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俺、ヒーローなんだけど   作者: くま太郎


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23/55

ドラえさん爆誕?

 ヒーローになって八年が経つ。その間、ハザーズの被害に遭って、理不尽な涙を流す人達を何回も見てきた。

 家族を殺される。目の前で、彼女が襲われた。家や車を壊される。恋人を奪われた……何の落ち度がない人がハザーズによって不幸な目に遭ってしまう。

 ヒーローが喝采を受けている裏には、理不尽な目に遭って涙を流している人がいる。

 それを知っているから、事件に遭遇すると自然にヒーローモードになるのだ。


「川本さん、コシギンイソギンチャクの被害者に接触をはかってみようと思います」

 今欲しいのは情報だ。被害者を一か所に集めるなら、ハザーズから何らかの接触がある筈。


「確か城宮の生徒だっけ?お前と同い年だから、怪しまれないと思うけど……あそこ、生徒数多いから、狙って会うのは難しいと思うぞ」

 あの時の被害者は城宮学院の生徒との事……あの青春戦隊ユースファイブと同じ学校なのだ。

(声や体格が違うからユースファイブじゃないと思うけど、知り合いの可能性は十分にある。慎重に動こう)


「学校の周辺で待ち伏せしていれば会えないですかね?」

 幸い?俺は城宮に知り合いがいない。身バレの危険性は少ない。

 問題があるとすれユースファイブと、素顔で会っている事だ。でも、ヒーローのルールがあるから、偶然会っても騒がない筈。


「あそこは警備が厳しいから、怪しい人物がいたら即通報だぞ。でも、丁度良かった。吾郎、ちょっと付き合え」

 守さんが悪い笑みを浮かべながら、会話に混じってきた。

 確かに、城宮には政治家や金持ちの子供が通っている。芸能人も大勢おり、警備は厳しい。


「付き合えって……トレーニングじゃないですよね?」

 嫌な予感しかしないんですけど。あの笑みには絶対に裏がある。


「この間ユースファイブの絡みで、城宮に行ったんだよ。そうしたら、先生から『生徒と、そのご両親からあの時の少年にお礼を伝えたいと頼まれまして』て、お願いされたのさ」

 身バレの危険があるって、反論しようとしたけど、あの時俺は一般人として聞き取りを受けた形になっている。

 ヒーローである守さんなら、コンタクトを取る事は可能な訳で。


「嫌ですよ。あんなキラキラした学校に行ったら、目が潰れちゃいます」

 あんなセレブで爽やかな学校に行ったら、悪目立つしてしまう。


「お前の欲しい情報も手に入るし、城宮とも繋がりが出来る。一挙両得だぜ。ほれ、行くぞ」

 変身していない俺が守さんに敵う訳もなく、強制連行となりました。


 今回は調査。当然、転移装置は使えない。だから、守さんの車で行く事になったんだけど……。

(いつみても、違う意味で目立つ車だよな)

装甲車ばりの頑丈さ、荒れ地でも平気で走行できるパワー。そして窓には防弾ガラスが使われている。

一見、過剰装備にも思えるが、VIPの護衛が多い守さんには必須らしい。


「被害者の資料に目を通しておけ」

 そう言って、ダッシュボードから書類を取り出す守さん。物凄く準備が良いですね。

 多分、守さんは最初から俺を城宮に連れて行くつもりだったんだろう。そうとは知らずに『被害者に会いたい』って言った俺は正にネギを背負った鴨だったのか。


「襲われた人も無事に退院出来たんですね。そして、彼女と親しく話している所が校内で目撃されていると……ここ、学校ですよね」

城宮に初めて来たけど、都内とは思えない広さでした。そして駐車場には、高級外車がずらり。教職員の駐車場にも高級車が停まっている。

(警備も厳重だし。潜入は無理だな)

 潜入その物は簡単だ。でも、潜入したら、直ぐにバレる自信がある。だって城宮の生徒って、俺と全く別人種なんだもん。城宮の制服を着ても絶対にバレる。


「お前、進学候補に城宮もあっただろ?下見に来なかったのか?」

守さんの言う通り、一時期、城宮も進学候補の一つだった。そして今言えるのは、築浪うち選んで良かったって事だ。


「ボディーガード要員として、俺を入学させたかったらしいんですよ。でも総司令が『絶対に馴染めないから止めなさい』って却下されたんです」

 九稲総司令、大正解です。多分、一か月持たなかったと思う。

 校舎に向かう途中、何人かの生徒と擦れ違った。

 なんで、そんなに爽やかでキラキラしているの?青春満喫オーラ―が凄いんですけど……確かに、ここにいたら鬱屈した思いを抱えると思う。


「でも、そのお陰で良い出会いがあったんだろ?仕事ヒーローも大事だけど、自分自身が幸せも大切にしろよ」

 嬉しいけど、同時に物凄いプレッシャーなんですけど。素でモテる守さんと違って、俺は女子と出掛けられる事が奇跡なんですが。


鷹空むこうさんから見たら、俺はただの友達ですよ。スペックに天と地の差がありますので……なんか嫌な気配がしませんか?」

 微かに……ほんの微かになんだけど、ハザーズの気配がする。気の所為かもしれないけど、嫌って程味わってきた吐き気を催す邪悪な気配がするのだ。


青春戦隊ヒーローが生まれているんだから、当たり前だろ?もっとも、まだハザーズは確認されていないがな」

 ヒーローは恐怖ハザーズに抗う為の希望。新しいハザーズが現れれば、対になるヒーローが誕生する。逆に言えば新しいヒーローが誕生したって事は、ハザーズも現れるって事だ。

(ユースファイブは学園専任。つまりハザーズは校内にいる可能性が高い。それがまだ確認出来ていないって事は……)

 憑依系、もしくは、既に潜伏しているかだ。


「たまにはゆっくり気分転換でもしたいんですけどね」

 まじで後輩育成頑張って、仕事量を減らしたいんですが……でも、その為には育成って仕事をしなきゃいけない訳で。


「それならコンサートのチケットをやろうか?中秋小夜ってアイドルのコンサートチケットもらったんだよ。確か、お前と同い年で城宮ここの生徒らしいぞ」

 中秋小夜……肉フェスで応援してくれたアイドルだよな。女性アイドルのコンサートか。


「パスします。多分、馴染めないで空気を壊しますので」

 ちゃんと歌を聞いた事がないから、上手く乗れないで空気を壊す自信がある。


「お前、リズム感ないもんな……さて、ここからお前は勇気ある一般人だ。行くぞ」

 守さんと適度な距離を保ちながら、校舎に入る。そして案内されたのは応接室。


「この間は息子がお世話になりました。息子と変わらない年なのに、君の勇気には感心したよ」

 部屋にいたのはハザーズに襲われた少年と、その友人。そして二人のご両親。

 被害者の少年はまだ包帯を巻いており、痛々しい。でも、どこか顔つきが明るい。

 入室と同時にお金持ちっぽいご両親に感謝された。あれは俺にとっては日常の延長でしかないんだけど。


「いえ、ホワイトエンジェルさんから『勇気と無謀は違うんですよ』って注意されました」

 昨日は、お出掛け内容を尋問したあげく『手を繋げとは言わないけど、プリ撮るとか次の約束位しろよな。このヘタレ鶏。勇気って言葉知らないのか?』って駄目だしされました。勇気って便利な言葉だよね。


「それでも俺も怪我しないで済んだし……それに」

 眼鏡を掛けた少年が包帯を巻いた少年に意味あり気な顔を向ける。


「病院に亜美が来てくれて仲直りしたんだ。今度一緒に槻浪の学園祭にお邪魔するよ。亜美も第三体育館でやる出店に行きたいって」

 ……なんか聞き覚えるのあるワードが出て来たんですが!


 あの後、本部に戻った俺は被害に遭った恋人達……の男性側に話を聞いてもらう様にお願いした。

(気を取り直して、今日は準備を頑張らなきゃ)

 仕事がオフだから、学祭の準備をしようとしたら、教室が変な空気になったんですが。


「それで、準備って何をすれば良いんだ?」

 準備に携わっているのは、イラストを描くのが得意な奴や、物をづくりが好きな人達。陰キャって言われる奴等だけど、俺は普通に仲が良い。

 でも、皆気まずそうな顔をしている。


「吾郎、人には得手不得手がある。ノートに、ドラ〇もんを書いてみろ」

 見かねた健也が俺に指示を出してきた。


「ドラ〇もん?こんな感じで良いのか?」

 ノートの隅っこに書いて見せる。


「こわっ!パチモン感が凄いんだけど」

「大酉君、これ夢に出て来るやつだよ」

「変に等身が長いし、ドラえさんって感じだね」

 駄目だしの雨あられなんですけど。


「吾郎、はっきり言ってやる。準備に関しては、お前は足手まといだ。だから、帰って良し。適材適所……ほれ、スマホが鳴っているぞ」

 健也め、はっきり言いやがって。スマホを見ると本部からだった。


「ちくしょう。寂しくなったって言っても戻ってきてあげないんだからね……はい、大酉です……マジですか?」

 調査結果、殆んどの彼女が第三体育館に行きたいって言っているそうだ。

(不幸中の幸い……本部にも協力してもらって対策を建ててやる)

 その為には学校と話し合いが必要だ。ついでに後から差し入れを持って行ってやろう。

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― 新着の感想 ―
なんというか、戦隊ヒーローがたくさんいる状況を想像して出てきたのが ナイトウィザードの「週刊世界の危機」って単語だったw
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