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俺、ヒーローなんだけど   作者: くま太郎


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天国からの胃痛

 鷹空さんと一緒に精肉コーナーへと向かう。正直に言います。精肉コーナーに来るのはかなり久し振りです。

(凄い種類……良く皆使い分けているよな)

 流石に牛・豚・鶏の違いが分かる。でも部位や加工の仕方で呼び名が変わるらしい。なんで三枚肉って、三枚に切っていないのに、あんな名前なんだろう?


「吾郎は、お肉料理なら何が好き?」

 肉料理か。話の流れからすると、明日作ってくれるメニューに関係していると思う。

 前にサンサンクのお姉様方が言っていた。『男は気楽に手料理って騒ぐけど、手軽に作れる料理なんかあるか。気軽にリクエストするな』って……あの時はガチで怖かった。

つまり、作る手間が出来るだけ少ない料理が正解だと思う。

 でも、違っていたら恥ずかしいので、少し話をはぐらかしておこう。


「好きって言うか、しゃぶしゃぶ風ゆで豚はたまに作るよ」

 作り方は簡単。薄切りの豚肉を茹でて、ポン酢をつけるだけ。白菜を入れれば、ジェネリックしゃぶしゃぶだ。


「それ料理って言わないよ。明日はパスタにするけど、今度生姜焼き作ってあげるね」

 そう言って鷹空さんはベーコンを購入。とんかつが好きだけど、揚げ物リクエストは流石に厚かましいと思う。


「それじゃパスタも買わないとね」

 うちには米どころかパスタもない。正直に言うとパスタは一回も買った事がないです。俺が作るより、インスタントのパスタの方が何万倍も美味しい。


「オリーブオイルはある……訳ないか。その前に、吾郎の家には調味料何があるの?」

 鷹空さん、大正解。何ならサラダ油も切れています。今、家にある調味料か。


「塩、醤油、胡椒、バター、マヨネーズかな」

 この五つは切らさない様にしている。ちなみに醤油は卵かけご飯に、胡椒はラーメンに使っています。


「……絶対に調味料として使ってないよね。ちなみにバターは何に使っているの?」

鷹空さんの顔が少し怖くなったのは気の所為でしょうか?それと茹で卵に塩をかけるのは、調味料扱いにならないでしょうか?


「トーストとバター醤油ご飯だよ」

 まあ、今は肝心のお米がないんだけどね……最近はパックご飯のお世話になっています。炊飯器使ったのはいつだろう?


「……おばさんが心配する理由分かったよ。野菜をもらっても、健也や月山君の家にあげているんでしょ」

 なんで分かった?もしかして鷹空さんも川本さんと同じく超能力者とか?


「トマトなら、そのまま食べられるけど、大根とかピーマンって使い方分からないし……なんで分かったの?」

 大根はサラダに出来るらしいけど、一人で食べられる量には限界があります。


「智美から聞いたの。『健也から大酉君のお裾分けもらうけど、野菜が良く入っている』って。それに、この間持って来てくれらお裾分けに野菜が沢山入っていたし」

 反論出来ない位見事な推理です。何より事実だし。


「健也の奴、人の親切を横流していたのかよ」

 自分の家で使えば良いじゃん。幼馴染みのイチャイチャアイテムに使うなんて、ずるくないか?

 ヒーローだってイチャイチャしたいんだぞ。


「智美と健也は家がお隣で、家族ぐるみで仲が良いから。智美はよく健也にご飯を作っているんだよ」

 幼馴染みにご飯を作ってもらえるだと?そんなの漫画の世界だけの話だと思っていた。

(帰ったら、月山に愚痴ってやる)

 あいつなら、俺の気持ちを分かってくれる筈。

 その後パスタやオリーブオイル、モッツァレラチーズを購入。残りは明日見て決めるとの事。


「送っていかなくて大丈夫?この間も城宮の生徒が襲われたって話を聞いたけど」

 注意喚起の為に、件の事件は公表されていた。その上で夜中に歩くのなら、自己責任になる。

 警察やヒーローがパトロールしているから、大丈夫だと思うけど心配だ。


「心配してくれてありがとう。でも、自転車だし明るい道を通って行くから平気だよ。襲われたのは、人気のない路地だって言うし、もっと遅い時間だって話を聞いたよ」

 確かにそうだけど、そこまで詳しい情報を出していたっけ?


 一旦、家に帰り食材を冷蔵庫に仕舞う。

(先に米を買っておくか)

 歩きで米を運ぶのは面倒だ。なにより米袋抱えていたら、雰囲気ぶち壊しだ。パトロールも兼ねて、自転車で買いに行く事に。


「米、味噌……後、めんつゆも買っておくか」

 一人暮らしに必要だと言われた物を買い揃えていく。麺つゆは万能調味料だって言うけど、お湯で割ってお吸い物代わりにしか使えませんでした。

今日はパトロールなので、わざと裏道を通っていく。そして分かった事。繁華街で米を積んで走ると目立つんですね。

(一、二時間ぐるぐる回れば良いか)

 被害があった場所を中心にパトロールをすれば義理が立つ筈。ヒーローがパトロールをしていてハザーズに遭遇する機会は稀。漫画やアニメみたく偶然事件に遭遇なんて滅多にないのだ。

 流石は俺……ハザーズには遭わなくても、そっちには会うのか。


「おい、こいつ自転車に米乗せてるぞ。恰好わる」

 動き辛そうなダボダボなパンツを履いたチャラ男が俺に絡んできた。まあ、見た目は気弱そうなモブだもんね。

 自転車の前に立ちはだかっているけど轢いても文句言わないよね。


「よせって泣ちまうぞ。坊主、早くママの所に帰りな」

 革ジャンを着て俺って渋いだろアピールしている男がニヤニヤしながら、会話に参加してきた。

今から青森に戻れと?

 良いけどハザーズが出ても帰るぞ。


「とりあえず検問だ。金を置いていきな」

 黒いスエットを着た男が睨んできた。ヒーローなのにカツアゲされているんですが。

 全員着ている服はブランド物。確実に財布に余裕がある筈。それなのに、カツアゲをしてきた。多分、遊び半分だと思う。

(俺とおない年位か。警戒中だってのに、面倒事増やすなよ)

 心の中で盛大に溜息を漏らす。パトロール中の出来事だから、報告書に追記しなきゃ駄目なんだよな。


「金が欲しいならバイトして下さい。今、警戒中で警察もパトロールしているんですよ」

 どれだけ悪態をつかれようが、見捨てたらヒーロー達が叩かれるんだぞ。俺達はヒーローであって、正義の味方でも聖人君子でもない。

 俺はカツアゲしてきた相手を助ける優しさなんて持っていません。


「知っているよ。俺達はダチの敵討ちに来たんだからな」

 革ジャンの少年が不敵に笑う。マジで迷惑だからやめて。今起きているのは喧嘩じゃなくて、事件なんだぞ。


「って事は城宮の生徒さんですか。襲われる前に帰った方が良いですよ」

 学校から注意喚起がされている筈なんだけど。まあ、それを聞く様なタイプじゃないか。


「話を聞いていなかったのか?翔はお前みたいなモブをカツアゲしていたら、襲われたんだ。だからお前を餌にして仇をおび寄せるのさ」

 そんな上手くいくなら、俺達も苦労しないっての。ハザーズの中には警戒心が強い奴がいる。いや、強いハザーズ程、狡知で警戒心も強い。


「俺達、キャッスルナイツに喧嘩を売った事を後悔させてやらないとな……悪いけど痛い目に遭ってもらうぞ」

 革ジャンの少年が拳をポキポキと鳴らす。既に違う意味で痛い目に遭ったんですが。

(城宮だからキャッスル騎士ナイツなのか。俺の鶏冠みたく後から後悔すると思うぞ)

 そして人は、それを黒歴史と呼ぶ。城宮の生徒って事は、上級国民だ。あの世界は足の引っ張り合いだから、犯罪歴は確実にウィークポイントになるのに。


「警察が来たらどうすんですか?補導されたら、友達の敵討ち出来ないですよ」

 早く家に帰りたいから、通報しちゃおうかな。ボタン一つで警察とヒーローが駆けつてくるんだし。


「僕のパパは警察庁のお偉さんなんだ。簡単にもみ消してくれるよ」

 ダボダボパンツの少年が勝ち誇った様に告げる。

偶然ですね。俺も警察庁所属なんだ。偉い人も一杯知っているぞ。


「そんな漫画みたいな話ある訳……さがってろ」

 微量だけど魔力の反応があった。ハザーズとは違う。でも嫌な魔力なのは確かだ。


「そんな手に引っかかるか……な、なんだ。あれは?」

 闇の中から現れた奴を見て、革ジャン君の顔が青ざめる。

 身長は190cm位で筋肉質。身体を黒いボディースーツで覆っており、ゆっくりとこっちに近づいてくる。

 力は強そうだ……ただ動きはぎこちない。


「仮面を被った化け物。お前が翔の仇だな」

 スエット君が、そいつを睨みつける。

(幾何学模様が書かれた仮面……呪具だな)

 かなり不気味な存在だけど、一番の問題は中身はただの人間だって事。上手く仮面を壊さないと、中の人にも被害が及んでしまう。

 つまり俺が過剰防衛か傷害罪に問われる危険があるのだ。


「力の根源が分からないから、祓うのは無理だな……大酉です。例の奴と遭遇しました。応援をお願いします……ここは俺が何とかするから早く帰れ」

 鷹空さんと買い物デート?出来て最高の一日になる筈だったのに……こんなオチになるなんて。


「なんでお前の命令を聞かなきゃいけないんだ。翔の仇!」

 革ジャン君が俺を押しのけて飛び出していく……ヤンキー漫画の見過ぎだっての。


「あれはお前達の喧嘩相手と違うんだよ……危ねっ」

 仮面の男が殴り掛かって来たので、革ジャン君を無理矢理押さえつけて拳を交わす。少しだけ背中を擦りました。

(やっぱり動きがおかしい。素人以下……身体を上手く動かせていない感じだ)

 予測はついたけど、かなり面倒な事になりそうだ。


「警察だ。動くなっ」

 よし、応援の警官が来た。これでキャッスルナイツを保護してもらえる。


「さ、サツだ。逃げろっ」

 そう言って警察と反対の方向に走り出すキャッスルナイツの皆さん。

 ダボダボ君、お願いだからお巡りさんの所に行って。パパに助けてもらって。

 案の定、仮面の男はキャッスルナイツをロックオン。


「俺を目の前にして随分余裕だな……仮面の欠片でも置いてけや」

 注意を俺に向ける為、仮面目掛けて蹴りを放つ。キャッスルナイツが逃げてくれれば、変身が出来る。十秒……いや、二十秒、仮面の男をここに留まらせるんだ。


「吾郎、避けろ……ライトニングスラッシュ」

 背後からとんでもない魔力を感じたので、強引に身体を捻って避ける。

(守さん、仮面の男の拳より、ダメージが大きいんですが!)

 絶対に服が焦げていると思う。


「あぶね……消えたか」

 守さんの登場に恐怖を感じたのか、仮面の男は闇に溶ける様に消えていた。


感想、評価でやる気が増します 

ジェネリックしゃぶしゃぶは作者が一人暮らししていた時にがちで作っていました。

その後グループホームで料理を覚える。

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― 新着の感想 ―
あああ、守さん!笑 更新ありがとうございます 今回も最高でした!
常に切らさない調味料が五種ありますが四つと言ってます
吾郎や君はスマホと言うレシピ検索出来る文明機器を持ってるだろ(笑) あと親御さんもレシピ送ってあげ…無くて良いですね。 料理を作りに来て貰う口実が減っちゃう(笑)(笑)
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