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コロッケとレナ

ぶらりと歩きつつ下校路にある見慣れた地元の商店街を歩く俺たち。

 真名は腕を絡ませて相も変わらずの無表情だが、どことなく喜んでいるように見える。

 その渦中レナが声を上げた。


 「スグルこれを買って欲しいのじゃ!」


 と指をさす先にあった建物は、『肉屋田中』田中の実家の精肉店。

 材料を買えっていうのか。

 

 「違うぞ。これから作る料理ではない。これじゃこれ」


 ガラスケースのある物を指さすレナ。

 それは、


 「なんだレナ。コロッケが食いたいのか」


 「そうじゃ!」


 レナのご希望にそり田中の親御さんに金を払いコロッケを四つ買う。

 田中の親御さんは、断ったけど三人を見て目を丸くして豪快にうちの息子の嫁にならないかと言っていた。

 相変わらず暑苦しい人だと思いつつ、袋を片手にレナに向く。


 「おお! スグルワシの為に四つも買ってくれたのか」


 「違うって俺たち四人分、そんなに食いたいなら俺の分お前にやるよ」


 「おお、さすがワシの嫁じゃ! ワシの好感度をこれ以上あげても愛の熱が高まるだけじゃぞ」


 お手柔らかにたのむ。

 そいう前にレナが袋を奪い取らん勢いで袋を取った。

 一つづつ真名と心に手渡しコロッケを二個一緒にパクリ。


 「うむ、ほくほくで旨いのじゃ!」


 「肯定美味しい」


 「確かに美味しいね。スーパーで買う物より美味しい」


 「久しぶりのコロッケはうまいのじゃ。さすがワシとスグルが出会った思い出の味じゃな!」

 

 「それってあの時のことが?」


 レナとの初めての出会いを思い出す。

 泣いているレナにコロッケを上げた記憶がある気がする。


 「そうじゃ! 嬉しいぞスグル流石ワシを初めて一人の普通の女子(おなご)として見てくれた男じゃ。あの時のお主の優しさとこのコロッケの味は衝撃的じゃった。さすが文化だけで異星から侵略を受けない事はある」


 「地球スゲーなおい」


 レナの言葉に思わず声が漏れる。

 それほどに地球の文化は魅力的なのか。


 「そうじゃぞ、スグル地球の文化の多様性は銀河一じゃ! 文明レベル圧倒している我が帝国でもここまでの文化は存在せん。仮に地球に手を出そうものならワシらを含めた四方の異星勢力に袋叩きになるじゃろうな」


 「初耳聞いてない」


 「私もなんだけど」


 「そりゃそうじゃ、聞かれていないので言ってないしの。知っていてもいなくても何も変わるまい。地球が平和ならワシらだってそれでいいのじゃ」


 俺たちってすごい星に住んでいるんだな。

 ナイス地球文化。


 「全く持って地球はきらくじゃ、宮殿にいればみながワシを王女としか見んからな。お主らの様にありのままのワシを見てくれん。帝国の王女として生まれた以上しかたないじゃがな……」

 

 その言葉に笑顔を曇らすレナを見てしゅんとなる俺たち。

 王族という特権階級にはそれなりの気苦労ってのがやっぱりあるんだな。


 「大丈夫、私たちがいる」


 「そうよレナ。スグルだっているんだから今を精一杯楽しみましょ」


 「そうじゃな。少なくと高校卒業まではこの生活は続けられるしの。後はどうやってスグルの股座(またぐら)を開かせるじゃな」


 そういいながら俺の股間を見つめて……てっ普通は男が言うセリフじゃないか?

 俺が言ったら最低の下ネタ野郎と言われる気がするがおっさんかお前は!


 「修正要請恥じらいなさすぎ」


 「ちょっとおっさん臭いわよ」


 「ぐぬぬ、お主らだって同じような事を思っているくせに」


 「だとしても普通は言わない」


 「まぁいいじゃない。次にきましょ腕組みの交代よ。真名」


 「行先措定、そこの書店」


 レナと交代した真名が指さす先は古ぼけた書店。

 そういえばそうだったな。

 ここで真名と初めて出会ったんだ。

 この書店は当時からあまり変わりがないように見える。


 「この本ください」


 真名が本屋に入り棚から一冊の本を取り店主に渡し代金を払う。

 その本の題名は見たことない言葉で書かれている。

 雰囲気的にはゲームやアニメに出てくる古代文字と言えばなんとなく想像がつくかもしれない。


 「これは魔術文字で書かれた魔術書。もう一度この町に来たらスグルと買おうと思っていた。夢が一つ叶った」

 

 「で、レナここでどのようにしてスグルと出会ったのじゃ?」


 「転移魔術の失敗でここの店の前に飛ばされた幼い私は困惑していた。それをスグルが助けてくれた。

 

 その時の言葉に衝撃を受けた家族以外に私の感情を読み取れる人間の存在に」


 「そうかな、真名って結構表情に感情が出てると思うけど」


 そう素直に俺は言う。

 真名は一見すると無表情に見えるが、感情がよく見ると現れている。

 嬉しいん時には頬が僅かに崩れるし、不快な感情だと眉根が僅かによる。

 一番の感情を感じるのは視線だ。

 その視線だけで真名の現在の大体の感情を察することができる。


 「なるほどのう。家族以外の初めての理解者というところか、中々の理由強敵じゃな」


 「まぁ確かに真名の表情ってあまり変わらないから、私たち以外だと意思を読み取るのは難しからね」


 「で心、お主が最後じゃぞ。言いてみ」


 「別に大した。理由じゃないわ。住んでいた家が隣同士だっただけ」


 心はトーンダウンした言葉で、


 「まぁ一目見てビビッビて来たんだけどね」


 「なんじゃと。聞こえんぞ心よ」


 「風の精霊の力を借りた。心幼なじみ設定からしてベタすぎ」


 「なによ! いいじゃない!」


 「そういえばお前ら料理は家も物でする気か? この店先の道で商店街から出るけど」


 「「「忘れてた」」」

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