星を見上げて
十二月二十七日。僕は二十歳になった。
「こんにちは~。……あれ、今日は山本さんに先を越されたかぁ」
毎日お見舞いに来てくれている薫が今日も僕の病室に入って来ると、右足を固定して身動きが取れない僕の世話をしている沙夜を見てちょっと悔しそうに言った。
沙夜が、フフンと勝ち誇ったように微笑む。
この二人、毎日どちらが先に僕の見舞いに来れるか競い合っているらしい。恋人と親友で対抗意識を燃やしているのだろうか。
「今日は一つ提案があって来たんだ。光明くんが退院して僕たちみんなが二十歳になったら、三人で星見酒をしようよ」
「星見酒? それ、面白そうだな」
僕は、薫の提案に賛同した。
美星が愛した星を見上げながら、美星を大好きだった三人が酒を飲んで語り合う。それは、美星への手向けになるだろう。
薫は僕よりも誕生日が四日遅くて大晦日生まれだから、もうすぐ酒が飲める。
「私だけ、三月三日……」
誕生日が一人だけ遅い沙夜が頬を膨らませた。
美星は笑顔が可愛いかったが、沙夜は怒ったり拗ねたりしている時に彼女特有の愛嬌が出ているような気がする。中学生の頃から付き合っているというのに、恋人のチャームポイントにようやく気づくことができた。……もちろん、笑っている沙夜も可愛いけれど。
「沙夜が成人になるまで待つさ」
僕が笑ってそう言うと、薫も頷いた。
「僕は、みんなに美星さんがどんな女の子だったのか、星見酒しながら聞きたいんだ。二人とも教えてくれるよね」
「ああ、もちろん。これもまた……約束だな」
僕は窓に顔を向け、まだ星々の輝きが見えない青空を見上げた。
(姉ちゃん。僕たちが星見酒をする時は、姉ちゃんも僕たちのそばに来てくれよな。姿が見えなくても、僕は姉ちゃんがそばにいるって感じられるからさ……)
僕は心の中でそう呟き、薫に気づかれないように、こっそりと沙夜の手を握った。すると、沙夜はギュッと握り返してくれた。
「約束……守るから」
僕は、美星がいない世界で、沙夜と手を取り合って共に生き続ける。天使になった美星が迎えに来てくれるその日まで……。それが、僕が大切な片割れと交わした約束なのだ。
☆ ☆ ☆
弟が私のことを呼んだから、白い翼で青空を羽ばたいていた私は足元に広がる懐かしい街を見下ろした。
「みっちゃん。私はいつでも見守っているよ。みっちゃんと約束したからね」
みっちゃん
沙夜
お父さん
お母さん
それから……図書館で出会った彼。
みんな、みんな、私が見守っているよ。だから、寂しくなんかないんだよ。
もしも私が恋しくなったら、夜に星を見上げて私の名前を呼んでね。そうしたら、私は星々を瞬かせるから。
それが、お姉ちゃんの愛情の印のウィンクだから、見落とさないようにしてね?
――了――




