表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/32

武器からビーム出すとかある

 人が吹っ飛ぶ光景というのはアニメや漫画でよく見るものだけど実際に眼にするとはぇースッゲぇーという感想に頭が塗り潰される程に衝撃的なものだ。それが小柄でどこか眠たげな猫を思わせる少女がやったともなれば尚更ね。


 小春すっごいわ。吹っ飛んだの戦士系のガチガチの前衛だったと思うんだけどなぁ。


 柄にトゲ付き鉄球を伸縮自在の魔法の鎖で繋いだメイスとしてもフレイルとしても使える特別製のモーニングスターを自在に操っている。その上で回復と支援もキッチリこなすんだから圧巻だよね。


「そこまで!」


 審判役から終了の合図がかかったところで構えを解いてパーティで集まる。


「お疲れさん」

「お疲れ様」

「おつかれ! 勝ったな!」

「おつかれ」


 いよいよ明後日にダンジョンへの遠征を控えた今日は訓練の時間にパーティでの総当たりの模擬戦が行われている。主な目的はパーティ毎の大体の実力を確認する事だそうだ。それによってダンジョンでの配置や誰を何人指導につけるのかを決めるとの事。


 うちのパーティの戦績は悪くない、寧ろ良い。今終わったのがうちのパーティの最期の模擬戦で、順位としては6人のパーティが2パーティ、5人のパーティが3パーティ、4人のパーティが2パーティの計7パーティの中で上から3番目だ。戦績は4勝2敗で神代光大(かじろこうだい)と愉快な仲間達と5人全員が物理職のフルアタッカーパーティに負けた。


 負けるとこに負けるべくして負けたって感じだね。順当だよ順当。メンバーのそもそものスペックの違いと単純な相性の問題だ。


「いやー、疲れたね、今日はさ」

「同感」

「だな。いつもはちっとヌルいぐらいだもんなぁ」

「模擬戦って言っても戦いだしいつもより集中してたしねー」


 確かに紗夜の言う通り何時もの訓練よりも集中してた。特殊な結界のお陰で怪我する心配も怪我させる心配も無いしそんな痛くもないけどやっぱ戦闘だしね。


「そういや今のオレらの順位ってどうなってんだ?」

「4勝2敗で3位だよ。1位は言うまでもないとして2位があのフルアタのとこ」

「あそこ凄かったよね。やられる前にやるを体現してる。回復どうすんだろね」

「ポーションガブ飲みするっつってたぞ」


 ストレートにキツそう。やっぱパーティに回復役は必要だよね。


「ポーションって1瓶か2瓶くらいなら余裕だけど量飲むのってキツい感じだよね」

「あー、スッゲェ分かる。別にマズくもねぇんだけどな」

「そう? 私は別にそんな感じしないけど」

「いやキツいって。だから日…っと違った、小春の事は頼りにしてるぜ」

「ん」


 任せろとばかりに堂々と頷く小春が頼もしい。普段は眠そうで怠そうにしてるけどやるときはやってくれるからね。思えば学校にいた時も授業はキッチリ受けてたし行事でも他の人に迷惑かけない程度には仕事もしてたし。


 頼もしいのは敬一と紗夜も同じだ。


 敬一は相手の前衛をキッチリ抑えて後衛に攻撃が届かないようにカバーしてるし攻撃の面でも充分貢献してる。安心感と安定感があって他のメンバーが自分の仕事に集中できる。


 紗夜は威力と連射速度に自信があると言ってただけあって神代のとこを除いて魔法の撃ち合いはどこにも負けなかった。紗夜のお陰でうちのパーティの火力はかなり高い。


「いやー、うちのメンバーは皆んな頼りになるねぇ」

「もちろん遊歩もな」

「戦闘以外がメインとか言ってたくせに戦闘も普通にこなしてるもんね」

「強い」


 そりゃあまあ伊達に【ツヴァイへンダー中伝】を習得するほどツヴァイへンダーをブンブンしてないからね。純粋な武器使ってのタイマンならクラスでもトップ5に入る自信がある。ただねぇ……。


「まあ今のうちだけだね。もうちょっとして他の人達の攻撃スキルが充実して大技が乱れ飛ぶようになったら、多少上手く剣が振れるだけの人になって大して役に立たなくなるさ」

「そうかぁ?」「そうかな?」「?」


 ……なんで全員「えぇー? ホントにぃ?」って視線を向けてくるのかね。本当だよ。ナツィア様にきいてみたことがあるから知ってるんだ。


 攻撃スキルはとにかく最早意味不明な挙動のものが多い。有名どころだと斬撃を飛ばすとか一動作で数十の攻撃を繰り出すとか武器からビーム出すとかがある。


 召喚勇者が必要とされるのはそういうのが割と気軽に飛び交うレベルの戦いだからね。そりゃあ攻撃スキルを殆ど習得しない多少剣が上手く振れるだけの旅人は大して役にたたないさ。


『どうかしらね』


 ナツィア様まで。


『旅人で強かった子なんて沢山いたわよ。あなたもちゃんと鍛えてればちゃんと強くなるわ。旅人ってそういう“職業”でもあるし、あなたは勇者として召喚されたのだし、その上この私の加護まであるのよ? 強くなれないとしたら99.98%あなたの行動に原因が有るわ』


 大変心強い言葉でありがたいんですけど、その0.02%は何ですか? すっごい不安になるんですけど……。


『私のうっかりと他の神からの干渉の可能性ね』


 成る程。納得の内訳ですね。つまりは心配無いと。


『まあそうね』


 ありがとうございます。鍛えるのを止めるつもりはありませんでしたけど一層気合い入れてやってけそうです。


『ん。頑張りなさい』


 はい、頑張ります。


「おっ、全員集合だってよ」

「みたいだね。多分総評とかなんかがあって解散じゃないかね」

「要らなくない? それ」

「無駄」

「あー、オレも正直いらんと思う。どうせ神代たちメインのヨイショと敗けが多かったとこの簡単なフォローぐらいだろうしな」

「まあ有益な何かが聞けそうではないよね」


 そうは言っても集合しないというわけにもいかないので集合場所へと歩き出した。集合場所がさっきまで神代光大と愉快な仲間達がキャッキャしてた所というのはちょっとイラッとくるね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ