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夜さん

 「ほ~ら来たわ! 早急なフラグ回収ね! 当然あなたが出なさい! 私はこの世紀の戦いをハードディスクとこの目に収めないといけなから!」


 るんるんと小躍りでもしかないテンションで、テレビにかじりつく。

 ハードディスクと言えばいつも使っているDVDフレイヤ―のハードディスクの記憶容量、母さんの好きな番組とアニメで満タンで録画できないんじゃなかった気がする。

 まぁそんな初歩的な事ならいくら母さんでも気づくか。


 「は~い、今開けますよ」


 チャイムが連打されている。

 よほどの切羽詰まっているか。


 「どちら様ですか?」


 「ワ……私ワ怪シイニンゼンでワナイです。スグルサンですかイ?」


 目の前の人物は正直言って怪しかった。

 もうすぐ夏だというのに、使い古された茶のロングコートに長ズボン、襟を限界までたて円形の日よけのある茶色の防止で顔を隠していた。

 日本語は片言以前に、無理やり外国語を日本語に翻訳して喋っているような違和感がある。

 そもそも人間か怪しいレベルだ。


 「スグルサんワタジとイッショきて」


 素肌の腕をつかむ不審者の手は異様なほど伝わてくる感触が異様に気持ち悪い。

 感触は猫の死体を埋葬するために手袋越しに触って時にていて、柔らかいが締まりがなく生き物特有の体温も弾力もない。

 腕をつかめれるほど肉薄すると鼻先をくすぐるのは強い腐敗臭、とんでもなく臭い。


 「離してくれ! 臭いんだよ! お前!」


 「離サナいメイデイ果タす」


 「やめろ!」


 不審者の掴む腕を振りほどく。

 その勢いで不審者帽子が払い飛ばされる。

 その顔は明らかに人間ではなかった。

 顔には皮膚と言えるモノはほとんどなく、むき出しの眼球にまぶたすらなく顔の所々に白い骨が覗いている。

 掴まれた振りほどいたはずだがまだ腕を掴まれている感触があった。

 すぐさま腕を見た。


 「腕が取れて……」


 俺の腕はちぎれた右腕に掴まれていた。

 その腕は一目でわかるほど腐敗していて、引きちぎった傷口には体液に姿はない。


 「ワタジの腕アゲう」


 不審者の右腕は未だに握る力を弱めず。

 掴まれている素肌がぴりぴりしてきた。

 毒の類に近いのかもしれない。


 「お前! 何者だ!」


 「ワタジ、マオオさまのシボベ、私ヒトリヨワイだかラ連れテキタ仲間」


 その言葉に同じような服装の人物が5人ほど現れ玄関を囲い始める。

 魔王?

 そりゃ魔法使いがいればいても不思議じゃないが。

 という事はこいつらは魔王の配下のゾンビってところか。

 そいうえば真名が子供を魔王にするから言ってたな。

 何か関係があるのか。


 「メイレイ、こいツ肉食ワナイでマオオさまのとコろ連れカエる」

 

 リーダー格の不審者もといゾンビが命令を下すと、周りのロングコートのゾンビたちは幽鬼その者のように腕を力なく伸ばしてきた。

 どうする逃げるか。

 ダメだ家におしいられて母さんになにかあるかもかもしれない。

 全員を倒すか。

 無理っぽいなゾンビってことは、俺程度の攻撃で怯むとは思えない。

 腕が取れても動じない連中だぞ。

 どうするどうするどうするどうする――


 思考は高速で回転し解決策を導こうとするが一行に解決策が浮ばない。

 困り果てたその時だった。


 「宣言、娘の婿に手を出すのは許さない」


 そこには真名の母親真昼夜(まひるよる)おばさんがいた。


 「質問、スグル君変な事されていない?」


 「これ以外は」


 そう取れた腕に掴まれたままの腕をあげた。


 「安心、この程度の邪気なら問題ない。スグル君動かないで」


 「アマえなニ」


 リーダー核のゾンビは俺から正反対の位置にいる夜さんの方に向き直る。

 それにつられて他のゾンビの視点も向いた。


 「断言、娘の婿のぎりの母親(仮)」


 どんと真名より数段大きな胸を張る夜おばさん。

 ノリはさすが親子といった所で真名と何ら変わらない。

 容姿も遠目では間違えてしまうほど似ている。

 シュートヘアである真名に対し夜さんはセミロング。

 俺たち近しい人間にしか二人を見分ける事できないからのキャラ付だとか。

 安心する俺。

 夜おばさんはなんとうか存在自体がチートに近い。


 「こイツ食ッテいいイケまエラ」


 ゾンビたちが一斉に動くより早く。


 「提言、スグル君終わった」


 夜さんは仕事を終わらせたと言ってきた。

 この場の夜さん以外の誰もが状況を把握できていないのだろう。

 次にゾンビたちから煙が立ち上る。


 「ガぁアああアアアア」


 「ぐボォおオおおオ」


 ゾンビたちが体が次々に砂に変わっていく。

 残ったのはリーダー格のゾンビのみだ。

 

 「おまェなニまサカ漆黒?」


 「質問、その名前で私を呼ぶのは魔王の配下。それさえわかれば用済み」


 「なニをイって……ぐォオオオオおおおお」


 夜さんが言葉を終えるとリーダー格のゾンビに火がともる。

 それに合わせて俺の腕をつかんでいたゾンビの腕がぼったと落ちた。


 「腐った汚物は消毒に限る」


 「夜おばさん。こいつらは一体」


 「修正要求、おばさんじゃないお姉さん」


 「夜さん」


 「及第点、スグル君はもっと女子の心を察するべき、できればお姉さん」


 「それより夜さん。こいつらは一体何ですか?」


 「落胆、しかたない。彼らは魔王と呼ばれる最古の魔法使いの配下、普段は魔界と言われる大昔に私たちの始祖が想像した空間に閉じこめられている」


 「なんでそんな奴が俺を襲ってきたんですか?」


 「予測、おそらく魔界で君と番になれる何者かが現れた可能性が高い。だからこそ魔王が動いたと予想される」


 「それで無理やり」


 「心配、スグル君の素質は歴代最高。君の力を無理にでもねらう勢力の一つが魔界」


 とんでもない事になってるんじゃないか俺。

 

 「謝罪、私の考えが甘かった」


 「夜さん。どういうことです?」


 「君と君の両親には力のある魔物に対する魔物避けの結界を張っていた。まさかあんな弱い魔物を大量に送ってくるとは予想外だった」


 「再度謝罪、数が多くててこずってしまった」


 「別に気にしなくていいですよ。夜さん。それより三人は一体どうしたんですか?」


 「これは娘たちの力不足の失態。今彼女たちは魔王の魔術に操られてる」

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