**第五章: 彼女の孤独**
その日以来、透はますます明日香に引き寄せられていった。彼女はいつもどこか孤独を抱えているように見えた。教室で友達と笑い合っているときも、ふとした瞬間に彼女の目が遠くを見つめているのを透は何度も目撃した。彼女の笑顔は明るくても、透にはその背後に隠された深い闇が見えるようだった。明日香が本当は何を考えているのか、彼女が何を抱えているのか――透は知りたくてたまらなかった。
放課後、透は明日香を見かけ、無意識のうちに声をかけた。
「橘さん、ちょっと話さないか?」
彼自身、何故そんなことを言ってしまったのか分からなかった。彼女と関わらないようにしていたはずなのに、彼女に近づきたいという思いが抑えられなくなっていたのだ。
明日香は少し驚いた様子だったが、すぐに小さく微笑んで頷いた。「いいよ。」
二人は駅前の公園まで歩き、ベンチに座って夕暮れの空を見上げた。桜の花びらが静かに舞い散る中、透はどう言葉を切り出せばいいのか迷っていた。明日香もまた、透が話し始めるのを待っているかのように静かだった。
しばらくの沈黙の後、明日香がぽつりと話し始めた。
「桐島くん、私ね…小さい頃から、ずっと自分の中に何か埋められない穴がある気がしてたんだ。」
その言葉に、透の胸がチクリと痛んだ。彼女もまた、何か孤独を感じて生きてきたのだ。透は黙って彼女の言葉を聞き続けた。
「友達はいるし、家族もいる。でも、何故か…自分がここにいる理由が分からない時があるの。こんなこと、誰にも言ったことないんだけどね。」
その告白を聞いて、透は彼女が抱えている孤独の重さを感じた。そして、その一瞬に、彼女の寿命が短いという事実が、より一層残酷に感じられた。彼女の「今」を、透はどうすれば救えるのだろうかと、焦りにも似た感情が胸に広がっていった。




