再会2
「なんだ、神崎と知り合いか。三人とも自己紹介を頼む」
教師の前に歩みである三人。
まずレナちゃんからだようだ。
「まず、ワシからワシの名前はレナ・フォン・クルスフィールドそこにいる神崎スグルを娶る女じゃ! 以上!」
「次私、真昼真名。私神崎スグルの子を産む」
「真名、あやつはワシのだと言っておろーが!」
「レナ訂正を要求する。私はスグルの子を魔王にする」
「だったら、ワシが産むからいいじゃろ!」
「駄目渡さない。産むのは私」
「ちょっと、2人とも周りが話についてこれてないから……」
二人の間に割って入るこころちゃん。
三人とも成長したな。
三人とも昔の面影を残しているから一目でわかったよ。
このやり取りを見るのは久しぶりだな。
そうこれはいつもの光景だったのだ。
彼女たちは好意を隠さない。
すでに俺は慣れているので傍観するだけだ。
「心、お前だって同じ気持ちじゃなろう。わかっておるぞ。どうせスグルの写真にでも毎日口づけしてるのじゃろ!」
「なんでそれを……って今は関係ないじゃない!」
ヒートアップする三人。
そして俺に向けられる男たちの痛い視線もヒートアップ。
まず、田中が叫んだ。
「神崎てめぇ! こんな可愛い子三人がお前と子作りニャンニャン希望だと! 裏切り者め!」
そうだそうだとクラス中の男たちはわめきたてる。
「極刑だ! 極刑を要求する!」
「神崎を死刑だ! 死刑にしろ!」
「そうだ! そうだ!」
呪詛の様な意見が飛び交い出てきた言葉に耳を疑う。
こいつらまじか? まじなにか? まじの声のトーンなのだが。
「覚悟しろよ。神崎! もてない男の永遠の敵! ハーレム野郎!」
クラスの男の気持ちを代弁したかのような熱の入った言葉を誰かが吐いた。
気づくと四方からクラス中の男たちの手が伸びる。
その男たちの表情は何かにとりつかれたように狂気じみていた。
後ろに振り返るが田中は顔を反らし絵にかいたような薄情ものがそこにいた。
「ちょ……やめ」
「何をやっておる! 有象無象の馬鈴薯共が、そやつはワシのもんじゃ汚い手で触るな!」
パチン
何かをを弾くような音が聞こえた。
次に気づいたのは音だ。
クラスの男たちの狂気に満ちた声はおろかクラス内の女子の話声一つ聞こえない静寂。
当たりを見回すと、俺を囲うように伸びていた腕たちは一切の動きを止めその目は瞬きさえしていない。
「大丈夫か? スグル」
「レナちゃん。何をしたの?」
いつの間にか近くいたレナちゃんに驚きにあまり言葉が一瞬幼児退行をしてしまう。
「ワシの事はレナで良い。真名も心も名前で呼べ二人とも異論はないな?」
「認識した」
「スグルがいいなら特別にいいわよ。でも勘違いしないでね。嬉しくなんてないんだから」
満足げなレナと無表情の真名に対して心の顔は蕩けてしまうように締まりがない。
とても嫌がっているようには見えないむしろ喜んでいるようだ。
「では、本当の自己紹介じゃな。ワシは大銀河帝国ガウス第56代王位継承権第一レナ・フォン・クルスフィールドいわゆる銀河帝国の王女様じゃ」
「次私、真昼真名。魔術最高位の力を受け継ぐ家系に生まれた大魔法使い」
「最後は私ね。名前なんて今更な感じだけど大事な事だしね、私は神渡心超能力者よ」
レナ、真名、心何回か言ってみたけどやっぱり名前で呼ぶのはこっぱずかしいな。
と安直な現実逃避は無理ですね。
マジか。
何故か驚きのない俺。
なんかこうしっくりきた感じだ。
「真名よ。どうじゃ折角時を止めたのじゃ。またワシの精鋭とお主の使い魔どっちが強いか試してみんか?」
「承諾する。今回は場所はここのグランド」
「いいぞ! では行くか!」
そういってレナは窓から飛び降りた。
落ちた! と思わず窓に駆け寄ると窓の下を覗き込むと見上げるレナの顔があった。
「スグルよほどワシが気になっておるようじゃな」
窓の下から俺を見上げるレナ。
その足元にはなにか金属の板のようなものが存在していた。
左右にプロペラがあり形はドローンに似ている。
「レナ常識外れすぎ、通常の人間は窓から飛び降りない」
「冗談じゃよ、冗談」
そう言ってレナが俺たちと目線を合わすような高さまで浮上する。
すげーな、これ本当にういているのか。
こんなに薄くて高性能みたいだから買ったら高そうだ。
「スグルを頼むぞ心よ」
「二人ともやりすぎないでよ。真名がいれば大体の損傷は直せるけど。命まで失ったら誰にも治せないんだから」
「だからこそ心いる。心の超能力ならこの学校ぐらいの大きさのバリアなんて簡単」
「そうじゃ信じてるぞ心、特にワシの嫁をしっかり守るんじゃ」
「訂正要請、私の物」
「二人とも落ち着いて、スグルは私の物だから勘違いしない」
「なにを」
「むっう」
「まぁいいじゃろ。後は三人で決めた取り決めに従うだけじゃ。心、真名忘れておらぬな。では対決だ! 真名」
「こい軍団!!」
「来て私の使い魔」
レナと真名がそう言うと、二人の後方に真反対な存在が出現した。
レナは銀色の装甲のロボットに見える物が出現し空中で待機。
真名には灰色の皮膚で蝙蝠の翼を持つ醜い鳥人ガーゴイル?
ファンタジーとSFを体現した姿を持つ両者を従えて何をする気のようだ。
「魔力飛行」
浮き上がる真名。
ラノベでお馴染みの飛行魔法ってやつかな。
「では先にいっておるぞ!」
レナはロボットを引き連れ校庭のグランドへ。
それに真名も続く。
両者がグランドにつくとまずロボットが動いた。
片腕を上げサーモンピンクのビームを乱射、避けるガーゴイル流れ弾が学校側に飛ぶが振動は感じない。
次にガーゴイルが口から炎を吐くロボットに直撃。
みるみるうちにグランドが耕されクレーターが出来ていく。
……収拾がつくのかこれ。
「スグル丁度いいから私たちに事をもっと詳しく説明しとくね。レナは私たちのいる宇宙の外の銀河にある帝国のお姫様で、真名は大きな力を持った伝説の魔法使いの子孫。
二人が戦わせているのは護衛のロボットと使い魔。
レナの国の科学はとても進んでいて時間を止めたりできるの。
それが今の状態、そして私が調停者と呼ばれる存在。
超能力で世界を守る存在といえば分かりやすいかな」
ガン! と何かが話の途中で窓ガラスに当たった。
ロボットの右腕みたいに見えるものが窓ガラスに触れたまま動きを止めていた。
普通ならソフトボールの直撃で割れてしまう程度の強度しかないはずの窓ガラスに傷一つない。
これがバリアか凄い防御力だな。
「ちょっと会話の途中よ! 全く二人ったら。大丈夫この程度の鉄くずじゃバリアは絶対に破れないから」
「心達が何者かはわかった。で? 俺にどうしろと」
「言いにくい事なんだけど……」
心は顔をほんのり染め恥じらうように声のトーンは小さい。
この癖も変わらないな心は。
「……してほしいの……」
何だって? 声が小さすぎて聞こえないんだが。
「だから……を……」
相変わらず聞こえない。
心はいつももじもじし出すとこれなんだよな。
懐かしい感覚だ。
すると後ろから声がかかった。
「まったく心と来たらダメダメじゃのう。代わりにワシが言おう。スグルお前にはワシらの中から一人選んで子供を作ってもらう!」
はい? レナは何言ったんだ? 子供を作れと言われた気がするのだが。
「聞き間違いではない。スグルお主は特異点と呼ばれる。ワシら三人の血族の力を最大限に高める遺伝子を持っておるのじゃ!」
「レナ……これは私が言うって約束じゃない!」
「そうじゃったそうじゃった。だが伝えてしまったもんはしょうがないじゃろ」
「レナ今回は貴方の逃亡で私の勝ち」
「しもうた。忘れておった……戦いの最中だったのじゃな。これで207ー207で引き賭けかの」
「正確にはレナが206私が207勝で私の一点がち」
「ぐぬぬ、スグル、ワシの嫁として真名に言ってやれ」
なんで。といった方がいのだろうか。
昔のノリと変わらないなレナは。
「訂正を要求私の」
「だから私のよ」
「じゃあ今日こそ白黒つけよぞ。スグルだれを選ぶのじゃ! 豊満でグラマラスなワシか! でか乳の真名か! 並乳の心か!」
レナは見事な鳩胸をどんとつきだす。
自称豊満な胸の事を指摘すれば絞殺される気がした。
普通にどうするかとじっくりと三人を見る。
レナは碧眼鳩胸低身長だが、顔が並のモデルより整っていてスレンダー体型長い金髪は太陽光を反射して夜空の星の様に薄く光って綺麗だ。
真名は黒ローブの胸部は大きく膨らんでおり、人形のように整った顔に嵌る猫のような黄金の瞳に黒髪のショ-トヘアがミステリアスな魅力がある。
心は兎の様に赤い双眼、光の加減で銀色に見える白髪のツインテールがとても可愛らしい容姿にぴったり合っている。
皆魅了的で甲乙つけがたい。
友人としての優先度も三人ともおなじぐらいだし、選べない俺は優柔不断なのか。
「いっておくが、全員選ぶハレーム展開はなしじゃぞ。お前の遺伝子は第一子に一番強く受け継がれる。第二、第三と子供が増える程効果は薄まっていく」
釘を刺すようなレナの発言。
その気はなかったといえ男の本能からか体がビックと反応する。
さらにどうするか。
顎に手をのせ考えるが……
答えは出なかった。
「予想的中スグル選べない。ヘタレ、次のフェーズに移動希望」
「そうじゃな」
「そうね」
「じゃ今度こそ私が言うわ。スグルこれから高校卒業までに私たちの中から一人選んでもらうわ。異論ある?」
「な……なんで俺なんだよ」
思わず声が漏れた。
このシチュエーション男として夢に思える展開だ。
こんなに可愛い女の子に求婚されて俺だって悪い気はしない。
でも、疑問に思ってしまった何で俺なんだって。
俺が特異点だとしても、それだけで彼女達を汚してはいけない気がした。
レナ、真名、心とはずっと仲良くしてきたと俺は思っている。
だからこそなぜ自分なのか聞きたかった。
「お前が「貴方が「スグルが「好きだから」」」
あまりにストレートな好意を込めた言葉に思わず頬が熱くなる。
恥ずかしいのかレナと心も頬を染め顔を覆い隠す。
真名は一見無表情だがその頬は朱に染まてっいた。
「ワシらだって嫌いな相手と結ばれるくらいなら他に譲る。当たり前じゃ本気だからこの国で女子が婚姻できる16歳まで待ったのじゃ。不満でもあるか?」
「真名も心もレナも大事な友達だから結婚相手としてはいいけど。俺なんかでいいのか?」
「肯定、私たちはこの時の為に貴方からいったん離れた。私は魔術修行」
「ワシは王位継承後の為の政治やらなにやらの勉強じゃ」
「私はS機関でトレーニングと任務をこなしたわ」
「S機関?」
聞きなれないワードに聞き直す。
「S機関は超能力者を育成保護している団体よ。私はそこで最高ランクのSランクよ」
「ちなみに私たち魔術勢と仲が良くない」
「ワシらはどっちにもつかん傍観派じゃ」
どこの世界もいざこざはつきものなのか。
超能力と魔術どっちもファンタジーな存在だと思うのだが。
「否定、超能力は身体機能の延長線にある物。その仕組みはまだ解明されてない。そのため使えない人は何をやっても使えない。魔術は理論に裏打ちされた技術、正しい力の行使の方法を知っていれば多くの人が使える。化学みたいなもの」
へーそうなんだ。
なんとなく理解する俺、って心読まれとるじゃないか?
「普段はしないから安心していい。魔術は使ったほうが説明しやすい」
ならいいんだけど。
年頃の男の思考なんて半分ぐらい女子に見せられない物だし、場合によっては同性ですら見せる事をためらう物だからな。
「了解した。これで魔術は切る」
指を振る真名。
これで解けたのだろうか。
まぁ大丈夫だろう、真名は嘘が嫌いだし。
「スグル安心して、私たちが所属する派閥は敵対しても私たち個人は仲良しだから」
「心の言うとうりじゃ、ワシらは変わらず親友じゃ。もちろんお主もな」
レナのその言葉に口角が緩む。
大事な友人から親友と言われて嬉しくないわけがない。
「レナ、そろそろ時間凍結の解除を提案する」
「そうじゃたな。真名グランドの修理の方は頼む。レナはワシの軍団の残骸を集めて欲しいのじゃ」
すると三人はグラウンドに体を向けた。
大量に散らばっていた機械の残骸は一箇所集められ、グランドの穴は修復されていく。
集まった残骸は光に包まれ消え去り、グランドは元どうりになった。
「提案、クラスメイトと担任に記憶操作を提案する」
「なぜじゃ?」
「一つスグルに対する男性たちの悪意の念の軽減。二つ私達への干渉を軽減するため。三つ微弱な魔術の痕跡を感じる男子たちの暴走は多分そのせいその影響の除去」
「なるほどのう。やはり先手を打っている奴がおったか」
「それも含めて賛成よ。スグルはどう」
どうかって言われれば当然OK。
特にクラスの男たちは狂気じみて怖かったし、レナ、真名、心だって下手な干渉を警戒するのはわかる。
微弱な魔術の痕跡というのは気になるけど。
「いいんじゃないか」と答えた。
「承認を理解では始める」
真名の口が緩く動いた。
魔法の呪文でも唱えているのだろう。
すると真名の指先に光が集まり弾けた。
「終了。レナ時間凍結の解除」
「よし分かった」
こうして、記憶操作は完了し、時間は元に戻った。
とくの驚いたのは男連中の態度の変化だ。
レナ、真名、心の発言を難なく受け入れてた。
殺気立って殺しにかかった先ほどとの大きな違いに驚く俺。
それからは特の問題なく事が進む。
女子たちは真名、レナ、心に話しかけるが深くは追及しない。
その姿は噂好きが多いと言われる年頃の女子としてはツッコミどころは満載だが魔術の凄さには驚かされた。
で、そんなこんなで放課後の事だ。