表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/13

**第十章: 心の選択**

透が告白の言葉を口にした瞬間、時間が止まったかのように感じた。周囲の音が消え、心臓の鼓動だけが耳に響く。明日香の表情が一瞬驚きに変わり、次第にその目が柔らかく、優しく光を帯びていくのを透は見逃さなかった。


「桐島くん…」


彼女の声は小さく、緊張の中にあった。透の心の中では、不安と期待が交錯していた。明日香がどんな返事をするのか、それが自分の心をどう変えるのか、全てが一瞬で思い巡らされた。


「私も…私も、桐島くんのことが好き。」明日香が続けた。その言葉は透にとって、最も素晴らしい贈り物だった。思わず透は目を大きく開き、信じられない思いで彼女を見つめ返した。


「本当に?」透は声を震わせながら聞き返した。


「うん。初めて桐島くんと話した時から、何か特別なものを感じてたんだ。あなたの優しさに、いつも支えられてた。」


明日香の言葉に、透は胸が熱くなり、喜びが溢れ出した。彼女も自分を好きだと認めてくれたことに、これまでの不安が一瞬にして消え去っていく。しかし、その一方で、透は彼女の短い寿命を思い出し、喜びの中に微かな悲しみが忍び寄るのを感じていた。


「でも、橘さん…」


思わず声を押し殺してしまった透は、今度はどう伝えればいいのか考えた。彼女がこれからも自分のそばにいてくれるのは嬉しいが、それが同時にどれほど辛い未来を連れてくるのかを理解していた。


「どうしたの?」明日香は心配そうに問いかけてくる。


「橘さんの寿命が…俺は、それがどうしても気になってしまう。俺が好きになっても、いつかは君を失ってしまう。それが怖い。」


明日香は一瞬、驚いたように透を見つめた後、彼の手をそっと握った。彼女の温もりが、透の心の中に優しく流れ込んできた。


「それでも、私はこの瞬間を大切にしたい。どれだけの時間が残っていても、今を一緒に過ごすことが私にとって一番大切なんだ。」


その言葉に、透の心は強く揺さぶられた。明日香は、彼女自身の限られた時間をどう受け止めているのか、そしてそれをどう生きようとしているのか、彼女の決意が透に伝わってきた。


「だから、桐島くんも一緒に笑っていてほしい。未来を悲しんで過ごすよりも、今を楽しんで生きようよ。」


その言葉が透の心に深く響いた。彼女がそう言うなら、透も彼女の思いを尊重したいと思った。どれほど短い時間でも、二人で笑い合い、思い出を作ることこそが大切なのだと、彼は理解し始めていた。


透は明日香の手を優しく握り返し、微笑んだ。「分かった、橘さん。君の側で、笑っているよ。」


その瞬間、透は明日香との新しい未来が始まったことを実感した。二人の心がひとつに繋がり、彼女の残された時間を共に過ごすことが、何よりも幸せなことだと感じたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ