誰が好きのだろう
そういって急ぎ早で家を出ていく三人。
心はヘルメットをかぶったままだ。
突っ込んだ方がいいのかわからんが大変だな三人はと見送った。
俺の護衛は真名の同業者がするらしい。
「スグル良かったの? 三人をあっさり行かせてずっと三人に合いたかったんでしょ?」
真剣な面持ちで心を見透かしたように母さんが言う。
「まだ時間はあるし、皆事情があるみたいだしね」
「ちぇ。折角、お風呂襲撃イベントを予測して昨日買ったデジカメをスタンバってたのに無駄になったわ……」
「オイ!」
台無しだよ!
「何怒っているのよ? 取材よ取材&ラブコメ的思い出を記録に残しとくんじゃない! 私の願望も満たされ思い出も記録されて一石二鳥よ!」
ぶれない母さんに呆れて溜息一つ。
そんなイベントがあったのかどうかはわからないが、そんな恥ずかしい思い出を保存されるのは勘弁だ。
後でデジカメを没収しておこう。
◇
そしてその日はよく寝付けなかった。
いろいろばたばたしていたけど。
理由はそれじゃない。
自室の天井の板をぼんやりと眺め思い返す。
「スグル結局だれを選ぶの? 皆いい子だから三人ともスグルのお嫁さんにしたいけど。彼女達にも理由があるし下手に気があると思わせるのはお互いの為じゃないわ」
「分かってるよ。でも、わからないんだ。レナも心も真名も好きだし結婚して添い遂げるのは悪い気はしないし、むしろ嬉しいでも」
「でも?」
「誰が一番か今の俺にはわからないんだ。誰を優先すべきかも同じ」
「ふーん。まぁ気持ちはわからなくはないけど。そんな優柔不断に考えているといずれお互いに傷つくわよ。
まだ始まったばかりだけど、結末は実は物語の始まりで大まかに定まっている物なの、人生も同じでそれまで歩いた道で結末がおおまかに決まってしまうの。
本当に良い結末を望むならそれまでの歩く道を悔いてしまう歩き方は駄目。
それまで歩いた道によって進むことができない道だってあるのよそれが人生」
最後の母さんの言葉が妙に心に響いた。
いつもふざけ倒してはいるがそんな母さんだが、たまに深い事を言う。
だからこそ母さんはわずわしい事は確かだが憎めない。
そして気付いたらいつのまにか寝ていた。
でも結局答えは出なかった。
俺は誰が一番好きなのだろう?