スタート
窓の外は暗い。
布団にくるまり横たわる。
目の前では犬のぬいぐるみがこちらを直視する。
手が悴む。
文章をスマホにメモする指の動きは鈍い。
右斜め前にある机の上の温度計は7度と表示されている。
イヤホンをした耳には音量少し大きめの日本の歌姫の綺麗な歌声が流れる。
身動きを制限するほどの羽毛布団が上から被さっているのに足の指先は冷たさに包まれていた。
前にある窓の半分ほどの大きさのテレビに赤い点の光が灯ったままだ。
その左横で去年の十二月のカレンダーがどっしりと構えている。
下ではだけるシーツ。
首の可動域を制限してくるイヤホンのコード。
7度と表示された温度計のすぐ左に置かれたデジタル時計には1月2日の文字。
右の天窓から次第に微かな光が漂って来ているように感じた。
一日も一年もまだ始まったばかり。
私も今から人間を始めなくては。