戦いの中
(戦闘開始より1083秒、戦況に変化はなし、お互いに肉体のダメージはほとんどなし)
真名はその時状況を分析していた。
今、真名の作り出した巨大なゴーレムはレナの同じサイズの人型の機械と、心の超能力で作り出した水の巨人とお互いの腕部をぶつけ合っていた。
それは技術を高め合ったボクサーのような崇高な物ではない。
ただお互いの力に任せ乱雑に互いの拳をぶつけ合う子供の喧嘩に近い。
真名はかろうじて思考するだけの自由はあるが、肉体は頭の命令を弾き瞬きすら自身の意思で行う事はできない。
だからこそ、考える。
いやそれしかできないのだ。
(後悔、超能力が機械や魔術では感知できない特性を使ったこの作戦完全に盲点だった)
真名は目の端に映る二人の姿を必死に追う。
真名は体を操る魔術はヘルメットにかかっていることは感じる事が出来た。
真名の意識が僅かに残っているのは魔術の耐性によるものだ。
耐性にない二人の意識はない。
魔術は術式を組み呪文を唱える事で世界に働きかけ、世界に現象を引き起こす。
意識だけで使える魔術はほとんど存在せず、あったとしても現実世界には干渉できる力はない。
つまり真名に打つ手はないに等しい。
(思考思考思考、拮抗した戦況が変わる前に答えを)
真名の焦りを我関せず三体の巨人はお互いの腕をぶつけ殴り合う。
岩の巨人は体に僅かなひびが入り始めている。
機械の巨人は計器がショートし小さな煙を立ち上らせ。
水の巨人は暫くすれば自壊するだろう。
全ての巨人に綻びが見え始めていた。