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前編

思いつきのまま書きました。

自分に文才がないのが悲しい。


「おい!おい。大丈夫か?」

「ひどいケガだ」

「何があったんだ?」

「死んでるんじゃない?」

「警察!」

「救急車呼んだよ」

「生きてるか!しっかりしろ」


懐かしい。

日本語だ。

ということはここは日本?地球?間違いない?

だれか説明して。

声も出ないし目も開かない。

胸が痛い。熱い。

誰か助けて。



  

✩ ✩ ✩





あれは私が17回目の誕生を祝う日だった。

学校へ向かう途中、信号無視の車が突っ込んできた。

運転席の男と目が合う。

スマホ片手に驚愕の顔をしていた。

ながら運転かよ。

そして、私は車にはねられた。


・・・はずだった。


気が付くと光に包まれて神殿にいた。

そして言われた言葉は。


「お待ちしておりました。勇者様」


だった。

お決まりの異世界召喚。

私を召喚した人物はその国の第三王子。

イケメンでした。

青い瞳に。キラキラの金髪。背も高くて細マッチョ。

爽やかな笑顔で私に言った。


「この世界の魔王を倒して欲しい」


なんじゃそりゃ。

お決まりすぎて笑える。

異世界召喚の小説は何度も読んだ。

まさか自分の身に降りかかるとは現実逃避したくもなる。

あはははは。と涙を流しながら笑う私に王子とその周りの召喚に関わっていた人たちは引いていた。


「勇者が狂った」

「狂った勇者は用無しだ」

「殺してしまおう」

「そうだ。殺してしまえ。今なら私たちが口を閉じればこの事実は誰にも知られることはない」

「まぁ、待て。いきなり連れてこられたのだ。混乱するのも理解できる。しばらくこの国のことを知ってもらおう」


周囲の意見を王子が鎮めてくれた。

私はその後豪華な部屋に連れて行かれた。

お風呂もトイレも部屋の中にある。

ご飯も食べれるし、日に二度お茶と称してケーキやお菓子が出てきた。

文句なしの待遇だった。

外に出られない事以外は。

外に出たいと言ってみたけど、危ないから一日中側にいる女性に言われた。

何もすることもなくぼ~とソファに座っていた。

自分が持ってきたものはすべて取り上げられた。

スマホも教科書も何もかも。

その上外に出れない。

女性に話しかけても必要最低限のことしか話してくれない。

雑談には答えてくれない。

一日に一度第三王子が来てくれた。

私がおしゃべり出来る唯一の人だった。

日本の事を色々と聞かれたし、この世界の事も色々聞いた。

帰りたい。両親に会いたい。

そう言うと第三王子は悲しそうな顔でごめんねと言った。

私はなんだか自分が悪いことを言っている気分になっていった。

一度王子を怒らせた事があった。

異世界の女に頼るくらいならこんな国滅んでしまえと。

イライラしていた。

何故私が?

という思いが日に日に強くなった。

そして王子に文句を言ってしまった。

王子は怒って部屋から出て行ってしまった。

次の日王子は来なかった。

次の日も、その次の日も。

部屋の女性は置物のように言葉を発しない。

3日目王子が来たときは安心した。

謝ったら許してもらえた。

そして、ごめんねと言いながら髪を撫でられた。

大きな掌と人の温もりに涙が出た。

いつの間にか王子が来るのを心待ちにしていた。

王子の姿を見ると心が弾む。

目が合うと顔が熱くなった。

私は、王子に恋をしたのだ。

ある日部屋に来た王子の顔色は優れなかった。

目の下には隈ができていて、陶器のように透き通った白い肌は青白く変わっていた。


「どうしたの?」


王子曰く魔物の活動が活発になり、商人が何人も殺されている。

農民も殺され国境沿いの村が2つ魔物に襲われて滅んでしまったらしい。


「心配ない。私はこれでもこの国王子だよ。こんなことで倒れる訳にはいかない。心配してくれてありがとう」


王子はそう言うと、フラフラしながら部屋を出て行った。

私の元に毎日来てくれてる王子。

もしかしたら私の事が負担になっているかもしれない。

顔色もだんだん土気色に変わってきているし、目の下の隈もひどくなっている。

髪質もサラサラしていたのが、傷んできている。

それでも毎日私の元へ来てくれる。

嬉しい。

部屋から出れない私だけど何か力になれることがないか、毎日考えるようになっていた。

私は一つの決心をした。


「私魔王退治行くよ」


私がそう言うと王子の目が驚愕に見開かれた。


「あなたの役に立てることがあるなら、私する」

「危険だ」

「分かってる」

「いや、分かってない!君は剣を持った事もないし、魔物の恐ろしさも知らない」

「分かってる。でも、あなたが好きなの!あなたために何かしたいの!」

「君は・・・」


思わず私は告白していた。

そして、そんな私を王子は抱きしめてくれた。

そして、耳元で私に囁いた。


「私も君が好きだよ」


私だけに聞こえるように。

嬉しかった。

この人のために何かできることが。

嬉しかった。

この人が私と同じ気持ちを持っていた事が。

忘れていた。

私を召喚したのがこの人だということを。


地獄の特訓が始まった。。

実際の剣は重かった。最初は手に持っただけで落としてしまった。

元々部活に入ってなかった私は体力がなかった。

体力をつけるためにひたすら走った。

辛かったけど、訓練を終えると王子が笑顔で迎えてくれるから頑張れた。


一ヶ月後。

私は密かに城を出て魔王退治に向かった。

私の存在は秘密にされていた。

知られれば王子の命が危険らしい。

大好きな王子が私のせいで命の危機にさらされるのは許せない。

私に同行するのは精鋭の3人だった。

魔術が得意な14歳の男の子。

槍が得意な20歳の男性。

治癒が得意な18歳の女性だった。


途中何度も死にかけた。

主に私が。

魔術が得意な彼がいなかったら魔物に気づかずに殺されていただろう。

槍が得意な彼がいなかったら無謀にも突っ込む私を止められず全滅しただろう。

治癒が得意な彼がいなかったら、魔物に付けられた傷によって死んでいただろう。

最初は、弱い魔物にも殺されかけた私だが、旅をするうちに段々殺されることもなくなっていった。

一緒に旅をするメンバーはかなりスパルタだったのは覚えている。

魔物が群れていない限り、一対一のタイマン勝負だった。

魔術師が応援してくれて、槍術が戦いのアドバイスをくれて、治癒師が補助をしてくれた。

スパルタでも優しかった。

友達のように笑い合い、父のように私を怒り、母のように私を慰めてくれた。

一年掛けて魔王城へ到達した。

私たちは頑張った。

父のような彼が最初に死んだ。

友達のような彼が次に死んだ。

母のような彼女が私に全てを託して死んだ。

私は魔王との戦いに勝った。

右腕は肘から下が無くなり、体の左半分は魔王の最後の力で燃えてやけどを負った。

でも、勝った。

魔王は死んだ。


魔王が討伐されたことは、世界中の人が知っていた。

魔王城を出た私を王子は迎えてくれた。

王子の後ろに私を召喚した人物がいたのは知っていた。

王子の横に立つ豪華なドレスを纏う綺麗な女性がいたのは知っていた。

でも、私の目には王子しか映らなかった。

折れた足を引きずりながら王子の元への一歩一歩近づく。

早く抱きしめてほしい。

良くやったと言って欲しい。

私の耳元で愛を囁いて欲しい。

きっとそうしてくれる。

私は信じて王子のもとへと向かった。

王子が微笑みながら私の元へと近づいてきてくれる。

嬉しい。

私は歩くのも限界だ。

立ち止まって王子を待つ。

手が届く範囲まで来て王子が止まった。

何故止まるのだろう。

後少しで抱き合えるのに。

私は不思議に思い王子を見つめた。

すっと身をかがめた王子。

夢にまで見た王子の顔が目の前にある。

私は嬉しくて微笑みを浮かべた。


「醜いな。お前なんかを好きになるわけないだろう。直ぐに私は一国の王になる。異世界の小娘が私に釣り合うわけないだろう。身の程を知れ。もう用はない」


えっ?と思った瞬間。

胸が熱くなった。ついで鋭い痛みが襲ってきた。

体が重力に従って落ちていく。

王子に手を伸ばしたけどその手を叩き落された。

私に背を向けた王子は、私の心臓を貫いた剣を高々とあげた。


「魔王は私が殺した!」

「「「「おぉぉぉぉぉぉ」」」」


綺麗な女性が王子に駆け寄り、王子がその女性を抱きしめてキスをした。


私が最後に聞いた言葉は愛を囁く言葉ではなく死刑宣告だった。

私は、この男に騙されたのだ。

私の恋心が利用されたのだ。

気づく事ができなかった。

愚かな自分に涙が出てきた。

親友を亡くし、父としたった男を亡くし、母と信頼した女性を亡くした。

すべてこの男のせいで。

許さない。

決して許さない。

呪ってやる。

復讐する。

生きたまま苦しめてやる。

そう思うのに私の意識は薄らいでゆく。

闇に沈むように私は意識を手放した。



後編は、明日18時の予定です。

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