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6.世界には終わりがある。

「私の住んでいた世界では、女神・フェリリー様が世界の平和と安定をお守りしていました」


クールに見えていたスズキも、女神の名を口にすると瞳が柔らかくなった。


「優しくお美しく、聡明で…。人々の暮らしを見守っていたのです。私は女神様のお手伝いをする仕事をしていました」


「そこへ、邪悪な魔女がやってきた」


小海さんはクリームソーダのソフトクリームをすくいながら、言った。


スズキの目から暖かい光が消え、冷たいものが宿る。


「そうです。邪悪な魔女、ディーンツ。強力な魔術を使い、我が世界を蹂躙しました。草木は枯れ、建物は破壊されていきました。勿論、女神様と女神様にお仕えする我々は魔女を倒すべく戦いました」


わたしはその様子を想像しながら頷いた。


「魔女は敗れ弱体化し、女神様は奴が二度と現れないように封印しようとしました。その瞬間、魔女の体はパズルのピースのように細かくバラバラになり、四方八方に飛び散りました」


「ピースってさっきの…」


フランス人形が消えて、その場に残っていたピース。


「そうです。魔女の元であるピースは我々の世界から、様々な異世界へと飛んで行ったのです」


「邪悪な魔女の一部…」


「女神様は仕えてる我々に命じられました。異世界へと出向き、その世界の者に魔力を与えて戦い、ピースを回収せよ、と」


「じゃあ、よその世界でもこうして戦っている人たちがいる…と?」


「そうです。何十人もの私の仲間たちが派遣されています」


スズキは淡々と続ける。


「私はこの世界の童話に興味を持ち、そういった力を与えてますが、他の世界の担当になった仲間たちがどういった事をしてるのかはわかりません。ピースを回収することが大事なので」


「ピースを回収の為に戦うのはその世界の人じゃないとダメなの?貴方たちじゃなくて?」


「この世界の人でなくてはなりません。自分の力で自分の世界を守る。そういう意思が魔力を高めるのです」


「とかいって」


キッパリと言い切ったスズキに、小海さんが皮肉な笑みを見せる。


「アンタはこの世界がどうなろうと別にいいんでしょ?この世界がダメになったら、違う世界の担当になるだけ」


スズキは眼鏡をくいっと上げて、彼女を見つめ返す。


「そんな事ないですよ。私の世界より、こちらの世界の方が食べ物が美味しい。この世界が無くなったら、悲しいですよ?」


「あの…他の世界でダメになったところはあるんでしょうか…?」


「ありますよ、いくつか」


恐る恐る尋ねると軽い感じで返事が返ってきた。


「担当者は守れなかったと肩を落とし、次の世界へ移動します。…私もここに来る前、世界の終わりを見ました」


「えっと、ちょっと…その…」


胸がザワザワして、プリンアラモードに手をつけられない。


「どうなったらゲームオーバーなの?どうやったらクリアでハッピーエンドなの?」


「うんうん、ルールを知ることは大事だよね」


焦るわたしをよそに落ち着いてる小海さん。


きっと、ずっと戦い続けてきてるからなんだろうけど。


「ゲームオーバーは世界を魔女に蹂躙されることです。全てのものが死に絶えること、といってもいいかもしれません。ピースは1つの世界に1つしか存在しない訳ではありません。いくつもあります。そして、それを身に宿した〈隊長〉と呼ばれる存在が〈兵隊〉と呼ばれる魔物を作り出します。〈隊長〉と〈兵隊〉は一般の人を襲って恐怖や不安を吸い上げ、魔力を強化します。そして、光の魔法を身にまとった我々を排除しようとし、仲間である他の〈隊長〉を探し回ります。〈隊長〉同士が合体しあうとピースが合う様に、力が更に強大になります。ここまでわかります?」


わたしは頷く。


「そして、世界を滅ぼしてしまうと大きく育った〈隊長〉は進化し、次の世界へと移動する。そこでまた〈隊長〉と合流し、また大きくなる。厄介ですよ」

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