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俺、ヒーローなんだけど   作者: くま太郎


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34/55

コカトリスは、空気を読んで胃が痛くなる

 ……なんだろう。バグズファイブから醸し出される強者感は。

 でも、まだ二週間だぞ。なんでピンチに現れた強者みたいな雰囲気だしているの?

(まあ、自信を持つ事は良い事だよね)

 ハザーズは、殺意全開で襲ってくる。だから、強さに自信がないと立ち向かう事は出来ない。

 でもね、場の空気が悪い事に気付いてくれないかな?

 ここは指導役である俺が注意しないと。

 でも、なんて注意するれば良いんだ?

 がつんと言う……もっと空気が悪くなるし、バグズファイブのテンションが下がってしまう。戦いにモチベーションは必須。

 やんわりと注意……そんなスキル持っていません。俺は部活の経験もないし、クラスの人間関係も波風立てない派だ。


「それじゃ、皆行くぞ!」

 俺がなんて声を掛けようか迷っていると、レッドフライさんが号令をかけた。

 いや、やらなきゃいけない事が山ほどあるんですが。


「ちょ、ちょっと待って下さい。ハザーズの居場所は分かっているんですか?それに打ち合わせがまだですし、遅刻してきた理由を聞いてませんよ」

 どんなに強いヒーローでも一人で事件を解決出来る訳じゃない。周囲のサポートがあって初めてヒーローとして動けるのだ。


「ヒーローは遅れて来るもの。何より結果を出せば問題ないですよね?」

 ブラックスティングさん。俺、無遅刻無欠席ですよ。それと甲級の俺でも相手を見ないうちは絶対に倒せるなんて言えません。


「相手は袋のネズミ。私達が公園に入れば、追い詰められたと思って姿を現します」

ブルーキャタピラーさん、貴方達は五人掛かりで、ナイフラットにフルボッコにされたんですよ。


「下手に追い詰めて、警察の方や公園の近くにいる人に被害が出たら責任をとれますか?この公園の広さでハザーズを追い詰めるには、十人以上のヒーローが必要です……予定時刻になりました。ドローンを飛ばして下さい。場所は、このあたりを重点的にお願いします」

 予め当たりをつけておいた所と魔力の濃い所にドローンを飛ばしてもらう。自然が豊かと言っても人の手で管理されている公園だ。上空から見えない所はないと思う。


「ド、ドローンを使うんですか?魔力とかで分かるって聞きましたが」

 イエローリポリーさんがおずおずと尋ねてくる。良く知っているって誉めたいとこだけど、半分正解って所だ。


「俺の魔力探索は魔術師系の人や、異世界の技術の応用で完璧じゃありません。レッドクレリックさん、気になる所はありますか?」

 当たり前だけど、ウイッチである獺川レッドクレリックさんの魔力探索の方が精度が高い。

 会話に口を挟まなかったのは、アドバイザーとしての立場を考えてだと思う。


「この噴水広場の後ろにある林から魔力に近い物を感じますね。植物系ハザーズは、陽が昇るに連れて魔力が濃くなります。調べてもらっても損はないと思いますよ」

 植物系ハザーズは夜中じっとしている事が多い。当然、そこには残留魔力が残っている。

 そしてヒーローが数日前にヒーロがいた場所にも魔力が残っている場合がある。

 レッドクレリックさん位になると、感度が高過ぎるのでそれも感知してしまう。数日前の魔力の可能性もあるけど、探した方が安全だ。

(気になる場所は四か所か。結構多いな)

 残留魔力なのか。それとも……。


「私もそこが怪しいと思っていました。魔力のある所だけを探せば良いんじゃないでしょうか?無駄な仕事をさせては警察の方のご迷惑になると思います」

 ホワイトモールクリケットさん、君達遅刻してきたよね。お巡りさん達がイラっとしているの伝わらないかな?


「園内に人が残っている危険性があるんですよ。逃げ遅れた人や間違って入った人なら、保護するだけで良いんですけど……覚えおいて下さい。ヒーローの敵はハザーズだけじゃないんですよ」

 良くホラー漫画とかである『幽霊より生きている人間の方が怖い』あれはヒーロー業界でも通じるのだ。


「えー、ハザーズがいるのに、意図的に入る人とかいないっしょ。なあ、レッド」

 ブラックスティングさんがレッドフライさんの肩に手を掛けて話し掛ける。陽キャってメンタルが強いよね。


「マスコミに動画配信者。彼等は安全より金や名誉を優先します。ヒーローだから市民を守って当たり前。危険な所に行くし、ヒーローのプライベートも無視。でも、命懸けで僕ちゃん達を守ってねって」

 ヒーローが戦っている動画は、安定してバスるらしい。当然、有名になればなる程、再生数は伸びる。


「あの……無断配信は分かりますけど、プライベートというのは……」

 ホワイトモールクリケットさんは女性だけあり、気になる様だ。

 ちなみに上級ヒーローになったらプライベートな時間は激減します。


「戦いが終わった後、追跡をして変身を解除した姿を激写。ヒーローの素顔って高値で売れるらしいんですよ。酷いのになると、盗撮もしてきます。戦いが終わって油断している時の会話を流されたり……切り取り炎上もあるので気をつけて下さい」

 俺の素顔が晒されたら違う意味で炎上すると思う。

 元から女性ファン少ないから、案外何もなかったりして……それはそれで少し嫌だ。


「それなら、どうしたら良いんですか?ヒーローにも人権はありますよね?」

 ブルーキャタピラーさんの言う事はもっともだ。でもね、君達は、それを守ってくれる大事な人達に砂をかけたんだよ。


「だから、警察の人に助けてもらっているんですよ。警察官の前で盗撮する人はいませんし、証言も警察官の方が信頼もある。感謝してもしきれない存在なんですよ」

 だから上級ヒーロー程、警察官に頭が上がらない。

 流石に気まずくなったのか、バグズファイブの五人は遅刻した事を謝った。


「それで、これからどうするんだ?」

 空気を察してくてたのか、空子さんが話し掛けてきてくれた。

(姿を捕らえる事が出来たハザーズは一体だけ……でも、違う所からも魔力を感じる)

 優先するのはハザーズを園外に出さない事。さて、どうするかな。

 まずはハザーズが撮影された場所を中心に魔力を感じる場所を円で囲み、危険地域に設定する。


「まずは撮影されたハザーズを俺とバグズファイブの皆さんで取り囲もうと思います。レッドクレリックさんは警察官の人達と一緒に危険地域外の捜索をしてもらえますか?」

 レッドクレリックさんに近くにいてもられば、なにかあっても直ぐに対応してもらえると思う。バグズファイブは二・三に分かれてもらって目的地を目指してもらう。

 ……俺はどうしよう。一人の方が気楽だけど、今の流れだと言い出し辛い。


「分かりました。空子さん、コカトイエローの事をお願い出来ますか?」

 獺川さん、やっぱりそうなりますか?結果、俺に空子さん含め三人の警察官が同行。バグズファイブには五人。獺川さんには十人の警察官と行動する事になった。


 地図を片手に園内を進んで行く。


「空子さん、この辺り詳しいですか?」

 俺は初めて来たから、全く分かりません。県外に援護に行く事多いけど、同じ場所に当たる事は滅多にない。


「近くに来た事はあるけど、初めてみたいなもんだぞ。何か気なる事でもあるのか?」

 そうなると頼りはネットか。そうなると、そこまでどうやって行くかが問題なんだよな。


「長丁場になりそうだから、昼飯どうしようかなって。出来ればラーメンかうどんが食べたいんですよね。地元の名物的なやつがあれば嬉しいなって」

 本当はカップ麺を食べようと思ったんだけど、却下くらったし。

(実際に歩いてみるとかなり広いな。だから獺川さんも昼を過ぎるって踏んだのか)


「今から昼飯の心配かよ。バグズファイブの事言えないぞ」

 空子さんが溜息を漏らす。どうも誤解されている様だ。


「ハザーズ戦の仕込みに使うんですよ。この公園には複数体潜んでいる感じがするんですよね」

 ハザーズが複数体潜んでいる時に一体倒して、残りの奴は息を潜める。そうなると、どうしても長丁場になってしまう。


「昼近くになって暇なら聞いてやるよ」

 俺として早く終わらせたい。でも、ヒーローの経験が長くなるぞと言っているのだ。


「お願いしますよ……皆さん、後ろに下がって下さい」

 丁度俺とバグズファイブが鉢合わせる中心地にそれはいた。


「出たな、バグズファイブ!仲間の仇を取らせてもらう。このスコップスギナ様がな」

 そこにいたには手がスコップになっているスギナ怪人ハザーズ。低ランクのハザーズってニッチな姿になりやすいんだよね。


「ご……コカトイエロー、あれはなんだ」

 空子さんが呆然としながら尋ねて来る。

 本人達は真剣だけど、周りは唖然。俺も対処に困っています。


「雑草にとって園芸用品は恐怖の対象であり、使って欲しい憧れの品。それが組み込まれたのかと」

 害虫モチーフなヒーローが雑草モチーフな怪人と対峙している姿はかなりシュール。番組になっても視聴率は稼げないと思う。


最初はジャンルをラブコメと迷っていました

いまや不遇ヒーローものに

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます 強者5人大好きです -ヒーローは遅れて来るもの -何より結果を出せば問題ない -相手は袋のネズミ。公園に入れば、追い詰められて姿を現す カッコいいです もっとやっちゃってく…
今回も面白かった。 > 魔力とかで分かるって聞きましたが 害虫モチーフなのに索敵能力持ちいないのか... > 低ランクのハザーズってニッチな姿になりやすいんだよね。 低ランクあるあるなら日常茶飯事…
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