個性的な料理
そんなわけで二階に来た俺たち(何故か母さんつき)。
しかし、部屋はいつもの光景と同じく一部屋しかない。
どこを拡張したんだ? と三人方をちらりとみた。
「真名やってくれ」
「了承解術」
そう真名が唱え指を振ると俺の部屋の扉の横の壁が氷でできているように、溶けるように消え始めた。
母さんは興奮気味に鼻息を荒げ、愛用の黒手帳に何かを書きなぐっている。
対して俺たちはそれを静観。
暫くすると壁は完全に消え去り三つのドアが続く廊下が現れた。
壁のあった場所を近寄ってよく見てみたが、継跡などはなくまるでそういう形の廊下のように見える。
「どうじゃ! スグル! ワシらの力は!」
「スゲーなおい魔法みたいとはこのことだ」
「肯定、これは魔術と科学の合わせ技、ちなみに心はこれに参加してない」
「仕方ないじゃない! 超能力はそういうの専門外なんだから!」
「スグル早く三人から一人選んで、子供作りなさい! 半信半疑だったけどこれはヤバァイわ! 孫はどんな超人になるのかしら! 早く孫の顔が見たいわ!」
「それでいいのか、俺の母親!」
「いいに決まってるじゃない! むしろウエルカム、カモーンよ!」
「駄目だこいつ!」
「母上殿気が早すぎじゃぞ。ワシはもうちょっとこの生活を楽しみたいんじゃ」
「レナに賛成、愛を深めてからスグルと結ばれたい」
「おばさんそうよ。子供を作るのは女の子にとって一大イベントなんだから私はもっとロマンチックな方がいいわ」
「ちぇ、皆ドライね。私があの人に出会った時は二人そろって大いに盛ったって言うのにスグル不能なの?」
そう言いながら俺の下半身を値踏みするように視線を飛ばす。
「ちゃうわ!」
「じゃあなにが不満なのよ? 並に巨に貧三タイプの乳房がそろってるのよ!」
「俺はおっぱい星人じゃねーよ!」
「やっぱり、スグルは不能なのね。お父さんは生粋おっぱい星人を自称しているというのに、血は受け継がれなかったかしら残念」
「俺は、レナ、真名、心に変な妄想をしないよ! 大事な存在なんだから!」
「あらら、中々言うじゃない。急に書きたくなってきたから一旦ぶ~ん退却するわ。皆トラブルばっちこいだから存分にハッスルして頂戴」
言いたい事を言うだけ言って階段を駆け下りる母さん。
一階の仕事部屋に向かったのだろう。
「なんかごめん」
なぜか謝ってしまった。
「まぁ、どんまい」
「個性的で面白いではないか」
「気にする必要はない」
「レナお前――まぁいいか、そいや料理するんじゃねーのか?」
面白がるレナに一言言いたい気分だが、母さんのせいで置き去りにされていたイベントを思い出す。
「そうじゃな丁度いい時間だし、お互いの部屋の公開は後もにして料理対決でもするか!」
「肯定、受けて立つ」
「いいわね。結構自信があるし」
◇
でっ台所にきたわけだが、こいつら料理をする気があるのか?
心が持っているの人参と玉ねぎ豚バラ肉。
レナはジャガイモと挽肉とパン粉。
真名は挽肉と玉ねぎ。
三人ともまとも食材を使うようで安心したが、問題はそこじゃない。
三人が手にしている食材以外の存在が問題だ。
三人ともとても変わったもを持っていた。
心は何故かフルフェイスヘルメットを持ち。
レナは昭和のヒーローものの特撮に登場するような一見玩具に見える先がぐるぐる巻きの光線銃。
真名に至ってはやけにおどろおどろしい模様が刻まれた刃物に、おとぎ話の魔女が怪しい薬をつくるために使うような小さな釜。
「お前ら何をするきなんだ?」
「「「料理」」」
清々しいほどの自信をもって皆即答する。
そして邪魔だからと台所から追い出されてしまった。
仕方ないのでリビングの椅子に座り出来上がるのを待つ。
いい知れない不安と期待が入り混じった何ともいえない時間が過ぎる。
「できたのじゃ!」
レナの声が響きレナが皿を持ち小走りでやってきた。
満面の笑みで俺の前に置かれた皿には白い物体が鎮座している。
「これまだ生なんじゃ……」
心に浮かんだまの質問をレナに投げかける。
「そうじゃ、まだ生じゃ!」
オイ!
「心配は無用じゃ今調理するのでの」
そいいうと、先ほどの玩具の光線銃を取り出すレナ。
これ調理器具なのか?
随分個性的だが。
レナは光線銃を両手に持ち引き金を引く。
すると先端の螺旋から光は溢れ皿の上の白い何かに直撃。
ジュウゥウウウウウウ。
油で揚げる様なうな音と香ばしい匂いが辺りに立ち込める。
光線が直撃した白い何かはこんがりきつね色に揚がり(焦げた?)姿を現した。
「コロッケ?」
揚げ物特有の香ばしい香りをはなつ茶色物体――コロッケがそこにあった。
それをみてレナはどや顔で、
「そうじゃ! ワシの思い出の味コロッケじゃ! この光線銃は油に性質がにた光線を発射できる。それでワシでもこんがりキツネ色に揚げられる優れものじゃ! 食してみるがよい!」
「いただきます」
サク、香ばしいコロッケの揚げ衣が歯に当たりサクリという感触を伝えてくる。
コロッケの内部はホクホクのジャガイモにジューシーな挽肉の旨みの一般的な味付けのコロッケだった。
光線銃で揚げた時には驚いたが普通に旨い。
ソースをかけなくても十分なほどだ。
「旨いじゃん」
正直に言った。
「ほんとか?」
「うん普通に旨い」
「レナ次は私」
真名が皿をもって登場する。
皿の上にはソースで何か模様のようなものが書かれているが、皿の上に肝心の料理が見当たらない。
腕に引っ掛けている釜の中に入っているのだろう。
「名付けて動く肉塊」
釜中から料理を取り出しながら真名は何かを唱える。
すると皿の周りに書かれた模様が光り始めた。
真名が皿の上に茶色物体を置くと、それが動いた。
何故か二足歩行で、
「魔術で煮込みハンバーグに仮初の命を与えた鮮度抜群」
まさかのハンバーグの踊り食い。
というかこれは食べて大丈夫な類なのか。
思わず真名の顔色を窺う。
「大丈夫、体内を食い破るほどの力はない。普通に消化される」
「そ……そうか、じゃあいただきます」
動くハンバーグの前にフォークを差し出しすと自らフォークに刺さりに来る。
そのおかげで意外と簡単いフォークが刺さった。
フォークを持ち上げ手足をバタバタさせる動くハンバーグに齧り付く。
「!?」
驚きだった。
動くハンバーグは口に入れても蠢くのを止めず。
かみ砕かれても跳ねるように動く。
跳ねるたびに肉汁を口内にばら撒き。
一噛み一噛み微妙に味が変わるそれが面白いがそれがただ単純に旨い。
「真名これ初めての食感だけど凄い旨いな」
「肯定、私も大好物母さん直伝エッヘン」
胸を張る真名。
黒ローブの下からでもわかる胸の大きな膨らみが強調させる。
表情は変わっていない様に一見見えるが満足げだ。
「でっ! どっちが旨かったのじゃ?」
「それは私の料理を食べてみてからね」
「なんじゃ! その汚い色のスープは?」
「何ってカレーよ。日本の国民食よ」
「カレーじゃと! 確かに色は悪いがえもいわれぬ食欲をそそる香りがするの!」
「これは皆で食べましょ。真名もレナもスグルの分を作るだけで自分と私たちの分をのこと考えないんだから全く」
「反省、そうだった」
「確かに、しかし、なぜ心は被り物をしておるのじゃ? ヘルメットとかという奴じゃろ?」
「実は私先端恐怖症で包丁直に見れなくて、料理の時はいつもこれよ」
そして皆でカレーを食べる事になった。
ちなみ何故かまだ心はフルフェイスヘルメットをかぶっている何で?
「おおこれがカレーか! 辛いのに複雑な味で旨いのう!」
「落ち着く家庭の味」
「確かにザッ家で作ったカレーって感じだな。うん旨い」
味はいたって普通だがそれが心地いい。
家でくつろいでいる感があるそんな味だった。
「あらいい匂いね。このカレー中々美味しそうじゃない。誰が作ったの?」
いつの間にか部屋から出てきた母さんがカレーの入った鍋を覗く。
「私です」
「あら心ちゃんなの! 凄い物被ってるわね!」
「これ被ってないと、どうも手料理を振舞うの落ち着かなくて……それ以外ならつけないくて大丈夫なんですけどね」
「へぇそれまた! こういう変わった癖私大好物だわ! 心ちゃん一歩リードね!」
「どういう加点だ!」
「何を言っているの? 小説の中では癖はその人物人格その精神を表すのよ! 心ちゃんだってきっとそうよ! ねぇ! 心ちゃん!」
「そう言われても……」
「そんなわけないわ! ここまで変わった癖は深いトラウマあってこそよ! 間違いないわ!」
「母さん。心が困っているだろ!」
「スグル止めないでこれは新作の種なのよ! 譲れないのよ!」
「ちょっとお前黙れ!」
「おばさん、スグル話の途中だけどごめん。緊急招集命令が出たからちょっと行かない行けなくて」
「あらそう、例の超能力者だけで構成された秘密組織にやつね。しまったわ。ふざけないでそっちの話を根掘り葉掘りすればよかった。仕方ない後にしましょう。ところでレナちゃんと真名ちゃんは招集かかってないの?」
「どれどれ、ワシ宛のメールは……と確かにワシにも本国から招集要請がきておるの。どうやらワシもいかねばならん状態らしい」
「私も同じ魔術組合から同じような物が来ている」
「あらら、トラブル発生? どうやって解決するか期待しているわよ!」
「そんなわけで母上殿スグルワシらは一端失礼する帰ってきたらワシらの料理で一番うまかったか教えるのじゃぞ。スグル」