展開早くない?
遅れた理由毎年恒例のタケノコ取り&パソコンのチェックしてました
今、俺はある問題に頭を悩ませている。目の前にあるのは十個の冷凍ご飯。丁寧にラップで包まれており、猫やハムスターのイラストが描かれている。
(ハートマークは、本当にどうしようもなくなった時だ。美味さをとるか、心の回復に備えるべきか……それが問題だ)
俺を悩ませているのは、鷹空さんが炊いてくれた冷凍ご飯をいつ食べるか問題。
冷凍ご飯の保存期間は約一カ月。でも、美味しく食べられるのは一週間。
どうせなら美味しいうちに食べたいいんだけど、今日から俺の生活はハードモードに突入する。
今日から十二月だ。十二月はイベントが多くある為か、ハザーズの動きも活発になる。
去年のクリスマスイブなんて、援護要請が立て続けにきて、家に着いたのが夜中の一時だった。
今年のクリスマスも絶対にハードモードになる筈。
(今年のイブは冷凍ご飯とチキンにケーキで乗り切ってやる)
その為にも、この宝物は計画的に食べなくてはいけない。
……でも、今すぐ食べたいんだよね。
◇
誘惑に打ち勝って自分を褒めてあげたい。朝食は自分で炊いたご飯を食べました。
(雪は降らないけど、東京の冬も寒いな……今年は里帰り出来るかな)
クリスマスが終わったからといって、油断は出来ない。人が忙しくなると、ハザーズも活発になる。お陰で去年は実家に帰られませんでした。
当たり前だけど、見上げても見えるのはビルと鈍色の空だけ。雪がせわしなく降り注ぐ故郷の空は見えない。
……帰りたい。帰ってお母さんが作ってくれたご飯を食べたい。お父さんと話がしたい。遠く離れた家族の事を思うと、自然に目が潤んできた。
目を擦って、一人トボトボと通学路を歩く。
「吾郎、おはよっ!すっかり冬だね……どうしたの?目がうるうるしているよ」
俺の顔を覗き込んだ鷹空さんが心配げに尋ねてきた。誤魔化すべきなのか、それとも素直に弱音を漏らした方が良いんだろうか?
でも、泣いているのは、ばれたと思うし。
「冬を感じたら、ホームシックになったみたいなんだ。もう高校生なのに、情けないよね」
強引に笑顔に変えて、おどけてみせる。これが精一杯の強がりだ。
今ので笑ってくれたり、いじってくれたら助かります。
「そっか……寂しくなったら、いつでも僕に電話して。話相手になってあげるから」
そう言って優しく微笑んでくれる鷹空さん。涙の堤防が決壊寸前なんですが。
「吾郎と……鷹空か。最近良く一緒にいるな」
ナイスなタイミングで声を掛けてきたのは健也だった。普段なら邪魔をしてってむかつくんだけど、今は救世主に見える。
「さっき偶然会ったんだよ。健也、今日は朝練はないのか?」
まさかホームシックスイッチが入っている時に会うなんて思わなかったし。
「俺は早く練習したいんだけど、部活は放課後からスタートなんだよ。無事に赤点は回避出来たし、週末は城宮に勝って弾みをつけなきゃな」
……今、城宮って言わなかったか?冬休み前に巻き込まれかけているんですけど。
「城宮と練習試合をするのか?場所は月浪だよな」
城宮は事件が起きまくっている危険地帯だ。まさか、他校を招いての練習試合なんてする訳がない。
それでクレームつけらたら、たまったもんじゃないぞ
「城宮でやるぞ。女バスも行くし」
マジかい。
(応援に行った方が良いんだけど、身バレの危険性があるんだよな)
ユースファイブの五人は、俺の顔を知っている。しかも、ヒーローだと知っている訳で……応援していた生徒がいなくなって、コカトイエローが現れたら絶対に疑われる。
でも、仮面の男が現れたら、身バレ覚悟で変身しなきゃいけなくなる訳で……既にハードモード突入していない?
その前に誘われてもないのに、応援に行くってありなんだろうか?
「翼、邪魔してごめんね。健也、空気読めないから」
なぜか副浪さんが鷹空さんに謝っている。俺的には助かったんだけど、何か気まずい事でもあったんだろうか?
「わ、悪気があった訳じゃないし……折角のチャンスだったのに」
なぜか不満げな鷹空さん。俺との会話を邪魔されたのが嫌だった……流石に自惚れ過ぎか。
「そうだ!大酉君も応援に来ない?」
副浪さんが誘ってくれた。これで大手振って応援に……いや、城宮にいける。
「区内の高校が集まるから、賑やかになると思うぞ」
つまり、ハザーズが動く可能性も高いと。本部経由で変身場所作ってもらおう。
◇
悪い事が起きた時に『いつまでも降る雨はない。頑張っていれば、太陽が顔を出すさ』みたいな事を言う。
逆に言えば良い事があれば、悪い事が起きるって事になる。
教室に入るなり、月山が駆け寄ってきた。その顔は真剣そおのもので嫌な予感しかしない。
「吾郎、相談がある。ちょっと来てくれ」
一時間目の準備したいんだけどな。でも、月山の顔が真剣過ぎて、とても断れる空気じゃないです。
(まさか仮面の男がなにかしたとか?でも、そんな情報入っていないし)
俺より先に一般人の月山に情報が入る訳がない。そんな頻繁に事件が起きていたら、俺達が過労死してしまうぞ。
「相談って、なんだ。金なら貸しても良いぜ」
わざと恰好をつけてみて、突っ込みを待つ。俺は気さくなヒーローだ。多少の突っ込みはきちんと受けて止めやる。
「昨日、キャッスルナイツの三人が襲われたらしい。吾郎、頼む。事件を解決してくれ」
月山は俺の肩をがっしりと掴みながら、懇願してきた。
おい、ドッキリだろとか言ってお茶を濁そうとしたけど、月山の真剣な目が全否定してきた。
「本部にも、そんな情報入っていないぞ。詳しく話を聞かせろ」
慌てるな、コカトイエロー。まだ、仮面の男が襲ったとは決まっていない。
推理小説とかだと怪物が襲った風に装う事件がある。多分、そのパターンだと思う。
いや、そうであって下さい。
「昨日、キャッスルナイツに所属している生徒三人が校内で、襲われたらしいんだ。そいつ等は仮面を被ったハザーズに襲われたって言っているらしい。すまん、又聞きの又聞きだから、これ位しか分からないんだ」
校内で起きたから、本部に連絡しなかったのか。
城宮のセキュリティは厳重なので、有名だ。ましてや最近は襲撃事件が起きているから、関係者以外が校内に入るのは厳しい。
本部に報告すれば、仮面の男は城宮の関係者ですって認めた事になる。
「とうとう校内でも事件が起きたか。これは面倒な事になったな」
最悪なパターン過ぎて、胃が痛いです。
鷹空さんの手料理を食べられるなんて良い事があったから、反動で最悪な展開になったんじゃないだろうな。
「面倒って、なんだよ。まさかキャッスルナイツ以外の生徒が襲われるって言うんじゃないだろうな?」
月山の目が絶望に染まっている。それだけ、城宮に通っている知り合い?が大事なんだろう。
「当たらずとも遠からずってとこだ。校内で事件が起きたって事は、犯人は城宮の関係者って事になる。もし、違っても皆が疑心暗鬼になって、人間関係が悪化するだろ?そこを他のハザーズに狙われる危険性がある」
まあ、たらればの話なんだけど、空気が悪くなるのは確定だ。
「な、なんとかならないのか?お前、甲級ヒーローなんだろ?助けてくれよ」
月山は涙目になっていた。大事な知り合いがハザーズに襲われるかもしれないってなったら、焦りもするだろう。
「ヒーローだから、困る事もあるんだよ。仮面の男はハザーズじゃなく人間だ。そうなると仮面を渡しているハザーズは城宮に潜伏している可能性が高い。可能性として高いのは生徒か教師。お前『君が仲良くしている友達は実はハザーズだったんだ。だから、倒したよ』って言われてヒーローに感謝出来るか?」
そんなに仲が良くない人でも、心が病んでしまうだろう。それが仲の良い友人や恋人だったら、俺らが恨まれてしまう。
(流石は危険度B―。万事解決のビジョンが見えないぞ)
本来ならユースファイブが主になって動いてもらうんだけど、丁級には荷が重過ぎる。
「それじゃ、どうすりゃ良いんだよ。あいつ、学校に通う事を禁止されて困っているのに……」
まあ、まともな両親ならしばらく学校休めって言うよね。
「だったら、今度の土曜日、バスケ部の練習試合に付き合え。もし、俺が姿をくらましたら、なんとか誤魔化してくれないか?」
今から仮面の男に言っておく。もし、鷹空さんが試合に出ている時に、出没したら仮面をかち割るからな。
恋愛とヒーローどっちに比重を置くべきか




