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俺、ヒーローなんだけど   作者: くま太郎


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20/55

サンサンクの鳥かごパス?

 公私混同は駄目だと思う。ましてやヤラセは絶対アウトだ。

 そう後輩は思うんですが……。


「吾郎、セツカさんのブログでブルーキャッツの割引クーポン当たったよ。しかも破格の五割引き。僕、ここの服好きなんだよね。メンズのネクタイもあるし。使える日にちは決まっているけど、これは行くしかないでしょ」

 僕って凄いでしょって感じで、鼻高々と報告してくる鷹空さん。

 ごめん、それ絶対に仕込みだと思います。

 ブルーキャッツ。性別を問わず着れるユニセックスなファッションが売りの人気ブランド。

 デザイナー兼社長の名前は美影音子……そう、サンサンクのブルーパラディンさんの店だ。

 多分、美樹本さんが、美影さんに話したんだろうな。そして鷹空さんを当選させたと。しかも、日付が俺の休みと重なっている……正にサンサンクによる鳥かごパス。後輩おれに逃げ場はあるのだろうか?


「俺もあそこの服何着か持っているよ」

 美影さんいわく『吾郎はファッションセンスないじゃん。だから、私の店で買いなさい』とのアドバイスがあり、服を買わされて……買わせて頂いている。

(ブルーキャッツで服を買っていたから、美樹本さんも直ぐにコーデ出来たんだよな)

 そう考えると、この誘いは無下には出来ない。


「この間の服もそうだよね。僕も新しい服買っちゃおうかな」

 流石は女子。見ただけで、どこの服か分かるんだ。

 ……チキンと笑いたければ、笑って下さい。ここまで来て断られるのが、怖くなってきました。

(念の為に、鷹空さんが断りやすい流れを作っておいた方が良いかも)

 半額なら俺より友達と行きたい筈。正直に言おう。直前になるとビビるタイプなんです。


「鷹空さんは、いつなら都合が良い?」

 都合を聞いて、その日はきついって流れにすれば、友達と行ってくるとなる筈。ネクタイは、その時に見て来てって事にして。

 ここまでお膳立てしてもらっても、臆病風に吹かれまくりです。だって、下手すりゃ完全に見込みなくなるんだもん。勘違いでも幸せを長く味わいたいんです。


「僕はいつでも良いよ。吾郎は、どの日が良い?」

 どの日も予定がありません。俺のオフは買い出ししか用事ないんだし。


「鷹空さんと一緒で、どの日でも大丈夫だよ」

 でも、日付けを指定する勇気はない。この流れで『その日は用事あったんだ』になったら絶対にへこむ。


「それじゃ、次の日曜にしよ。待ち合わせは駅にして、時間は十時で良いかな?」

 とんとん拍子で話が進んでいく。これが夢なら覚めないで欲しい。

(待って。これって世間で言うデートなんじゃ?)

 まだ数日あるのに、もう緊張してきたんですけど。


 ◇

 どうする。俺の勘違いかもしれないけど、第三者的目で見ればデートになると思う。

 つまり、俺の人生初デートな訳で。

(落ち着け、俺。鷹空さんはデート認定していない可能性もあるんだ)

 デートだって気合を入れていったら、鷹空さんはクラスメイトと遊びに行く感覚で……『僕、そんなつもりじゃなかったのにな』なんて言われたら、一人で泣いてしまう。

 幸い、仕事関係も含めると恋愛相談が出来る人は大勢いる。でも、誰彼構わず相談していたら、噂が広がってしまう。

 相談相手は絞るべきだ。

 健也か月山……駄目だ。確かに二人共俺より恋愛経験値は高い。でも、鷹空さんが健也の事を好きっていう噂が本当なら変な空気になってしまう。

月山は色々微妙だから避けておきたい。 

 川本さんか守さん……駄目だ。二人共、リアルでもモテる。俺の不安を理解してくれないと思う。

 それなら既婚者の上形先生……流石に先生に相談はアウトか。

(俺の気持ちが理解出来て、恋愛相談に乗ってくれそうな人……あの人がいた)

 早速、ヒーロー専用サイトに行き、予定を調べる。ラッキーな事に、今日なら相談可能だ。

 放課後、俺は速攻で練習場へと向かった。


「空子さん、相談したい事があるんですけど、時間良いですか?」

 俺が相談相手に選んだのは柔道の師匠であり、既婚者の空子さん。丁度いいタイミングで、今日は練習場に指導に来ていたのだ。


「相談?……ここじゃ、なんだから休憩室に行くぞ」

 空子さんは、俺の顔を見て何かを察したのか、休憩室に向かって歩きだした。


「そんな大袈裟な話じゃないんです。実は……」

 好きな人がいる事、その人と日曜に出掛けるからアドバイスして欲しい事を伝える。

(良く考えれば指導員に話す事じゃないよな)

 空子さんはあくまで柔道の指導員。その役目はヒーローの格闘を指導する事で、恋愛相談は業務と関係ない。


「お前もそんな年になったか。あまり気負うと周りが見えなくて失敗するぞ。もっと肩の力を抜いて男友達と遊びに行く延長と思えば良いんだよ」

 空子さんは優しい目で俺を見ている。正に大人って感じで安心する。


「俺と行くの本当は嫌って可能性ないですよね?学祭の準備だから、仕方なくとか」

 鷹空さんはそんな人じゃないって知っている。でも、ヒーローなんてしていると、造り笑顔に多く触れてしまう。


「それだったら、他のクラスメイトを誘うだろ?お前位の年じゃ仕方ないけど、女性って意識し過ぎも駄目なんだぞ。男は自分で思っている以上に、下心が出ているもんなんだよ。同じ人間なんだから、普段のお前のままで行けば問題ないさ。でも、相手が女性だって事を頭の中にいれておけ。会話の内容にトイレへ行く時間、その辺を配慮するだけで好感度は上がるもんだぞ。ま、その辺は護衛もしているから大丈夫だと思うけどな」

 女性の護衛も何回も経験しているし、セクハラ関連の教則動画は何回も見ている。

(告る前から振られる心配しても意味ないか。一番の目的はネクタイを買う事なんだし)

 そう思うと肩の力が抜けていく気がした。


「もう一つ良いですか?金はいくら位持って行けば良いんですか?七、八万もあれば間に合いますかね?」

 懐には余裕がある。この間の戦いで危険手当ももらったし。


「お前は中年親父か!奢れば喜ぶ奴ばかりじゃないんだぞ。高い金を出せば見返りを求めているかもって警戒される事もある。ネクタイ代と飯代合わせて1万もあれば余裕だろ。ネクタイはどこで買うんだ?」

 ……そうだよな。建前上、俺は高校生なんだし。成金野郎みたいな金使い方は嫌われるか。


「ブルーキャッツです。サンサンクの美影さんの店」

 あそこの店まあまあの値段するけど、半額クーポンがあるから大丈夫だと思う。


「美影さんの店か……余裕をもって三万位持っていけ。あの嬢ちゃん達、お前の事が可愛くて仕方がないから、アシストしようとすると思う。それを考えたら、少し余裕があった方が良い」

 サンサンクの三人からしたら、俺は出来の悪い弟って感じらしい。会う度に弄られているし。


「ありがとうございます。空子さんに話を聞いてもらって良かったです」

 デートなんだって意識し過ぎていた。あくまで学生の買い出し。その上で鷹空さんと楽しく過ごせる様に考えよう。


「いや、お前も高校生なんだって分かって安心したよ……でも、都内で学生のカップルが襲われる事件が続いている。気を……おコカトイエローは違う意味で気をつけろよ」

 なんかタイムリー過ぎる話題が出てきたんですが……まさかね。


「その事件詳しく教えてもらえますか?」

 寝盗りハザーズは、大分力を溜めたと思う。学園祭以外で動いてもおかしくはない。


「少年課の知り合いから聞いたんだよ。カップルがハザーズに襲われる被害が増えているんだ。その後見計らった様なタイミングで、見知らぬ男が助けに現れるんだと。でもって、なぜか彼女はその男の方が好きになるんだと」

 立ち話だし、眉唾な内容だから、それ詳しい話は聞かなかったそうだ。そして被害者は高校生や中学生らしい。

 リアルタイム過ぎて嫌な予感しかしないんですが。

(念の為に本部に報告しておくか)

 ただの男女のいざこざなら良いんだけど……いや、良くないか。

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