学園祭開始
なんとか連日更新間に合いました
いつもの学校なんだけど、今日は特別な感じがする。お祭り独特のワクワクと期待。そして独特の一体感。
今日から槻浪高校の学園祭がスタートする。教室も装いを変えて、喫茶店に大変身。
「あっ、父兄の人はまだなんですけど……流石だな。吾郎、どこからどう見ても高校生には見えないぞ」
健也君、それじゃ何才見えるって言うんだい?それと流石って言ったけど、全然褒められている感じがしですがですが。
「そのまま歌舞伎町を歩けるぞ。絶対にやばい店にスカウトされるって」
月山君、言ってないけど俺ヒーローなんだよ。そんな店で働いたら、絶対に大問題になってしまう。
「他の男子はコスプレ感が凄いけど、大酉だけ本職って感じだよね」
「子供が見たら泣きそうなんだけど」
「あの威圧感で、ドラえさん書くってギャップ凄くね?」
女子からも弄られまくっているんですが。後、ドラえさんの事はもう忘れて下さい。
「吾郎、ボウタイもばっちりじゃん。これは、NEKOさんに写メ送らなきゃ」
鷹空さん、大丈夫です。昨日、休憩時間に五回もやり直しさせられました。
「ありがとう。鷹空さんもメイド服似合っているよ」
普段なら恥ずかしくて言えないセリフだ。俺に似合わないし、きもいって引かれる可能性だってある。
そんな危険を冒してまで、何故言ったのか……サンサンクからの指令なのです。
「あ、ありがとう。それじゃ始めるね」
鷹空さんの合図で執事&メイド喫茶開店した。
寝盗りポーチャーが第三体育館に人を集めるのは午後二時。それまで黒服を頑張ろう。
「いらっしゃいませ。何名ですか?……それでしたら、少し時間が掛かりますので、こちらにお名前を書いていただけますか?……三名様ご案内です」
健也のイケメン効果なのか、開店と同時に大勢の生徒が押し寄せてきた。
結果、黒服じゃなくファミレスの店員みたくなっています。
人手が足りず案内だけじゃなく、注文取りや配膳までこなしている。
そして、気が付くと、時間は十三時半。
(うん……あれは……そう言う事ね。良い度胸しているじゃねえか)
ある集団が、俺の視界に入った。今度はファミレス店員からヒーローモードに変更だ。
「健也、月山を調理場へ戻せ。それと女子生徒も引っ込めろ」
客に愛想を振りまいている健也に小声で伝える。
「あれは王餅さん?なんで男と一緒なんだ?」
そう、王餅さんが俺達に店にやって来たのだ。しかも、健也の言う通り男と一緒。
正確には、王餅さんを含めた女子五人と男である。
それだけでも目立つのに、男の恰好が凄かった。
柄物の派手なシャツに金のネックレス、これぞチンピラって感じのいでたち。
しかも、ポケットに手を突っ込んで、大股で向かって来ている。
周囲は完全にドン引きしています。
「あれが、彼氏の店に遊びに来たって風に見えるか?俺には、いちゃもんをつけに来た感じにしか見えないぜ」
あいつは、王餅さんを寝取りに来たんじゃない。月山を脅しに来たんだ。
(最初から王餅さんはポーチャーの女だったと……男の指示で月山に近づいたってパターンか)
「分かった。お前も無茶するなよ」
健也、ごめん。無茶どころか戦闘になる予定です。
「分かったよ……お客様、何名でしょうか?」
普通に接客すると、男がじろりと睨んできた。こいつの元になった嫌悪感って古すぎないか?
「あん?俺は月山って男に用があって来たんだよ。人の女に手を出しやがって……月山をここに連れて来い」
怒り口調で俺に詰め寄ってくる男。それとは真逆で気まずそうな王餅さん。
(しかし、なんでこんな小芝居を打つんだ?)
絶対に無駄な労力だと思うんだけど。
「あの人数は、六名様でよろしいでしょうか?よろしかったら、お名前の記入をお願いします」
絶対に怒られる接客だ。こいつが、ポーチャーでなくても怒ると思う。
でも、今一番必要なのは、月山達が避難する時間。
「お前、馬鹿にしているのか?客じゃねえって言ってんだろ!早く月山って男を連れて来い」
うーん、どうしよう。手を出してくれたら、心おきなくぶっ飛ばせるんだけど。
「あの、注文は中に入ってからお願いします。それと当店では月見うどんはおいていませんので」
この調子で二時まで粘ったら、どうするんだろ?その方が俺的には楽なんだけどね。
「……ちっ、時間か。月山を第三体育館に連れて来い。お前の匂い覚えたからな。覚悟しておけ」
流石は犬系ポーチャー。顔じゃなく匂いですか。
(覚悟か。それは俺のセリフなんだけどな)
そう言って男は教室から離れて行った。第三体育館に先回りしようとしたら、王餅さんが近づいてきた。
「満にあたいが何とかするから、絶対に第三体育館に来るなって言って」
王餠さん、なんで第三体育館を大声で話すんでしょうか?来てアピールが露骨過ぎませんか?
「分かりましたよ。縄で縛っておきますので……健也、どうした?」
王餅さんがいなくなると、今度は健也が近づいてきた。
「悪い。月山がいなくなった。これを見たらしい」
健也の手に握られていたのは、月山のスマホ。
王餅『あたい、元カレに脅されているんだ。助けて、満』
……こんなメッセージ見たら、行っちゃうよね。手が込み過ぎだっての!
「俺が月山を止めに行ってくる、ついでに上形先生にも報告しておくから、店を頼んだぞ」
他の先生に連絡がいっても、上形先生が上手く誤魔化してくれる手筈になっている。
◇
多分、あいつ等より先に第三体育館に着いた。着いたんだけど、何この状況?
「亜美、俺達恋人に戻れるんだね」
「良かった。信じてここに来て良かった」
「絶対に幸せにするから」
涙を流して喜んでいる男子と、どこか醒めた顔で笑っている女子。
物凄いカオスな光景なんですけど。
「吾郎、これは何なんだ?それに店を出しているのボランティア部の人じゃないよな?」
そして俺と同様に呆然としている月山。やっぱり、来たのね。まあ、あんなメッセージ届いたら、八割の男子は来ると思う。
「あー、あの人達の場所は変更になったんだよ。お前も教室に戻れ」
権力をフル活用して、場所を変えてもらったのだ。一般人を戦闘に巻きこむ訳にいかないし。
ここにいるのは本部の職員さん。早い話が現役の警察官。
「満、来てくれたんだ。来てくれてありがとう……そして騙されてくれてありがとう。ダーリン、全員揃ったよ」
悪い顔をしてポーチャーに話し掛ける王餅さん。中々の下種顔です。
「良くやったお前達。後からたっぷり可愛がってやるぜ。俺の女に手を出したんだ。心の力をもらうぜ」
(あれは犬の耳?いや、あの牙は狼か)
力を使う為か、男はハザーズの姿に戻っていた。
ポーチャーの言葉を聞いて一斉に離れる女子。それを信じられないって顔で見る男子。
「嘘だっ……」「こんなの酷い」「亜美……」
男子の身体から光の鳥が飛び出していく。心の力を奪われた男子は、その場に倒れ込んだ。
鳥に姿を変えた心の力は、ポーチャーの持つ鳥かごへと入っていく。
よりが戻せた事で、彼氏の心の力が強くなる。でも、一人一人から心の力を取り出すのは時間も労力も掛かってしまう。
だから、よりが戻った直後に彼女の裏切りを見せる事で、心の隙間を作る。そして、そこから心の力を取り出したと。
「次はお前等だ。大好きな俺様の為なら、心をくれるよな……俺様優しいから、フェロモンも終わりにしてやる」
ニヤリと笑うポーチャー。フェロモンが途切れた事で、自分が何をしたか分かったのだろう。
女子は彼氏……いや、元カレの元に駆け寄った。
「ごめんなさい、ごめんなさい……」「お願い目を覚まして……」
泣きながら、彼氏に謝る女子。その顔は絶望に染まっている。 その隙をポーチャーが見逃す訳もなく、女子も心の力を奪われて倒れ込む。
「すげー。中々の心の力だ。幸せと絶望が入り混じって、良い感じのエネルギーだ。二十人分の心の力。これで、ボスをお呼びする事が出来る……さあ、お越し下さい」
ここでボスを降臨させる気か。ボス級ハザーズの降臨に必要なのは、膨大なエネルギーと大規模な魔法陣。
第三体育館の広さがあれば、余裕で魔法陣を描ける。
「……ボス級ハザーズが降臨したら、甚大な被害が出ます。本部に応援を……あれ、魔法陣が無反応?今の内に魔法陣を消して、被害者の保護をして下さい」
流れ的には、魔法陣が光ってボスが降臨してる筈なんだけど。何があったか分からないけど、これはラッキーだ。
「な、なんでだ?二十人分の心の力を集めた筈なのに……力が鳥かごの中に入ったまま?……マッドフォックスめ!不良品を作りやがって」
何か分からないけど、チャンスだ。被害者は気を失っているから、変身してもバレる事はない。
「げんちゃ……」「吾郎、何があったんだ?何人も倒れたし……それにあいつハザーズだよな」
あっ、不足分がいた。月山は何があったのか分からないって感じでパニック状態。
「お前が原因か。このオレサマウルフの『モテない君に、奇跡的に出来た彼女。でも、それはトラップでした。ざーんねん作戦』を無駄にしやがって。お前から血祭りにあげてやる」
見事なまでのまでの逆切れを見せてくれるオレサマウルフ。それと作戦名ダサすぎないか?
「俺も何があったか聞きたいんだけど……まずはあいつをぶっ飛ばすのが先決だ。お前、口硬いよな?」
今優先するのは心の力を取り戻す事。そして被害者の救急搬送。身バレしても、最悪転校すれば良い。
「硬いけど……それより逃げるぞ。吾郎、ヒーローを呼びに行かないと」
うん、きちんとハザーズに遭遇した時の手筈を覚えていて安心だよ。でも、ヒーローはもうここにいる。
「幻着……安心しろ。俺がいる」
今は一刻を争う事態だ。説得や口外契約は後からでも出来る……何より、俺が彼奴を許せない。
読んでくれている人いますか?今から床屋に行くので反応お待ちしています帰ってきたら続き書きます




