約束
私たちは肩を並べてあの川原で星を眺めていた。
冬の星々は優しく煌めき、私たちを見守っている。
「あの日の約束を果たすのに六年もかかっちゃった。寂しかったよね。ごめんね」
私は弟の手をそっと握り、小さな声でそう言った。
光明は無言で首を振り、涙を拭う。
「そんなに自分を責めないで。みっちゃんは、私のたった一つの希望だったんだから。私、自分が一人っ子だったら、耐えられずにもっと早い内に死んでしまっていたと思う。姉としてみっちゃんを守らなきゃって必死になれる理由があったから、生きている張り合いがあったんだよ。私たち双子は、ちゃんとお互いの心の支えになっていられたんだ」
「……そう言ってくれるのなら、僕を天国に連れて行ってよ。僕は、あと三日で二十歳に……大人になる。でも、僕は嫌なんだ。姉ちゃんと一緒に大人になりたかった。それなのに、姉ちゃんは死んでしまった。だから、僕は大人になることを心の中で拒絶して……死に誘われてしまったんだ」
「ダメだよ。みっちゃんには沙夜がいる」
「僕は沙夜を苦しめ続けた。僕が沙夜のそばにいたら、彼女を不幸にしてしまう」
「そう思っているのは、みっちゃんだけじゃないわ。沙夜だって同じように罪悪感を抱いている。そして、あなたが沙夜を求めているように、沙夜もまたみっちゃんを求めている」
「それは、姉ちゃんを失って胸に空いた穴を埋めるためで……。沙夜もきっと……」
「沙夜は、ずっと前からみっちゃんのことが好きだったんだよ。好意に気づかれて、逆に嫌われることを恐れて隠していただけで、最初からみっちゃんを誰かの代わりではなくみっちゃんとして愛していたんだよ」
私がそう言うと、光明は「え……」と驚きの声を上げ、私を見つめた。
「二人の六年間を全て否定することはないじゃない。付き合い始めたきっかけが何であれ、今のみっちゃんに沙夜を思いやる優しさがあるのなら、二人はまだやり直すことができるよ」
「でも、姉ちゃんは……」
光明は、小さな子供のように、心細そうに瞳を潤ませて言った。
本当に何歳なっても手のかかる子だ。私よりずっと身長が高くなったくせに。
私は光明の頬を優しく撫でて、「大丈夫」と微笑んだ。
「みっちゃんは一人じゃないよ。大人になっても……ううん、みっちゃんがおじいちゃんになったって、私は空からあなたを見守っている。こんなふうに触れ合うことはできなくても……ね。だから、私の死を受け入れて? たとえ苦しくても、生きている間は立ち止まったらダメだよ」
「姉ちゃんは、天使になったの?」
「そんなとこかなぁ。でも、神様も大雑把でね、天使がどんな仕事をするのか何の説明も受けていないのよ。まぁ、みっちゃんや沙夜を見守っている時間くらいはあるでしょ」
「相変わらず自由だね、姉ちゃんは」
光明がようやく笑ってくれた。
可愛い弟の笑顔は、私の最大の癒しだ。
「その笑顔、大好きだよ。沙夜と幸せになって、沙夜のことも笑顔にしてあげてね。今度会う時までの約束!」
「……分かった。さよなら、姉ちゃん。僕が姉ちゃんの元に行く時まで、元気でいてね」
「それも約束だね」
私と光明は、どちらからともなく小指をからめ、別離と再会の約束をした。




