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俺、ヒーローなんだけど   作者: くま太郎


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昼ご飯は大事

バグズファイブは一生懸命戦っている。正直に言うと、まだ及第点に及んでいない。

 でも……。


「どうした?あいつ等の戦い方に不満があるのか?でも、手出しは禁止だぞ」

 空子さんがたしなめる様に尋ねてきた。改善点は山ほどある。でも、不満はない。


「なんか俺よりよっぽどヒーローしているなって思って……俺が格上と戦っていたら、あんなに懸命に戦えるかなって思ったんですよ」

 今のところバグズファイブとスコップスギナはイーブン。そう、五対一でやっとイーブンなのだ。

 単純計算で五倍強い相手ハザーズに臆する事なく戦っているのだ。


「いや、お前は基本一人だろ?比べ様がないんじゃないか?何より、お前より強いハザーズなんて出たら大問題だぞ」

 確かにそうだけど……でも、根がチキンな俺からすると、格上の相手に立ち向かっているだけで、凄いと思う。

 それに……。


「後、昔を思い出していたんですよ。俺も昔はああして仲間と戦っていたなって……背中を預けられる相手がいるの羨ましいなって思って」

 俺のスタートは戦隊だ。そこから一人になって……自分でもよく頑張ってこれたと思う。


「お前やピースガーディアンは一対一が主だもんな」

 川本さんと組む事はあるけど、それはあくまで共闘。どっちかの仕事の補助が主になる。


「背中を預けられるって、羨ましいですね」

 嬉しさは五倍、悲しさや辛さは五分の一。そして書類も五分の一。

 色んな意味で羨ましい。


「ないものねだりをしても仕方ないだろ?……随分と苦戦しているけど大丈夫なのか?」

 空子さんの言う通り、バグズファイブは苦戦している。

 でもバグズファイブが弱いんじゃない。情報通り、スコップスギナは今までのブリーディングウィードより強いんだと思う。


「スギナの特性で生命力が高いって感じですね。それとスギナを寄り合わせて出来ているので。一本にダメージを与えても効果は薄い。何よりスコップって地味に強力な武器なんですよ」

 スコップは使い方によっては充分凶器になるのだ。

 殴って良し、斬りつける事も出来る。


「関節ガン無視の動きをしているしな」

 空子さんの言う通り、草人形がベースになっているから、スコップスギナの動きは予測不能。


「それとバグズファイブの武器はレイピア・ワンド・ソーサー・ナックル・ショルダーガード。強力な斬撃を放てる物がありませんので」

 レッドのフライレイピアが辛うじて斬撃を放てるけど、威力が足りないらしく、表面に傷をつけるのがやっとだ。なんとか傷をつけても違うスギナが直ぐに覆ってしまう。


「それでもイエローが上手く守っているし、ホワイトに攪乱されてスコップスギナも攻めあぐねている。人数が多い分、バグズファイブの方が有利か」

 これが格闘技の試合なら、観客は飽きていると思う。でも、ヒーロー本部の編集は上手で、見応えある戦いに変えてくれるのだ。

 逆に俺の場合は、数分で方をつける事が多いので、そのまま流してもダイジェスト版みたくなってしまう。


「このままじゃ、けりがつかない。あれを使うぞ」

 レッドさん、リーダーなら指示は具体的にお願いします。ここには警察の人もいる。仲間内でしか使えない言葉だと、第三者の動きに影響が出ます。


「でも、残っている力はギリギリよ」

 ホワイトさんもアウト。スコップスギナも聞いているんだぞ。俺がスコップスギナなら距離を取って時間稼ぎをする。


「それでもやるしかないだろ!バグズキャノンを使おう」

 いや、ブラックさん?公共の場、しかも、周囲に人がいるのにキャノン系はまずいのでは?


「やりましょう、私達の残っている力を集結させるわよ」

 ブルーさん、俺が言った事忘れてませんか?それに外したり、倒せなかった時の事考えています?


「「「「五つの力を一つに……必殺バグズキャノン」」」」

 イエローさんの意見は!?

 バグズファイブの武器が組み合わさり、大砲に変化。そこから放たれるのは、それぞれの虫の形をしたオーラ弾。

 オーラ弾は当たると、スコップスギナの身体を食べ始める……見た目がかなりグロいんですが。


 バグズファイブは、スコップスギナに勝つ事が出来た。でも、すでに全員虫の息。ぐったりとしていて、俺達の問い掛けにも反応が薄い。

(バグズだけに虫の息ってか)

 やり切った感をだしながら、満足そうな顔で休んでいる。この分では、今日はもう戦えないと思う。


「コカトイエロー、どうするんですか?」

 合流した獺川レッドクレリックさんが溜息を漏らしながら、問い掛けて来る。残りのブリーディングウィードをどうするかって事だろう。


「特訓を頑張っていたみたいだし、残りは俺が対応しますよ。警察の方は、バグズファイブを担架で運んでもらえますか?場所は待機所でお願いします。今倒したばかりなので、残りのブリーディングウィードが直ぐに動く事はないと思いますが、安全の為にレッドクレリックさんは監視をお願いします」

 探せば見つける事が出来ると思うけど、これも新人教育の一環だ。


「分かりました。コカトイエローは今の内に昼を食べてきて下さい。食事が終わったら、連絡をお願いします」

 長時間の依頼で食事摂取が義務付けられている。腹が減ってハザーズに負けましたなんて笑えないのだ。


「何かあったら連絡して下さい。空子さん、お勧めの麺類を聞いておいてくれましたか?」

 県外での仕事では地元の名物を食べるのが秘かな楽しみだ。でも、一つ大きな問題がある。

 ヒーローのままだと飯が食えない。しかし大酉吾郎に戻ると、俺はただのモブ高校生。

 誰も情報を教えてくれないのだ。


「聞いておいたぞ。この近くだと、武蔵野うどんの店と豆腐ラーメンを出す店があるみたいだぜ」

 うどんとラーメンか。どっちも捨てがたい。スマホで調べてみたけど、どっちも美味しいそうだ。

(武蔵野うどんはつけめんタイプか。そうなると……)


「スープが飲みたいので、豆腐ラーメンの店でお願いします」

 武蔵野うどんはハザーズを倒してから行こう。ヒーローブログに書けば、俺の埼玉での人気も上がる筈。


「分かったよ。後部座席はスモークが貼ってあるから、丁度良い所で元に戻れ」

 空子さんの車で豆腐ラーメンの店に到着。

 埼玉の皆様、ごめんなさい。麺が豆腐で出来たヘルシーなラーメンだと思っていました。


「醤油ラーメンの上に豆腐とひき肉が入った餡が乗っている。見ただけで、美味いって分かりますよ……うん、美味いっ!」

 ハザーズ対策の為の食事だったけど、箸が止まらない。写真を撮るのも忘れて見事に完食。スープも一滴も残さす飲み干した。


「そうやって飯を食ってる姿はただの高校生なんだけどな……それで、午後からはどうするんだ?」

 感じた魔力から考えると、あの公園はまだ二体のブリーディングウィードが潜んでいる。取り逃がしたら、どんな被害が出るか分からない。

 まあ、満腹になったコカトリス様の敵ではないけどね。


「バグズファイブはしばらく戦えないので、見学をしてもらいます。まあ、獺川さんのお陰で隠れている場所は絞れましたので、今日中に片をつけようと思います」

 明日はテスト明けの日曜日。ゆっくり休みたいのです。

(書類はバグズファイブに任せよう)

 今回のメインはあくまでバグズファイブ。俺はただのアドバイザー。書類仕事も、余計な手出しは控えるべきだ。


「あまり、やり過ぎて後輩のやる気をそぐなよ……すまん、電話だ……分かった。伝えておく。吾郎、獺川の嬢ちゃんから連絡だ。そのまま戻ってきて、車内で待機していろだとよ」

 なんでしょう。ちょっと嫌な予感がしてきたんですが。


 ブリーディングウィードは、俺の敵じゃない。でも、違う敵がいたのです。


「……あの獺川さん、なんで注射器をお持ちなんですか?」

 いや、お医者さんだから注射器を持っていてもおかしくないんだけど……でも、今はヒーローだし。


「良いから採血をするぞ……はい、終わったので変身してよし。バグズファイブも一息ついたみたいだから、ブリーディングウィードを探しに行って来なさい」

 なんでって聞こうとしたけど、獺川さんはもう医者モードになっている。今、話し掛けたら、確実に怒られる。


「行って来ます。噴水の裏からチェックしますね」

 早めに倒して武蔵野うどんを食べに行くんだ。空いた時間で、各地の美味しい名物をチェックしよう。


「コ、コカトイエローさん……お、俺達も同行させて下さぃ…」

 レッドフライさん、意気込みは買うけど、生まれたての羊並みに足がプルプルしているんですが。


「れ、レッド……クレリックさんがら……聞きまじた。まだハザーズ……がいるんですよね」

 ブラックスティングさん、疲れ過ぎて噛みまくっていますよ。

(バグズキャノンって、そんなに体力使うの?ヘロヘロ過ぎて、戦闘員にも負ける気がするんですが)


「いる確率は高いと思いますよ。でも、午後は見学でお願いします」

 本当は『ハザーズは複数体いる事が多いので、体力を残す様にして下さい』って駄目出しようと思ったんだけど、残りの三人がぐったりしている。

 とどめを刺す様な感じがして言えません。


「コカトイエロー、レッドクレリックに回復してもらえば良いんじゃないか?」

 空子さんの提案を聞いてバグズファイブの数人が動揺している。確かに良い提案だ。でも、それは禁止されている。

 今のバグズファイブの態度が答えだ。


「仲間以外への回復魔法って使用に制限があるんですよ。相性もあるんですけど、一番の理由は連戦のストレス過多で心が壊れてしまう事があるんです。致命傷や緊急時以外には禁止されているんですよ」

 死ぬ気で戦ったのに、休みなく次の戦いに向かわさられる。それに耐えられるのは、血に飢えた危ない奴だけ。

 昔は耐えられずにヒーラーヒーローを襲った人もいたそうだ。


「確かにな……ゲームみたいにはいかねえか。それで俺達はどうすりゃ良いんだ?」

 獺川さんの話からすると、バグズファイブの五人は見学する位の体力は回復している筈。

 だって戦わなくて良いって分かった途端、あからさまに元気になっているんだもん。


「皆さんはバグズファイブに現場まで付き添って下さい。バグズファイブの五人も戦わなくても良いけど、協力はしてもらいますよ」

 立っている者は親でも使えって、言葉がある。依頼中は疲れているヒーローでも、上手く使うのです。

ゴールデンウイークいかがお過ごしでしょうか?作者はお仕事です。

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― 新着の感想 ―
回復効果の常識とか熟練ヒーローが知らないはずないのに、知らなくても不思議じゃないと思わせてる、 空子さん教導官としていいキャラしてるな。 今回特に突っ込みどころ多かったし、害虫への感想戦じゃなく、鶏の…
こんにちは バグズファイブとごろちゃんの脳内ツッコミの掛け合い、大好きです イエローさん、戦いではみんなを上手に守っていたのに、意見は求められない存在なんですね 1人だけ必殺技を叫んでないところ、笑…
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