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情報収集

翌日、家が近所の友達吹野 敦(ふきの あつし)と共に学校へ向かう。

「あぁ~俺の事が大好きな姉と妹が突然降ってこねえかな~」

「朝っぱらから欲望に忠実だなお前は」


足を動かしたまま堂々と言う敦に突っ込む。

敦は唇をむっと尖らせて眼鏡の縁をちょいちょいと弄り始める。

「俊平は凄い美人の姉ちゃん家に居るだろ?いいよな~今いくつだっけ?」

「丁度二十歳。てか姉さんはちょっと前から一人暮らししてるよ」


春風を感じながら特に気を遣う必要もなく雑談に興じる。

何気ない日常だが……だからこそ安心できた。

主に昨日と比較して。



俺は頃合いを見て話を切り出す。

「なぁ、確か敦って小学校の頃氷室さんと同じクラブやってたよな?」

「え?氷室って……あ~うん、調理クラブな」


「そういう所での氷室さんってどんな人だった?」


俺は何でもいいので氷室の情報を集めることにした。

と言ってもただ俯瞰して居るだけで見えていた情報に興味は無い。

特定の人物で無ければ知り得ない情報、その一つがクラブ活動だ。


正直核心に迫れるとは思っていないが何もしないよりはましだろう。

そう思い聞いてみたが……何をニヤニヤと笑っている。


……分かりやすいな、こいつ。

俺は敦が次に言うセリフが予想できてしまった。


「お前もしかしてひ」

「氷室の事が好きなのか?……小学生かよお前。まあ卒業したばっかだけど」


呆れ交じりに言葉を遮っていく。

それに対して敦は大げさに驚いている。

いや、単純に言動のパターンが見え透いてるんだがな。


「じゃあ何で聞くんだよ?」

少しむっとしながら聞かれる。

「あー……ほら、あんま人と話さないからクラブとかじゃ違うのかなって」

適当に理由を説明すると敦は上を向いてしばし考え込む。


「氷室は別に、調理の手伝いはしてたけど基本誰とも全く喋んないぞ?」


「……マジ?」

「マジ。マッキーに聞いたけど修学旅行とかでもずっと部屋で一人だけ隅っこに居たらしいぜ」


頭を抱えそうになる。

大した情報は期待していなかったが、ここまで真っ暗な答えが返ってくるとは思わなかった。

どうやら人と関わらないようにしていたのはクラスのみではないらしい。


敦は手をぐっと握って悔しそうに歯を食いしばっていた。

俺は腕時計を眺めながら愚痴が飛んでくるのを予測する。

「もったいねーよ!あんだけ美人なのにさ!話しに行けねーもん!」

「やっぱ塩対応されるのか?」

と聞くとすごい勢いで頷かれる。何か今朝はやけにテンション高いな……

「そう!てかお前も教室で一回は聞いたことあるだろ!?『興味ない』っていうセリフ」


興味ない。確かに氷室の第一イメージはその言葉。

だからこそ、得体のしれない不気味さを感じているのだ。


「貴方に興味があるの」

「ひょっとして両親と仲が悪かったりするんじゃないの?」

「警戒しないで。私は貴方の味方だから」


脳裏に浮かんで来るのは昨日聞いた衝撃の言葉達。

誰に対しても興味を示さない、そんな氷室は俺に対しては興味があるという。

そして不仲の件を言及し、去り際に味方だとアピールしてくる。

非常にやきもきする展開だ。


このまま膠着状態を貫いていても仕方ない。

「敦、氷室さんってⅮ組だったよな?」

「俺たちBの二個隣だから……おう、Ⅾで合ってる」

敦に確認を取って俺は一つ決心を固める。


周りから情報を引き出そうにも期待は薄い。

だったら……本人に直接探りに行ってやる。


真意がどうあれやられっぱなしでは居られない。

学校に行ったらいの一番に氷室と話をしよう。


「お?ナンパしに行くのか?」


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