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サーラと二人で初めての

 乱入者の佐藤さんは、俊の画面と顔を何度も確認して腕を組んだ。


「この私に勝てるプレイヤーが、まさかうちのクラスにいるとは……!」

「むしろ僕は佐藤さんが上手すぎてびっくりしたんだけど……」


 確かに、格ゲー遊ぶ女子というのも珍しいのに、その上であの巧さだもんな……。

 心から俺がプレイヤーじゃなくてよかったと思う。


「それにしてもよー、まさかこんなところで会うなんてびっくりしたぜ」


 清一の言葉に、サーラと長瀬さんが顔を見合わせる。


「どこに行くかはみんなで相談だったんだけど」

「あたしは同じ店に行っても服が入らないですし、佐藤さんはちょっとあたしたちとスポーツをするのは遠慮したいとのことです」

「で、三人で遊べそうな場所の、ゲーセンにしたのだ!」


 なるほど。長瀬さんは俺と大差ない身の丈だし、佐藤さんは綾戸さん長門さんに混ざると体力差がありすぎる。


「ということは、三人ともゲームを?」

「うん。みんな上手いよー」


 どうやら佐藤さんだけでなく、サーラも長瀬さんもかなりゲームを遊ぶらしい。

 話を聞くと、サーラは遊ぶことに関してはアウトドアもインドアも好きなタイプで、長瀬さんも同じようによく遊ぶとのこと。


「特にサーラっちのレースゲームは凄かったよー。初めてのコースを反射神経とセンスで一位ゴールするし、ああいうのはこの鈴歌ちゃんでも無理だね」

「ほんと綾戸さんって何でも出来ますよね」

「そう言う由希ちゃんも、あの音ゲーすごかったじゃん。十個のボタン全部ノーミスとかスーパープレイすぎ」


 そりゃすごい、こっちの体力はあるけどセンスは壊滅的な清一とは大違いだ。

 見た限り、三人とも仲も良く相性も良さそうだな。


「折角だしよ、三人も一緒に……ってわけにはいかないか」

「あー、そうだよね」


 清一は、女子三人組を誘おうとしたが躊躇ってしまう。

 俊もそれに同意していた。


「ん、何故だ? あんまり一緒には遊びたくないか?」

「いやそんなわけねーよ、そうじゃなくてだな……」


 清一は、ちらちらとサーラの方を見ている。

 何だ、遠慮でもしているのか?


 俺は二人の態度に首を傾げながら、サーラ達を誘ってみる。


「一緒に混ざっても大丈夫か? 佐藤さんと長瀬さんも」

「良いぞー色男! 誘われてあげよう!」

「あの、飯田君さえよろしければ……」


 二人とも了承してくれた。問題なさそうだな。

 サーラとはアイコンタクトを取り、お互いに笑顔で頷き合った。


「大丈夫そうだぞ」


 振り返ると、清一と俊が目を合わせて……俺を女子達から少し離れた場所に呼ぶ。


「お、おい。姫って誘っても大丈夫な人なのか?」

「綾戸さんって男子とは遊ばないと思うんだけど、返事もらった?」

「さっき普通に頷いてただろ?」


 そういや最近当たって砕ける告白みたいなのが減ってきたとは聞いているが、もしかして逆に誘いにくくなっているのか?

 サーラ自身は、至って普通に生活しているだけなんだけどな。


「綾戸さんも一緒で問題ないよな」

「そりゃ問題ないけど、なんで?」

「さあ?」


 俺が綾戸さんからの了承を取って二人を見ると、呆然とした顔で俺を見ていた。


「……いや、蒼空お前すげーな」

「勇者がいる……」


 何で誘っただけで勇者になるんだよ、魔王でも倒しに行くのか?

 その称号は、どうやら魔王を倒す力を得たらしい肉じゃがにでもくれてやるよ。




 六人の大所帯になったゲームセンターは、実に賑やかだった。

 全員で挑戦したクレーンゲームは仲良く揃って全滅したが、それだけでも面白かった。

 ダンス系の音ゲーを俊と佐藤さんが遊んだが、今度は俊が完全に駄目だったな。

 体力が必要になるタイプのゲームとなると、得意分野からは外れてしまうらしい。


「そろそろ昼だねー、最後になんか遊んでいこ」

「最後となると……やっぱあれが気になるよな」


 清一が視線を向けた先には、ゲーセンの中央付近スペースを大きく取った、ガンシューティングゲーム。

 壁一面がどこかの惑星と宇宙のディスプレイで、そこに向かってレーザー銃を構えて敵メカを撃つという本格的なものだ。

 そのプレイヤー側の前には、銃をセットした一メートルほどの大きな板が二つある。


 俊がそのゲーム機を見て唸る。


「センサーがこの壁の中に隠れているかを判定するんだ。本格的すぎる上に協力プレイ前提難易度で僕は無理だった、かなり疲れるし」

「うへーマジかよ、絶対俺できねーわ」


 体力的に俊が無理で、プレイ難易度的に清一もお手上げ。

 となると……。


「じゃ、俺が初挑戦といこうか」


 左側の銃を持ち、プラスチックでできたSF的な銃を手に取る。

 軽くて持ちやすい銃を構えると画面に照準が現れた。


 その画面にある照準が、二つに増える。


「おーっ、すごいね」


 隣ではサーラが銃を構えていた。

 ということは、俺とサーラの協力プレイか。

 楽しみだ、話題のサーラのテクニックを見せてもらおう。


「どう、似合う?」

「新鮮な感じだよ、なかなか似合ってる」


 女子高生が銃を構える姿、ミスマッチな筈なのにサーラがすると様になっていて面白いな。


「うぇーい! サーラっちイケてる! 後で飯田君にも送るぜ! ていうか飯田君も撮るね」


 賑やかしギャラリーと化した佐藤さんがスマホを構えるのに苦笑しつつ、ゲームをスタートした。

 両手でしっかり構え、照準が安定させる。


 まずは、画面に現れた正面の敵を一体。

 遠くに見えている状態でも、正確に狙うと倒せるな。

 次に画面中央の出現したばかりの敵を……と思った瞬間、敵の戦闘機が爆発した。


「よし!」

「うおっ、綾戸さん超はええ」

「サーラっちエイム正確すぎん? 戦場帰りのスナイパーか?」


 視線をサーラの方に向けると、向こうもこちらに視線を向けて親指を立てた。

 二人プレイヤーの協力プレイだからこういうこともあるだろうが、ここで助けられてばかりというのは格好が悪いな……!


 今度は俺が立て続けに真ん中の敵を倒し、ついでにサーラの側にいた敵も倒していく。

 サーラがこちらを一瞬振り向くと、軽く笑いかけて肩をすくめた。

 マウス操作だが、俺もこういうゲームはやっているからな。

 狙いをつけて撃つなら一日の長がある、負けるわけにはいかないな。


 そこからはもう、敵の奪い合いといわんばかりにお互い画面の戦闘機を撃ちまくった。


 最後に、巨大ロボットが登場した。

 俺とサーラは一瞬目を合わせると、自分の側にある小さな砲台を全て倒していく。

 敵の攻撃が来るまでに倒しきれないので、その都度目の前の壁に身を隠してダメージをやり過ごす。

 なるほど、これは体力を使うな……!

 緊張するし、屈まなければ頭が出るので本当にいい運動になる。

 少し汗が滲んできた。


 巨大なボスのチャージビームのカウントが始まっても、溜まる直前まで二人で撃ち続けて……画面に『1』と数字が現れた瞬間、左右対称の全く同じ動作で壁に潜り込む。


 身を屈めた瞬間、サーラと目が合った。

 サーラは満面の笑みで、銃を片手にVサインを作る。


「協力プレイ楽しいね!」


 緊張とはまるで無縁と言わんばかりの実に楽しそうな笑顔に、思わず俺も「ああ!」と返して笑う。

 そうだな、こういう協力プレイの楽しみは一人でゲームをやっていても中々得られないものだ。

 特にネットワーク対戦メインになると、隣の人の顔って見えないものだしな。


 ボスの攻撃が止まったと同時に二人で顔を出し、残り僅かなゲージを完全に削りきる。

 画面中央で巨大な光と音を発して巨大メカが爆発すると、大きく『MISSION COMPLETE!』という文字が躍る。


「よし!」

「やった!」


 銃を置くと、サーラが手の平を上げていた。

 俺はその右手に向かって、パンと気持ちいい音を鳴らす。


「うおお! 私ここよく来てるけどクリアしてる人マジ初めて見た! どっちもプレイスキルえぐすぎ」


 感嘆する佐藤さんの方を向くと、佐藤さんはずっとスマホを構えていた。

 その構えを解いてボタンを押すと、保存したものを確認し出す。


「……まさか」

「動画で撮ってみた」


 後日、仲良くハイタッチをする動画のスクリーンショットがサーラへと送られた。

 佐藤さん、抜け目がなさすぎて本当に助かる。


 初めての経験となったが、本当に楽しかった。

 誘ってくれた二人にも感謝したいし、女子の方の二人にも感謝だな。

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