺と鷹空さんのスペック格差、親密度を第三者視点でリアルに判断してくれる筈。


「そんな必死の顔をしてどうした?俺はハザーズに詳しくないぞ」

 俺の悩みはヒーロー絡みしかないと思っているのか?確かに生活の七割はヒーローで占められているけど。


「違うっつうの。クリスマスプレゼントなにを贈れば良いか聞きたいんだよ。あまり本気な物を贈ってもひかれるだろ?」

 指輪やアクセサリーは絶対にひかれる。それ位俺でも分かる。アクセサリーは好みが分かれるらしいし。


「……ヒーローの時とキャラが違い過ぎだろ。戦っている時は、あんなに自信満々な癖に」

 だってハザーズは殴れば倒せるもん。下手に気合入った物を贈って気まずくなるのは嫌だ。


「頼むよー。お前だけが頼りなんだって!今度、お土産買ってくるからー、アドバイスをくれ。好感度プラスなんて贅沢は言わない。変な空気にならないプレゼントを教えて」

 思わず月山にすがりついてしまう。


「近いっての。分かったから、離れろ……そうだな。もう何日もないし、鷹空さんの好きなブランドで何か買えば良いんじゃないか?手袋やマフラーなら、これからの季節使えるだろ」

 鷹空さんの好きなブランドか。

(美影さんは滅多に店にいない。それに手袋ならカバンにいれておける。店員さんからアドバイスをもらえば失敗はないはず)


 ◇

 神様、俺何か悪い事をしましたか?

 ブルーキャッツに来たら、美影さんがいたんですが。

(クリスマス商戦で忙しいもんな。でも、逆に考えれば気付かれない可能性もある)

 美影さんが接客しているタイミングで入店。手袋を素早く購入。これなら気付かれない可能性は高い。


「いらっしゃいませ……店長、大酉君が来ましたよー」

 入店と同時に顔見知りの店員に見つかり、美影さんを呼ばれてしまいました。うん、俺の接客はいつも美影さんがしているもんね。


「ごろちゃん、いらっしゃい……もしかして、翼ちゃんへのクリスマスプレゼントかな?」

 ……え、なんでバレたの?俺、まだ何も言ってないよね?

(どうする?素直に言うべきか?まだ誤魔化せると思うんだけど……)

 そうだ!同い年の従妹へのプレゼントって言えば良いんだ。


「じ、じつは従妹に……」「お、鎌を掛けたらまさかの正解だったとは。ごろちゃん、耳まで真っ赤だぞ。素直に認めたら、お姉ちゃんがアドバイスをしてあげる」

 横目でショーウインドーに映る自分を確認。確かに真っ赤です。


「言いますから。大声で話すのは止めて下さい」

 だが既に時遅し。俺は中学生の時からブルーキャッツに通っている。当然、顔見知りの店員さんも多い訳で。


「大酉君、彼女出来たの?おめでとう」

「ほら、この間一緒に来ていた子じゃない?凄く初々しくて、癒された」

「皆止めよ。吾郎君、顔が真っ赤になっているよ……それで何を買うの?お姉さん達が一緒に選んであげる」

 そこから根掘り葉掘り聞かれて全部答えました。なんかお客さんもニヤニヤしているんですけど!


「……そう言う訳で、手袋とかマフラーみたいなお友達パターンでも変な空気にならないプレゼントが欲しくて」

 可能性としてお友達パターンの方が高いんですけどね。コカトリス知っている。俺みたいなモブが変に気張ると、痛い目に遭うんだ。


「十分だけでも会いたいだって。かわいいー」

「言ったでしょ。癒されるって。青春って感じだね」

「吾郎君、お姉さん達が応援してあげる」

 店員の皆にいじられまくりなんですが……そんな中美影さんが何やら企んでいる顔をしている。

 嫌な予感しかしない。


「ごろちゃん、ちょっとこっちにおいで……皆も持ち場に戻る。お客様を待たせないように」

 美影さん、俺も客として来ているんですが。

 促されるまま着いたのは面談室。当たり前だけど、俺は一回も入った事のない部屋だ……嫌な予感しかしないです。


「これが当日のごろちゃんのタイムスケジュール。基本はイベント会場でMSミズ・ターキーの弟ポンズ・ターキーの中に入って会場に来てくれたお客さんをおもてなししてね」

 美影さんの渡してきた書類にはタイムスケジュールがみっちり書かれていた。九時富山、十時大阪、十一時北海道……なに、この殺人的スケジュールは。

 何よりポンズ・ターキーってなに?


「イブはイベントの護衛をするんじゃないんですか?」

 県外の援護なくなったからラッキーって思っていたんですが。


「いくら私でも本部に来た援護要請をキャンセル出来ないって。当日、会場の簡易の転移装置が設置されるから、そこから援護に向かってね。一々本部に行かなくて済むからタイムロスが解消されるし。ハザーズを早く倒せれば、空き時間も出来るんだよ」

 逆に言えば倒すのに時間が掛かれば、時間に余裕がなくなると。

 援護に向かったとしても、直ぐにハザーズと遭遇出来る訳じゃない。もう尻に火が着いた気分なんですが。


「確かにイブとかは転移装置が混雑するから時間短縮になりますけど……それとポンズ・ターキーってなんですか?」

 クリスマス、七夕、バレンタイン……季節行事がある日はハザーズの襲撃が増える。そうなると援護要請も増えて転移渋滞が出来るのだ。


「私の故郷のゆるキャラだよ。この子がMS・ターキー。三人姉弟で、長女がMS・ターキー、長男がハクサイ・ターキー。そして末っ子のポンズ・ターキー。ごろちゃんも末っ子だし、鶏っぽい動き得意でしょ」

 確かにコカトリスだから鶏要素あるけど……鶏要素がある分、このゆるキャラ怖い。

 問題は美影さんが見せてくれたイラストにある。

(土鍋に入ったぽっちゃり体形の鶏ってなんだよ。こんなの煮えちゃっているじゃん)

 そう、MS・ターキーの下半身には土鍋が付いているのだ。鍋には豆腐やネギが入っている。

 でも、肝心の鶏肉は見当たらない……つまりメイン具材はMS・ターキー自身って事なのか?

 ちなみにMS・ターキーはお玉を刀みたくして背負っていた。ハクサイ・ターキーは白菜で、ポンズ・ターキーはポン酢……姉弟でカモネギ状態なんですか。


「つまり援護の空き時間には、着ぐるみを着て巡回しろと?」

 援護だけでもきついのに、ハード過ぎませんか?


「ごろちゃんが援護に行っている間は丁級の子が代理で入ってくれるから。ポンズ・ターキーの動画送っておくから、仕草や動きを覚えてね」

 いや、俺プレゼントを探したいんですけど!


「あの……俺、プレゼントを買わないと」

 大事な事に気づいた。このハードスケジュールの中、プレゼントを渡せる時間は確保出来るのか?


「そこはちゃんとアドバイスをしてあげるよ。そして私からのクリスマスプレゼント。翼ちゃんと二人っきりなれる時間を作ってあげる」

 まさに飴と鞭だ。美影さんの協力があれば、確実に時間を確保する事が出来る。しかも美影さんはプレゼントが戦いで汚れない様に本部で預かってくれるそうだ……コカトイエロー、平和とクリスマスの為に頑張ります。


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― 新着の感想 ―
普通にブラック企業では?
ちゃんと時間作れるように邪魔ものは手加減せずボコってしまうと吉。 手間取ると逢瀬の時間が減るので凶。 頑張れヒーローw
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